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幽霊空母「飛龍」  作者: 篠山誠仁
序章 始まり
4/8

第三話 作戦会議

話は進み、沈みゆく太陽の中六十六、南雲、そして六十六の息子である山本重六(やまもとしげむつ)の三人を乗せた駆逐艦「ゆきかぜ」は、フィリッピンから委任統治領であるパラオ諸島へと、南雲の第一航空機動艦隊と共に向かっていた。

一航戦の旗艦である空母「あかぎ」甲板上には、主力機であるF-35CJ、F/A-18J「陽光」、F-2Cなどの攻撃機や戦闘機が所狭しと並べられており、そのどれもが爆装していた。

そんな中、六十六は海風に吹かれながら、南雲が言った「幽霊空母伝説」について、物思いにふけっていた。


重六「父上、まもなくパラオ近海に到着します」

六十六「重六(シゲ)か、もうそんな近くまで来ていたんだな」

シゲ「相変わらず海を眺めて、何か考えごとでもあります?」

六十六「まぁな。・・・所で例の事は聞いてるな」

シゲ「南雲中将がまた変なことでも言ったのでしょう?それに父上はまた・・・」

六十六「ああ、だが今回の件はどちらかと言えば違うものになるな」

シゲ「「大東亜戦争の幽霊空母伝説」でしょう?どうしてこんな根も葉もない噂なんかを・・・」

六十六「まぁそう言うな、シゲも本当は気になってんじゃないのか?」

シゲ「まぁ、確かに気にはなりますけど・・・」

六十六「だろう?それに、母さんからの手紙をゆっくり読めるのも久しぶりだろ?」

シゲ「ええ。最近はロシアの潜水艦の領海侵犯も多くて、今日ようやく休める筈だったのに・・・」

六十六「まぁそう言うな、緊急発進で余計に疲れるよりか良いだろう?」

シゲ「それはそうですね・・・」

六十六「な?それに・・・」

乗員「艦長。今後の展開についての会議が・・・」

シゲ「分かっている。・・・では海軍長官、どうぞこちらに」

六十六「分かった。すぐ行く」


そう言うと六十六とシゲは、ゆきかぜの艦内へと入っていった。

________________________________________

その頃パラオのコロール島では、陸戦隊による戒厳令が敷かれていた。74式戦車改や16式機動戦闘車がその砲を向ける先にはある一隻の「軍艦」が周りの目を気にせずに堂々と鎮座していた。

