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幽霊空母「飛龍」  作者: 篠山誠仁
第一章 遭難
8/8

第七話 ミッドウェー沖海戦(2)

果てしなく広がる海原に、高らかに響く轟音はどこか戦火の音にも聞こえる。

霧を抜けてから間も無くして、甲板にいた飛龍の乗員は、加来の

「発艦用意!」

と言う言葉が聞こえると、艦載機をすぐさま発進させる用意を急ぐ。そんな乗員の姿を山口達はただ真っ直ぐ見つめていた。そんな山口達に、飛行隊長の友永丈市(ともながじょういち)が報告をしにやってきた。


友永「司令、間も無く艦載機隊は間も無く出撃準備が完了します」

山口「うむ。本隊との報告がまだ付かない以上、連携は非常に難しいものとなる、被害も大きくなるやも知れん」

友永「いえ、我々は既に覚悟はできております。これで国の行末が決まるなら、命はいくらでも差し出しましょう。それに見てください、彼らの目はどこか迷いのない真っ直ぐな目をしているのです。これから戦火の中に身を投じるはずなのに、本当によく頑張っておりますよ」

山口「君や皆の腕は確かだと聞く、精一杯頑張って欲しい」

加来「艦長である私からも期待している。だが、無理はするなよ」

友永「分かっております」

山口「もうそろそろだろう。早く降りると良い」

友永「お言葉に甘えます」


そう言うと友永は、艦橋を降りて行った。


山口「加来君、今ごろ本隊はどうしているのだろうな?」

加来「きっと敵艦を見つけて大騒ぎしてるでしょうな、攻撃隊も既にたった後やも知れません」

山口「懸念点を挙げるとすれば、やはり真珠湾の時と比べると、展開速度が落ちていることか」

加来「司令はやけに、その事をかなり気にしておりますな」

山口「展開が遅いと発艦速度が落ちる、敵方にもし発見されていれば、今の展開速度では確実に敵の攻撃を喰らうことになるだろう。しかも、構造的に一度誘爆してしまえば、取り返しのつかないことになるな」

加来「そう言えば作戦の発動前に、司令はやけに南雲長官に「対艦装備機も作った方がいい」とか言っておりましたな」

「発艦!」

加来の野太い声が甲板に広がると一人の乗員はそれに反応して旗を振る、すると艦載機の脚にいた乗員が脚にとめてあるナニかを引きすぐに艦載機から退散した。

すると、先程まで動かなかった艦載機がそっと前進して、轟音を立てつつ飛龍の甲板から飛び立っていく、その光景を山口や加来はただ黙って見つめるばかりであった。

_________________________________________________

一方で日本海軍の猛攻撃を受けた第16任務部隊所属の空母「ヨークタウン」とその姉妹艦「ホーネット」は、もはや戦う力は残されていなかった。ヨークタウンは雷撃隊の魚雷により舵をやられ航行不能となりホーネットは九七艦攻の八〇爆弾に加えて九九式艦上爆撃機の体当たりで飛行甲板が大破してしまい、もう応急修理さえ叶わない状態であった。

そんな中、奇跡的に間に合った空母「エンタープライズ」率いる第17任務部隊により命からがら助けられたものの、安全のために残存しているヨークタウンとホーネットの艦載機は、エンタープライズに収容される事となった。

そんな時エンタープライズの作戦室では今後の作戦について入念に考えていた。作戦室には護衛隊旗艦である重巡ミネアポリスからトーマス・キンケイド少将が、ホーネットに乗っていた第16任務部隊の司令であるレイモンド・スプルーアンス少将が、そしてエンタープライズに乗っていた第17任務部隊の司令であるフランク・フレッチャー少将がそれぞれの意見をぶつけていた。


