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幽霊空母「飛龍」  作者: 篠山誠仁
序章 始まり
6/8

第五話 接触

突入して既に十分以上が経つ。山口と加来に出会った六十六達は、二人の威厳に押されつつもなんとか接触することができた。


六十六「・・・失礼ですが、御二方は本当に山口司令と加来艦長なんですか?

山口「ああ、それがどうした?その顔を見た感じでは、何かあってここに来たのだろう?」

六十六「ええ、まぁ」

山口「そんなに堅苦しくなるな、さっき言っただろう私は何処にも逃げないと」

加来「私も逃げません。さっ、早く話して」

六十六「そうですか・・・」

加来「どうかしたのですか?」

シゲ「すみません、うちの父は少し緊張しているだけですから、気にしないでください」

六十六「済まんなシゲ、見苦しい所を見せてしまってすみません」

加来「謝らなくても結構です。所で?お名前を教えて貰ってもよろしいですかな?」

六十六「はい、私は日本国海軍長官の山本六十六と言います。そして隣は私の息子の重六、シゲとお呼びください、そしてその隣にいるのは日本海軍第一航空機動艦隊司令の南雲新一です」

加来「山本?!司令!」

山口「うむ。失礼ですが、あなたの血縁者に「山本五十六」と言う方は・・・」

六十六「言うも何も、私の曾祖父の事です」


その瞬間、二人の目つきが変わったのを、六十六は見逃さない。


山口「いや失礼。あまりに唐突なもんで、少しばかり驚いてしまいました」

シゲ「いえいえ。なんでも父が言うには私の先祖は大東亜戦争中の海軍のお偉いさんらしいのですが、それが一体どうしたのです?」

加来「山本長官の事を知らないのですか?!」

シゲ「ええ、全く」

加来「そ、そうですか」

山口「所で失礼ですが、今は何年ですか?」

南雲「2018年の八月です。あなた方の時代から見れば約70年後ですな」

山口「そうですか。予想はしていましたが、まさか今度はここに飛ばされるとは」

シゲ「飛ばされる?」

加来「我々の問題ですので、あまり気にしないでください」

シゲ「そうですか」

山口「ところで、戦争はどうなったのかね?」

六十六「大東亜戦争の事ですか。・・・戦争は、日本が米英に条件付きで降伏し終戦をしました」

加来「つまり、負けたと言うことですか?」

六十六「そうなりますが、正確に言えばほぼ痛み分けのような形で終戦を」

加来「司令・・・」

山口「うむ。もしかしてと思っていたが、やはり負けたのか・・・」

六十六「何か問題でも?」

山口「いえ。失礼ですが、もう一度要件をいって貰えませんか?」

南雲「・・・投降促しに来ました。投降後ら当艦の停戦と引き渡し、それからあなた方二人の身柄を預からせてもらいたい」

山口「拒否したり、殺したりしたら?」

南雲「死亡を確認したら即刻、そうでなくても一時間半も我々が出なかったら、生死を問わずに我々の空母から発艦した攻撃機と戦車連隊が、飛龍に攻撃を加えます」

山口「分かりました。停戦を受け入れましょう」

六十六「・・・失礼ですが、我々が嘘をつく可能性は気にしないのですか?」

山口「あなた方は信頼できる相手です。恐らく嘘はついてないかと・・・」

六十六「そうですか」

加来「失礼ですが、我々の身柄の確保後は、今後どこに移送するのです?」

シゲ「私の指揮する駆逐艦に乗ってもらいます」

加来「分かりました。・・・後、部屋はどこに?」

シゲ「士官室に空きがありますので、そこに」

加来「ありがとうございます」

六十六「いやしかし、もっとこう手応えのある返答をするかと思いましたよ」

山口「我々もそう単純では無い。しかし戦争も終わった事は分かりました、もう「戦う必要は無い」と言える状況である事は確か、加来君はどう思う?」

加来「私も同意見です。しかし司令、私が言うのもなのですが、私の部下達は納得してくれるのでしょうか?」

山口「気にしなくてもいい。もしもう戦う必要が無いなら、喜んで私は飛龍を捧げよう、それは君だって同じだ。きっと分かってくれると私は思う」

加来「確かにそうですが、部下達にとっては彼らが言っていることは、きっと信じられない事だと考えます」

山口「まぁ、君の意見も一理ある。だがもしここで彼らの要求を断れば次はいつ降伏することができる?」

加来「・・・わかりません」

山口「そうだろう、それが君の部下のためになるなら、私は降伏を選ぶ。後は上手い事伝える事ができれば、全て丸く収まる筈だ」

加来「そうですか」

山口「・・・わかってくれ」

加来「いえ、私は最後までついて行くと誓っています。司令が言うなら、きっと部下達も信じてくれるかと・・・」

山口「なら、安心だな。さて海軍長官殿、ここでひとつ頼みがある、航行用燃料と航空燃料、それと食糧を向こうで補給してくれませんか?」

六十六「もちろん、ですがそれに見合う情報を出来るだけ我々に伝えて下さい」

山口「情報と言うと?」

六十六「はい。どうしてあなた方がここにやって来たのか、そして、ここにくる前に格納庫を見たのですが、本来ならミッドウェーで沈んでいる筈の飛龍にはあり得ない機体達がいましてね、それについても教えてもらいたい」