戦車隊隊長であるである船坂は、部下の熱気を宥めつつも、ヘリ部隊からの報告を待っていた。


歩兵1「船坂隊長!全車配置完了しました!」

船坂「ヨーシ!いいか、命令があるまで絶対にぶっ放すなよ!」

歩兵1「了解!」

歩兵2「しかし隊長!たかが十糎が船舶なんかに効くんですか?」

船坂「効かないわけじゃない。だが上はそんな事も梅雨知らずよ」

歩兵2「やはり我々は使い捨てなのでしょうか?」

船坂「ま、兎にも角にもだ。狙撃班の配置は完了してるか?」

歩兵3「はい!コロール・バベルダオブ連絡橋付近に三班!突入班も付近で待機中!」

船坂「ヨーシ!後は海軍のお偉いさん方が上手くやってくれるか次第だな」

歩兵2「しかし、本当に上手く行くんですかね?」

船坂「生体発信機は付ける、もし生命活動が停止すれば「あかぎ」から爆弾のプレゼントだよ」

歩兵2「しかし・・・」

歩兵1「隊長!アパッチ・コブラ両隊の配置、完了しました!」

船坂「ヨシ!おまえらよく聞け!後は海軍のお偉さん方が来るのを待つだけだ、それまで弾の一発も撃つんじゃねえぞ!」

歩兵1「分かってますって!」

歩兵2「あの隊長?結局、この船って一体なんですかね?」

船坂「知るか。まっ、それもこれも海軍のお偉さん方が来たら分かることよ」

月を見ながらも、船坂はそう言った。

________________________________________


話はゆきかぜ艦内へと戻り、六十六達は「例の船」を見たと言う少年と、話をしていた。


六十六「お父さんの件は私が後でキツく言っておくよ、だから私にありのままを話してごらん?」

少年「本当に父さん元気になるの?」

六十六「ああ、本当だよ。だから安心してね」

南雲「・・・なんか余計に怖がってないか?」

六十六「大丈夫だよ。シゲが連れてきた友達と話す時もこうだったから・・・」

南雲「その時は俺もいたけど、めちゃくちゃ怖がられてたぞお前」

少年「ねぇ、いつ話せばいいの?」

六十六「ああごめんね。じゃあ、話してくれないかい?」

少年「うん。僕は父さんは漁師をしてるんだけど、今日もいつもの様に魚を獲りに行ったの。僕はそのお手伝いに・・・」

六十六「その日は魚は獲れたのかな?」

少年「ぜんぜん。だからもっと沖で魚を取りに行こうとしたの、その時に・・・」

六十六「お父さんの日記にあった「とんでもないモノ」を見たんだね?」

少年「うん」

六十六「それはどんなのだったのかな?」

少年「えーと。船なんだけど舷側に沢山の大砲が載ってて、艦橋が見えなかった」

六十六「そうなの?他に特徴はあるかな?」

少年「前の方に大きな穴が開いていたの、焦げ臭い匂いと酸っぱい匂いが漂ってきて、とても気持ち悪かった」

シゲ「父上。まさかそれって・・・」

南雲「それ以上言うな」

六十六「それ以外に何があったのかな?」

少年「艦首に金色のナニカが付いてた。上には飛行機が乗ってた」

六十六「飛行機はどんな見た目だった?」

少年「プロペラが付いてて、古そうだった」

六十六「・・・ありがとう。おじさんは少し他のおじさん達とお話ししてくるから、ここで待ってもらえるかい?」

少年「うん」

六十六「ありがとう」


そう言うと、六十六はシゲと南雲を連れて部屋を出ていくと、すぐに会議を始める。


シゲ「父上。どうですか?何か分かった事は・・・」

六十六「無い、あの少年が見たのは「航空母艦」である事以外はな」

南雲「だが、どうしてこんな所に?そもそもパラオは自治権は向こうにあるとは言え日本の領域だ、明らかな領海侵犯だぞ」

六十六「そこなのだよ。しかも話的に明らかに古い時代のモノだしな」

シゲ「父上。他に見た目の特徴は分からなかったのですか?」

六十六「損傷を受けている事は間違いない。それに艦首にある金色のナニカは、おそらく菊花紋章の事だろう」

シゲ「菊花紋章ですと、我々の艦船ですか。でも確か残ってるのは、我が国だと「葛城」以外は・・・」

南雲「だな。しかも記念艦状態で動く事もできない筈だ、動かすにしても海軍の許可が必要だし・・・」

六十六「うむ。君、パラオ諸島からの連絡はまだ来ないのか?」

乗員1「もうそろそろ来る筈ですが・・・」

乗員2「失礼します!パラオ諸島からの連絡が来ました!」

六十六「でかした。様子はどうなってる?」

乗員2「陸戦隊の連中は大人しくしておりますが、臨戦体制を維持しています」

六十六「で?肝心の目標に動きは?」

乗員2「今の所、ありません」

六十六「ありがとう。大体午後五時ぐらいには現場入りする、そう伝えといてくれ」

乗員2「了解しました」

南雲「あ、おい。写真は現像できたのか?」

乗員2「無人偵察機の映像がありますが、まだデータ転送中で・・・」

乗員1「失礼します!先程、映像の転送が完了しました!」

南雲「でかしたぞ。で、内容は?」

乗員1「こちらなんですが・・・」

シゲ「何かマズいことでもあったのか?」

乗員1「見れば、わかると思います」


そう言うとその乗員は、徐にスクリーンを出して三人にとある動画を見せた。そこには六十六が予想していたような、第二次世界大戦期の航空母艦がポツンと停泊しており、飛行甲板の一角には煤と暗闇でよく見えないものの、文字らしきものがしっかりと書かれていた。


南雲「これが、例の航空母艦か」

乗員1「おそらくそうです」

シゲ「しかしえらく古い見た目ですね。時代的に葛城と同じごろかもですね」

六十六「恐らくな。後部の飛行甲板に何か文字みたいなのがあるが、これは?」

乗員1「煤と暗闇でよくは分からないんですが、おそらく識別記号かと。全長は概算で二〇〇メートル超、前部は損傷していますが原型はまだ保っています」

シゲ「でも珍しいですね。艦橋が左側に付いているなんて」

南雲「だな、ロクはどう捉える?・・・ロク?」


南雲がふと横を見ると、六十六は少し口を開けて唖然としていた。南雲が話しかけようとすると、六十六は慌てて質問する。


六十六「南雲、確かくる前にお前「幽霊空母伝説」を言ったよな?」

南雲「何を今更?」

六十六「君、無人偵察機は何分撮ってた?」

乗員1「十分ぐらいです。目標からは撃たれる様子も全く・・・」

六十六「では、両舷も撮っていたんだな?」

乗員1「いえ、上からだけです」

六十六「そうか。・・・南雲、お前「飛龍」の事について知ってるな?」

南雲「ああ。1942年のミッドウェーで行方不明になったんだろ?何でお前そんな当然な事を?」

六十六「・・・コイツ似ているんだよ、飛龍に!」

南雲「飛龍に?確かに飛龍は艦橋は左についていたし、時代的にも近い。だがそうだとしても、どうしてミッドウェーで行方不明になった飛龍がパラオにいる?」

六十六「私にも分からん。だが、そうとしか思えないのだ」

南雲「おい、何も加工してないな?」

乗員1「でしたらこんなもの出しません。紛れもない事実です」

南雲「・・・やはり直接見る他ないようだな」

六十六「ああ。シゲ、後何分で現地入りする?」

シゲ「はい、現地時間で一六四〇を予定してます」

六十六「そうか。それでなんだがな、この船に儀礼用の衣装はありそうか?」

シゲ「ありますけど、着るんですか?」

六十六「その通り。私の杞憂ならいいんだが、仮にあれが飛龍でここまで時を超えてきたなら、もしかしたら戦争が続いていると思っていたら、こちらにしても面倒になる。そうならならないためにも、一応の身なりは整えたいと思ってね・・・」

南雲「違ったらどうする?」

六十六「その時は私が恥を受ける事になるだけだ」

南雲「それもそうか。だがなロク、お前一人では行かせんぞ、勝手に死なれちゃ困るもんでね」

シゲ「じゃあ私も。別にいいですよね父上?」

六十六「・・・まぁいいだろう。もしもの時には仲間がいた方がいい」


それを聞くと、どっと船内に大きな笑い声が響きわたった。

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