キンケイド「これから一体どうするのだね、フレッチャー?」

フレッチャー「そんなこと私に聞かれても、私とて困りますな」

キンケイド「しかしですな。貴様ら第17任務部隊がしっかりしていれば、奴らに一泡吹かせられることはないはずだと思うがそこのところどうなのだね」

フレッチャー「確かにエンタープライズが間に合えばまだ何とかなったかもしれません。でも巡洋艦に乗っていたあなたに言われる筋合いは無いと思いますが?」

キンケイド「何を!」

スプルーアンス「落ち着きたまえ、キンケイド。我々の目的はささいなことで争うことではない、どうやって反撃していくかなのだ」

キンケイド「そうですが、こんな時に敵に攻撃されでもしたら、リスクが大きすぎる」

スプルーアンス「それもそうだが、こっちの被害は私が乗ってるホーネットとヨークタウン含め二隻なのに対し、日本は主力だった四隻の航空母艦のうち三隻が大破炎上、うち一隻は行方不明だ、少なくとも敵艦載機による攻撃は今のところは安心してもよいぐらいだ」

フレッチャー「その通り、航空攻撃は行方不明の艦を除けばほぼないに等しい、これについてはどう思うのですか?キンケイド少将」

キンケイド「だが確証がない!航空攻撃も危険であるが、それと同時に私は奴らの潜水艦の攻撃が気がかりで、仮に今ここでヨークタウンとホーネット艦載機回収作業中に襲われたら、どう責任をとるつもりですか?」

フレッチャー「それもそうだが、こちらの対潜輪形陣は完璧、いつでも対処はできる」

キンケイド「そこだよフレッチャー、いくら完璧でもどこかしこに穴があれば、そこをつかれる可能性がある以上は安心はできん、そうだろうスプルーアンス」

スプルーアンス「ああ、フレッチャーよ少しは輪形陣の見直しをした方が良いのではないか?それに日本の潜水艦は・・・」

ヨークタウン乗員「敵機来襲!」

スプルーアンス「どうやら、我々は少し油断していたようだな」

キンケイド「おい!何をボサッとしてる!対空戦闘を始めろ!」

ミネアポリス乗員「は、はい!」

フレッチャー「しかし、あの敵機は一体どこから来たのだ?艦載機隊を偵察に向かわせるか?」

キンケイド「そんなの知るか、祖国のために敵を落とす、いまやることはそれだけさ。それに艦載機の燃料が切れたら敵わん」

スプルーアンス「ああ、そうだな」

三人は対空砲が炸裂する音が響く中、無線室で言葉を交わした。一方で乗員達はは唐突に敵機に奇襲され混乱が生じていた。ここヨークタウンでも対空機銃の銃声と爆音辺りに響く、でもそれらが入り混じる中でも会話は響く。

乗員「おい、どうするんだよ!」

乗員2「そんなの、分かったら初めから苦労しねぇよ!」

乗員「全く、ホーネットは?」

乗員2「完全にやられてる、あの損傷じゃあ次喰らったら数時間も持たないぞ!」

乗員「しかもあんな大穴空いてちゃ、喰らっちまったら引火しているかもな・・・」

乗員2「このままじゃこのヨークタウンも、いつああなるか」

乗員「確かにな、全くジャップのヤローどもは本当にクレイジーな奴らだな!」

乗員3「伏せろおおおおおお」


と誰かの声が彼等に聞こえた、だが時すでに遅し、既に死の魔の手が迫ってきてるのだから。

ドカーンと爆音が聞こえたかと思うと、彼等の頭上には吹き飛ばされた艦載機の残骸と甲板の木片が降り注ぐ、でも彼等は運が良い方だった。

残骸は海に落ちていったが、木片は刃物のごとく彼等の方に飛んでくる、なんとか彼等はかすり傷で済んだが、一部の乗員には木片が深々と突き刺さり、痛みで声もでない。だがそんな中でもベテラン達は


