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ぼくはきみの救い

作者: 冬夜雨

「もうやだ、消えたい」



死にたいならぼくのためにだけ生きてって言う。

逃げたいなら全部放ってどこかに行こうって言える。



「つらい、こんなのやだ」



会社のこと?仕事のこと?


……今きみの彼氏でいるゴミのこと?

雑に扱われいい関係なんておかしいでしょ。

誰かに愛されたい寂しさをなんでそんな奴で埋めるの。



「だって好きなの」



至極あたりまえの反論。

それはそうかもしれない。一応彼氏って立場だからね。

でもこんなにやつれてるのってやっぱり悲しい。


執着心からのもの?ときみの泣き腫らしたまぶたを見ながら問いかける。

きっときみはわからないっていうよね。



「わかんない、知らない」



きみを適当に扱っていい人間なんて存在しないんだけど。


それはきみ自身も含まれてる。

自分自身を傷つけるように増えたピアス、ひとつずつ順番も覚えてる。

ねえ、きみにとってそんなに初恋って大切?


初めての人と最期までいたいっていうその夢、こんなに泣かないと手に入らないの?



「わかってる、けど、好きなんだもん」


「ぼくもきみが好きだよ」



その気持ちを知っててこうやってぼくに逃げてくるんだよね、きみは。

本当ずるい。ぼくは拒絶しないからね。



「友達のそれじゃん……」



けどちゃんと信じてはくれてない。

きっと友愛とかそういうものって認識してるよね。



「時間使ってごめん」



謝らないでいいよ。


だって、ねぇ。

きみのそのだぁいすきな彼氏をそそのかして浮気させたのはぼくだからね。


そうしたらぼくに泣きつくでしょ?

つらいでしょ?

死んで逃げようなんて思わないで。ぼくに真っ先に逃げるように仕向けたんだよ。



触るね、お伺いをたてて頭をなでる。

頭頂部から愛おしむように。慈しむように。



「ねえ、ぼくにしない?」


「だって幼なじみだよ、友達じゃん」


「そう?育ちとか家とか近い距離の分、価値観の違いは減るでしょ」


「効率厨……」


「ぼくはずっと本当に好きだった」


「……もてるくせに」



溢れる涙を擦ろうとするきみの手を繋ぐ。

手のひらに吸い取らせた涙をもらいうけるようにぼくの頬にあてる。ひやりと冷たい。



「好きだよ」


「うそだぁ。だってさぁ、」



ぼくはふらふらしてるように見えた?わざとだよ、それ。

きみ以外はいらない。

きみのためにいい人優しい人かっこいい人を演じてただけ。


だからこそきみを見守るふりして恋愛相談にのってたんだ。

一回ぼく以外の男を知らないと味見したくなっちゃったら困るからね。ぼく以外の男はきみにとって毒でしかないよ。


もうちゃんと覚えた?学習したよね?


ぼくはきみの薬にも救いになれる。

きみのためなら。


あともう少しかな。


ぼくは、きみの救い。

愛してるっていう呪いを救いにしてあげるね。

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