"まれーふぃか"になる少女
あるところに魔女と悪魔がおりました。
彼らは三人の子宝に恵まれていました。
長男は魔女と悪魔の子という重圧から逃れるため、無難で平凡を装う器用な子に育ちました。
長女は魔力が豊富で思うだけで大体のことが行えたため、少々めんどくさがりな少女に育ちました。
次女はというと、まるで自分が世界の中心なんじゃないかと言うが如く少々強引な子に育ちました。
父も母も彼女を強く制限することはなく、兄と姉は大変甘やかしたからです。
五歳になる年の春、転機が訪れます。弟ができたのです。
それもいっぺんに二人も!
一人は魔女のお腹の中に。もう一人はなんと、自分と同じ歳の男の子でした。
男の子は悪魔とも魔女とも違う、けれども十分に綺麗な容姿をしていました。
ただ残念なところは、表情に乏しいところでしょうか。
どうやら大きい弟は、元々いたお家では居ない子として扱われていたそうです。
この子が見えないなんて、よほどおめめが悪かったに違いありません!
次女ちゃんは、大きい弟をいつかにっこりさせてやろうと決めました。
なんてね。
居ない者として扱うってのは視力とは関係ないが見る目がなかったのは確か。
副題:あたし、おねーちゃんになった!
わたしは"あーうぇるさけのじじょ"としてこのよにせいをうけた。
わたしのかぞくはよにんだったの。
うるさいけどやさしいおにーちゃん。
のんびりしてるおねーちゃん。
へんなまま。
おっきくてかべみたいなぱぱ。
だけど、さいきんおとーとができた!
ままのこじゃないけど。
なかよくしてねってみんながゆったから、なかよくするんだ!
「あたしがおねーちゃだよ!」
だってわたしがさきにこのおうちにいたんだもんね!
そーゆったら、したをむいてだんまりしちゃった。
はずかしがりやさんなんだ!
「おにわ、ひろいからあんないしたげる!」
「っ!」
おててつないだら、なんだかびっくりしちゃった。
「どしたの?」
「なん……でも、ないです」
「ふぅん?」
へんなこ!
あ、わかった!
はずかしがりさんだからおててぎゅってしてっていえなかったんだ!
わたしってば、さっそくおねーちゃんできてる!
「おねーちゃがきょから、ぎゅってしたげるからね!」
ってゆったら、ないちゃった。なんで?
おにーちゃんがおとーとのおかおをふいてるのをみてたら、おもいだしたの。
おにーちゃんはいつもゆってた。いもうとをなかすのはおにーちゃんじゃない、だって。
「あれ、ぎゅって、やだった?」
……おねーちゃんできてなかった?
「……いやじゃないです」
でも、おとーとはなんだかこまってる。
そしたらおにーちゃんが
「嬉しかったんだよね」
ってゆったの。そんで、わたしのかおをぬのでふいた。
「そなの?」
「そ」
おねーちゃんはうなずいて、わたしのあたまなでなでした。
「うれしい、です。ほんとに」
ちっちゃいこえで、おとーともそーゆった。
「ならよかった!」
ちょっとおはなでちゃったからあんまりかっこよくないけど。
でもおとーとがうれしいならきにしないもん!
おねーちゃんだからね!
あ、もうひとりおとーとがままのおなかにいるんだよね。
「ねー、まま! こっちのおとーとにはいつあえる?」
「この子はねー、この日に北部の不可侵領域の森で産むからねー」
だって!
ままのおなかのおとーとにも、はやくあいたいな!
どんなこかな?
たのしみ!
「次女ちゃん、頑張ってお姉ちゃんやろうとしてるね」
「ん、次女ちゃんの、良いとこ」
「そうだね」
*おまけ*
「でも、あの魔力ぎっちりの腕をよく掴めたね?」
(頷く長女)
(解説:次男の腕は魔力が飽和状態で、いつ爆発するか分からない爆弾みたいな状態)
「だいじょぶだよ! あぶないときはうんめーがぶわーってなるから」
「うんめいが」
「ぶわー…?」
(顔を見合わせる長男と長女)
「うん!」
少々強引だった少女が
"おねーちゃん"とはなんぞやを考えるようになって
頼れるお姉ちゃんになる
というおはなしの序章をイメージしました。
ちなみに次男は年明け前生まれ。次女は初夏生まれ。年度が始まるのは秋なので学年が一つずれる。