「ゴラァ何やってる!さっさと持ち場に戻らんか!ヒヨッコ共!」

「もうちびっちまったのか?それじゃあ海の男というのは務まらんぞ!」


と呆然としている乗員達にカツをいれる、それを聞いた乗員達はすぐさま動き始めた。しかしそれも束の間、突然ヨークタウンに大きな水柱があがったかと思うと、ヨークタウンは大爆発をおこして吹き飛んだ。

_________________________________________________

その頃、飛龍はと言うと繋がるはずのない無線の接続作業に苦戦している真っ只中だった。


山口「どうだ?行けそうか?」

無線員「ダメです、もうピクリとも動きません」

加来「そうか。これからどうします司令?」

山口「そうだな、一体どうするべきか・・・」

乗員1「司令、艦載機隊から緊急電です。先程遂に米軍の航空母艦を発見、攻撃を開始しました!」

山口「そうか、被害状態は?」

乗員1「敵空母三隻の内、二隻は既に中破している模様です。しかも、内一隻は既に航行不能状態とのこと!」

山口「それは好都合だ、残り一隻に全力を注いで欲しい」

乗員1「それがですな、中破した空母二隻の内、もう一隻の方はまだかろうじて自力航行が可能な様子であるそうです」

山口「自走可能か、その空母は一体どこで中破していた?」

乗員1「飛行甲板です。一部に大穴が開いているとも報告していました」

山口「そうか。飛行甲板だけなら、対空火器もまだ生きている筈だ、十分注意して欲しい」

乗員1「了解!」

乗員2「司令!緊急連絡です!敵空母三隻の内、一隻が原因不明の雷撃を受けました!」

加来「なに?!それは本当か?」

乗員2「はい、状況報告の為に上空待機中の艦攻が観測した模様!」

山口「潜水艦か?」

乗員2「ええ恐らく」

加来「司令、もしものことがあります。第二次攻撃隊を出撃させた方がいいかと・・・」

山口「だな、用意はできているか?」

加来「配置は完了しています。いつでもどうぞ」

山口「ヨシ。全機発艦!第一次攻撃隊と合流し、敵機動部隊を叩く!」

加来「了解!発艦準備急げ!」


加来がそう言うと、甲板は再び騒然となった。

_________________________________________________

そんな中エンタープライズの無線室にいたスプルーアンスは逐一伝えられる甲板の光景をただまじまじと聞き続けていた。


キンケイド「クソッ!ヘタクソどもが」

フレッチャー「落ち着けキンケイド、今そんなことを言っている場合か?」

キンケイド「じゃあこうして無線に出ているのはどういうおあそびだ?!そっちは随分と余裕そうじゃないか!」

フレッチャー「それはそれ、これはこれだろう?それに余裕そうなのはそっちではないか!」

キンケイド「な、何だと?!」

スプルーアンス「その辺にしておけ、ヨークタウンは沈没寸前だ、いたまれない気持ちなのだろうと言う事は分かる。それにヨークタウンを襲ったのは恐らく敵潜水艦、そもそも君の対潜陣形の不備でヨークタウンの息の根を・・・」