山口「・・・いいでしょう。ただし、これから私が言う事を本気で信じてくれるのならですが」

六十六「構いません。それよりも、早く教えて貰いたい」

山口「そうか、加来君、至急艦内放送の準備を」


加来は無言で頷くと、何処かへと行ってしまう、そし山口は三人に


「ついてきてください」


というと、三人をとある場所へと連れていった。そこは飛龍の艦橋であった。山口は三人を左側側にある見張り台に立たせると、しばらくして続々と乗員が甲板に集まってきた。

全員が集まったのを確認すると、山口は乗員達に話し始めた。


山口「諸君!今日この日まで本当によく戦った!思えばあの日、この国を旅立ってから実に一年以上は経過した。その間、我々がどれほどの人命を失ったのか、我々はその者達の尊い犠牲によって、この場面に立つことができた!しかし、先の戦いでの懸命な努力も虚しく、とうとう我々の戦闘能力は遂に無くなってしまった!だが、我々は見放されたわけでは無い!諸君らの知っての通り、私の横に立っている三人は、この時代の同胞であり、我々が戦ってきた国の子孫達である!悔しいことかも知れないが、我々は最早一人ではどうしようもできない、そんな状態に陥っている!しかし安心して欲しい!私は彼等との会談の末、未来の祖国に保護してもらう事になった!」

乗員1「本当ですか?!」

乗員2「助かるのか!」

加来「静粛に!」

山口「諸君達に紹介しておこう、今回の保護に際して会談の場を設けてくれた、山本六十六海軍長官!その同席者である、南雲真一第一航空機動艦隊司令と山本重六艦長だ!」

六十六「ご紹介ありがとうございます、司令」

山口「察していそうだから一応説明するが、彼の曽祖父こそ、我々の上官たる山本五十六聯合艦隊司令長官である!」

乗員1「何ですって?!」

乗員2「と言う事は、山本長官の曾孫と言う事ですか?!」

加来「そう言う事だ!」

山口「未来の祖国、これが何を意味するのかは知っているだろう。諸君らの知っての通り、我が祖国は九月二日のあの日、米英支仏の四国に対して、共同宣言を受け入れ降伏した。だがそれを信じようしなかった我々は、真実を突き止めるべく猛進し、結果このような結末に至った。我々が負けた事は紛れもない事実であり、変えようのない事である、だが諸君達は信じられないからと言って、無気力になる事もなければ、暴走して私を殺す事もなかった!それは、ひとえに皆が規律正しく職務を全うしたからに他ならない!残念ながら、ここに立たない状況にある者、ここに立つ事がついに訪れなかった者達も大勢いる!にも関わらず、このまま戦闘を継続する意見が飛び交っている!もし戦闘を続けるなら、それは地獄以外の何者でもないだろう!私はそれを望まない!幸いにも、彼等が問答無用で攻撃する行動を取る事は無かった!さらに彼等は、死亡するか一時間程が経ったら生死を問わずに攻撃すると言っていた。私はそれを加味して諸君達の安全の為に停戦と引き渡しに合意した、諸君らの意見としてはきっと違う者だろうが、どうか分かったほしい!これが最後の機会かもしれないのだ・・・」


山口の言葉の圧に、乗員らと六十六達は萎縮していたが、しばらくするとその場にいた全員がその事実を受け止め始めた。山口は最後に


「君たちがどうするのかは勝手だが、真に国を思うのなら、このまま降伏を受け入れてほしい」


と言うと、その場にいた全員は沈黙を持って問いに頷いた。それを持って山口は、飛龍の引き渡しに応じたのであった。

艦内放送が終わり、飛龍はタグボートに引かれ湾外に出ると、工作艦が艦の応急修理のために飛龍に接近して来た。六十六が探照灯を借りて


「接近ハ問題ナイ。直チニ作業ヲ開始サレタシ」


と答えると、工作艦はすぐさま飛龍の左舷に接舷すると、双方の乗員達による応急修理が開始した。

その頃、


「修理の邪魔をしてはいけない」


と山口らに促された六十六達は、自分たちが乗ってきた駆逐艦「ゆきかぜ」に二人を案内する為、ヘリを再び呼び寄せた。初めてみる航空機に最初は戸惑っていたものの、いざ乗ってみると気に入ったようで


「どうやって浮いているのですか?」

「型式名を教えてもらいたい」


と大量の質問攻めを展開していた。ゆきかぜに着くと、二人は艦内にある会議室へと案内された。


シゲ「居心地はいかがですか?」

山口「いや、気にかけなくて大丈夫だよ」

加来「それにしても色んな機械があるんですな」

シゲ「ええ。対潜装備やレーダー、電波の受信機なんかもあります」

加来「なるほど、えらく対潜水艦戦闘に注力しているのですね」

シゲ「ここでは当たり前なんですよ」

加来「そう・・・」

南雲「さて、お二人に質問を」

山口「わかっている、だが私の口から言えることは本当のことかは別だが、それでもいいか?」

六十六「ええ、問題はありません」

山口「そうか、じゃあ話すとするかな、今の時代にいるあなた方に、私たちの戦いを」

六十六「覚悟はできています」

山口「聞いてはおらんよ。最初に、この時代にやってくるまで、我々は色んな時代を旅してきました。それが始まったのは、1942年6月5日のMI作戦に参加した時の頃でした・・・」


そう言って山口は、口を開いた。

それは山口や加来を初めとする飛龍の乗員たちが経験した、孤軍奮闘の物語であった。

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