序章 始まり
2018年8月15日 パラオ
「父ちゃん!発動機の音だよ!」
漁をしている少年が父親にそう言った、少年の父親はその音が聞こえているものの、一体どこからそんな音が聞こえるのか分からない。
「早いとこ、引き上げようよー」
と少年は怖がって言うものの、父親は聞こえていないのか冷や汗を垂らした顔で辺りの海をキョロキョロ見回す。
だが周りにあるのは、先程息子と漁を始めようとした時に出てきた、辺りが暗くなりそうなほどのとても濃い霧のみ、その事が少年の父親の恐怖の感情を更に強くするものであった。
「分かった分かった、今日の所は引き上げよう」
と今度は父親が少年に言うものの、不思議な事にあれだけ怖がって帰ろうと言っていた少年の声が全く聞こえない。
「どうしたんだー?」
と父親が言おうとしたその時、突然まるで波が立ったように、二人の乗る小さな漁船が大きく揺れ動いた。
「父ちゃん!でっかい船だ!」
少年が指を指しながらそう言った、そして父親が少年の指差す方向に目を向けた。
そこには船首に菊花紋章がついている、とても大きな船が二人の乗る漁船のすぐ脇をとても速い速度で通過していく姿だった。
恐ろしくなった父親は少年の合意を待たずに漁船をその大型船から離れるのであった。
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その夜、自宅へと帰って来た父親は自分の手記に今日の事を書き殴る、そして
「今は自分はおろか家族の生死さえ自分にはわからない、もしかしたら私は見てはいけない物を見てしまったのかもしれない。」
と書き殴って、その船の姿の絵を描こうとしたその時、突然妻の叫び声がリビングで響いた、何がなんだか分からずに二階の自室から駆け降りると、数人の黒服の男が息子と妻に拳銃を突きつけている光景が目に飛び込んできた
「何してる!」
と彼が言おうとした次の瞬間、彼は後ろからの衝撃によって目の前が真っ暗になるのであった。
黒服の男達は気絶させた男とその妻と子をワゴン車に乗せると、そのままどこかへと逃げ去っていくのであった。
その後、何者かによってその家は放火されたが、その一家は骨の一つも見つからなかったと言う・・・
第一話を読んで頂いてありがとうございます。自分がここに投稿するのは初めてですが、今後ともよろしくおねがいします