フレッチャー「いいじゃないか、こちらは三隻の空母を無力化している、たった一隻で何が・・・」

キンケイド「その一隻に我々は今こうして襲われているんだぞ!それに・・・」

フレッチャー「だったら説明してもらおうか、残りの一隻、確かヒリュウだったか、一隻の筈なのになぜこんなに沢山やってきてるんだね!」

キンケイド「黙れぇ、貴様なんかに私の気持ちがわかるものか!」


キンケイドが怒鳴ったその時、既に大穴が開いていたホーネットが大爆発を起こした。

フレッチャーがそれを確認したその時


「逃げろおおおおおおおおおおおおおおおおおお」


と何処からともなく悲痛な叫びが響く。

そして次の瞬間、エンタープライズ全体に大きな衝撃が伝わった。フレッチャーが振り返って甲板を見ると、エンタープライズの第二エレベータ辺りが大きく捲れ上がっていた。


フレッチャー「状況報告!」

乗員1「前部第二エレベータがぶっ飛びました!本体は空に・・・」

フレッチャー「修理は出来るか?!」

エンタープライズ乗員1「わからないのですか!この分じゃ本国のドックに入れないと直せません!」

エンタープライズ乗員2「司令!第二エレベータ直下より出火!」

フレッチャー「ダメージコントロール急げ!喰らったのは何だ!」

エンタープライズ乗員1「おそらく800キロ爆弾かと思われます!被害は甚大!」

フレッチャー「ホーネットはどうなってる?!」

エンタープライズ乗員3「尚も大破炎上中!誘爆も始まっています、おそらくダメージコントロールをしても間に合わないかと・・・」

フレッチャー「畜生!護衛艦隊はどうしてる?!」

エンタープライズ乗員1「あの分では弾幕を張るので精一杯です!無理は言わないほうが・・・」

フレッチャー「なら結構!ダメージコントロールはそのまま!残りは全部対空要員に回せ!艦載機隊はどうなってる?!」

エンタープライズ乗員2「偵察隊、攻撃隊、戦闘機隊、未だ確認せず!」

フレッチャー「やはり別の所で戦っているか。まぁ当然・・・」

エンタープライズ乗員3「敵機本艦に向けて接近!体当たりする気です!」

フレッチャー「何だと?!すぐに回頭しろ!敵に残弾は?!」

エンタープライズ乗員3「確認できます!おそらく魚雷です!超低空で侵入!」

フレッチャー「いい機会だ。奴らに思い知らせてやれ!敵は・・・」

エンタープライズ乗員2「敵機十時の方向、艦攻です!回避不能!」


フレッチャーが何かを言おうとしたその時、エンタープライズの艦橋に艦攻が体当たりし、そのまま大爆発した。

_________________________________________________

それから数時間後、飛龍では飛ばした第一次攻撃隊が帰り始めていた。だが山口が思っている以上に被害は凄まじいものであり、依然として山口に落ち着きが無かった。


乗員1「報告します!第一次攻撃隊がエンタープライズ級一隻を大破させたとの情報が」

加来「司令、やりましたな」

山口「で、どっちだ?」

乗員1「甲板が吹っ飛んでいた奴です!艦は炎上多数で、おそらく消火も間に合わないものかと思われます!」

山口「ご苦労。艦載機隊の被害は?」

乗員2「はっきり言って甚大です。出撃した機体の内、艦攻隊が九機、艦爆隊が六機、戦闘機隊が十機の損害です」

山口「中破して居たとは言えかなりの損害だな。第二次攻撃隊の被害も・・・」

観測員「艦長!友軍の艦攻隊が着艦許可を求めております!」

加来「求めるまでもないだろう。どうせ友軍だ、軽くあしらっておけ」

観測員「それだけではなく、多数が損傷している模様です!」

加来「損傷だと?!なら早く言え!すぐに着艦させてやるんだ!」


加来がそう言うと、甲板にいる乗員達が慌ただしく動き始める。山口の脳裏には残った三隻の空母がどうなっているか、猛烈に気になっていた。


_________________________________________________

時は進み夜になると、大破炎上している赤城から数多のボートが駆逐艦や戦艦へと流れていった、その中には負傷しまだ意識が戻らない南雲と辛うじて南雲を助けることができた草鹿もいた、草鹿はふとここまでの経緯を思い出す。

赤城が被弾し、その過程で意識を失った南雲を担ぎながら、外の戦況を、被弾し炎上する乗艦の赤城を草鹿はただ黙って眺めることしか出来ずにいた。だが運も味方してくれたのか、大破する直前に第二次攻撃隊を出撃させる事ができたものの、最早帰る母艦すらなくなっていた。

結局、蒼龍は多数の被弾によって動けなくなり、その後大爆発、加賀は弾薬に引火して飛行甲板が完全に全損したものの、三隈の犠牲もあって草鹿が脱出に成功したぐらいにようやく火を消すことに成功していた。母艦へと帰還した艦載機達は一機も収容されず、搭乗員の回収後に海の藻屑となった、そしてここで赤城の最後は決する。


