氏直の次なる一手
小田原城に戻った氏直は、家臣たちと共に次の策を練っていた。箱根での勝利は士気を高めたが、韮山城の落城が新たな危機をもたらしていた。広間に集まった家臣たちの顔には、希望と不安が混在している。
「殿、韮山城が落ちた今、敵は南東からも迫ってくるやもしれぬ。どうすべきか?」
松田康長の問いに、氏直は縄張り図を指差した。
「秀吉の狙いは小田原の包囲だ。だが、俺がそれを許さない。まず、城の防御を固める。堀の水を増やし、土塁に木柵を立てろ。さらに、城外に仕掛けを用意する」
北条氏規が首をかしげる。
「仕掛けとは?」
「敵が攻めやすいと見る場所に、隠し砦を設ける。そこに兵を潜ませ、近づいた敵を叩く。俺の知る戦術では、これを罠と呼ぶ。敵の油断を誘うんだ」
家臣たちは驚きつつも、氏直の言葉に引き込まれていた。悠真の知識が、戦国時代の常識を超えた策を生み出していた。
「さらに、風魔に新たな任務だ。小太郎、聞いているな?」
広間の隅に立つ小太郎が頷く。
「敵の斥候を捕え、偽の情報を流せ。『北条が援軍を呼んだ』とか、『小田原に兵粮が溢れている』とか。秀吉の判断を狂わせるんだ」
小太郎が笑みを浮かべる。
「面白い策でござるな。敵の頭をかき乱すのは、風魔の得意とするところ。早速動く」