「てぇ!」


と言う声が駆逐艦に響くと、駆逐艦からは魚雷が発射され赤城へと向かう。

そして、駆逐艦の甲板には、助けられた赤城の乗員や航空兵が各々涙を流していた。


乗員「参謀長・・・」

草鹿「気を使わんでもいい」

乗員「では。・・・これからどうします?」

草鹿「決まっているさ。各艦に伝達してくれ、作戦は現時点を持って中断、蒼龍と三隈を速やかに撃沈処分しこの海域から撤退する」

乗員2「参謀長!」

草鹿「わかってくれ。加賀が大破している上、潜水艦の追撃があるやもしれん、そうなれば加賀さえ失ないかねん」

乗員2「しかし、我々にはまだ飛龍が・・・」

草鹿「飛龍一隻ではどうにもならん、それに大破した加賀を守るのも我々の任務だ」

乗員2「ですが飛龍がまだ戻ってません・・・」

草鹿「聞こえないのか?我々は作戦を中断、加賀を連れて撤退する・・・」


その声にその兵士は何も答えず、ただ黙った。

そして赤城に水柱が上がったかに見えると、急速に船体が傾き始めた。


「敬礼!」


と言う怒号が聞こえると、駆逐艦の乗員や赤城の乗員さらには草鹿が、沈みゆく赤城に対して、目に涙を浮かべつつ敬礼した。かくして解体前に建造されてから長らく働いた日本海軍の誇りは、暗い海の底へと生涯に幕を下ろした。

_________________________________________________

一方飛龍は、暗くなりかける中で最後の一機が着艦し、次の段階にうつろうとしていた。


乗員「司令、航空隊全機の収容が完了しました」

山口「分かった。加来君、戦果は?」

加来「はい、一隻は恐らく撃沈確実。一隻は後の報告により我が方の潜水艦によって大破確実、これ以上の航行はおそらくできないかと思われ、おそらく撃沈処分かと。最後のは味方の攻撃により前部のエレベータを損傷していて航空機の発艦は困難を極めます」

山口「我が方の損害は?」

加来「第一次攻撃隊は全機で二十五機が未帰還、第二次攻撃隊は艦攻隊七機、艦爆隊四機の全十一機が未帰還となりました」

山口「全三十六機の損害か。味方の機体はいくつこっちにやって来た?」

加来「確認しただけでも艦攻が十五機、艦爆が十二機、戦闘機が五機程やってきました。その内、大破七、滑落二の損害です」

山口「搭乗員は?」

加来「はい。友永飛行隊長を含めた全七十余名が戦死、回収できた友軍機も多数が死亡していました」

山口「分かった。君、搭乗員達には「本当によく頑張ってくれた」と伝えてくれ」

乗員「了解!」

加来「あ、それと司令一つ大事なことが」

山口「なんだね加来君、そんな険しい顔をして?」

加来「はい。先程の緊急電により、機動部隊本隊は全滅した模様です・・・」

山口「すぐ転舵して合流できそうか?」

加来「私としては、この霧のせいで余計に迷ってしまうのはよろしくないかと」

山口「・・・仕方ない。我々は独自で撤収する」

加来「分かりました」

山口「済まんが、ついでに他の乗員にも伝えておいてくれ。私は後から行く」


そう言うと、加来は頷いて艦橋を降りていった。残った山口は防空指揮所に上がると、空に浮かぶ朧月を見上げる。


「まさか、こう言うことになるとはな・・・」


といつの間にか、そう呟いていた。そして、霧に包まれた飛龍は再び何処かへと姿を消した。だが飛龍の、いやこの世界の運命は大きくそして確実に変貌していく事に、山口はまだ気づかなかった。

時に一九四二年の六月五日の事である。大日本帝国海軍が発動した「MI作戦」は、大日本帝国の大敗と言う結果に終わった。

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