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15. 放課後

 放課後はすぐに帰るつもりだったが、遥の誘いを断れず、仕方なく一緒にオカルト研究会の部室へ足を運ぶことになった。


 僕たちが来たのを見て、雨宮さんは少し驚いたような顔をしてから、すぐに嬉しそうに笑いながら僕たちを迎えてくれた。それから、麦茶を持ってきてくれ、カバンからノートと筆箱を取り出してテーブルに置き、続けて本棚から数冊の本を選び出した。


「2人とも、『幽霊は本当に存在するのか』について、一緒に研究して議論しませんか?」


 早くチャンスを見つけて離れないと、霊能力がうっかりバレたらまずい。もし雨宮さんが遥みたいに僕のことを知ってしまったら、変な目で見られずに接してくれるかどうか分からないから、そのリスクは避けたい。


「先日、まるで幽霊に憑かれたみたいな出来事について、研究とまとめをしたいと思っています。それをSNSに投稿したいんです。オカルト研究会なのに、最近は関する活動が全然更新されていない気がしますし」


 参加したくはなかったけど、隣にいる遥は興味津々で賛成した。

 部室にいる3人の中で、賛成していないのは僕だけだった。断ったら雰囲気が壊れて、空気が気まずくなりそうだ……仕方なく、僕も賛成することにした。

 すると、雨宮さんはまるで何か不思議なスイッチが入ったかのように、目を輝かせながらその時の詳細な感じたこと、さらにネットや本で見つけた幽霊に関する知識を興奮気味に話し始めた。


 その話をしているうちに、顔がだんだんと変態みたいに赤くなり、息も少し荒くなっていくのを見て、思わず『どうして僕の周りにはこんな変な人ばかりなんだろう』って考えてしまった。

 幽霊に取り憑かれたことを知った人が、こんなにも興奮するのは初めて見たし、まるでもう一度体験したいみたいな感じすらする。

 普段の雨宮さんって、品行方正な優等生じゃなかったっけ?なんで霊的な話になると、急に変態みたいな人になるんだよ?

 隣を見ると、遥は真剣に雨宮さんの話を聞いていて、しかも自然に返事をしている。これが性格的に変人同士の交流ってやつか……?


「やっぱり藤原先生にお願いして、あの時本当に先生のお子さんに憑依されていたって証明してもらった方が、みんなを納得させやすいでしょうか……」


 長い話し合いの末、雨宮さんは幽霊の存在をみんなに信じさせる他の方法がどうしても思いつかなかった。

 ずっと黙って話を聞いていたけれど、彼女がそれをしようとしていると聞いた瞬間、もう黙っていられなくなった。


「あの、そんなのはちょっと良くないんじゃないですか?藤原先生はお子さんを2度も失うという辛い経験をされていますし、その時の詳しい経緯を思い出して話させるなんて、さすがに酷すぎると思うんですけど」

「うーん、そうですね……他の方法を考えるしかない」


 幸い雨宮さんがどうしてもそうしたいと主張することはなかった。もし無理にでもやろうとしたら、藤原先生を再び傷つけてしまうかもしれないから。それに、僕は涙を見るのが苦手だ。


「あずやくん、本当に優しいですね」

「今まで、何回も僕のことを褒めてるけど、飽きないの?」

「私、あなたを褒めるのが結構好きなんですよ」


 別に褒められるのが嫌いってわけじゃないけど、なんか恥ずかしい。特に、家族以外の人から褒められることなんてほとんどないし、しかも褒めてくれるのが美少女だなんて。

 時々、思わずドキッとすることもあるけど、まぁすぐに落ち着くんだ。でも、頻繁にこういうのがあると心臓に悪い。


「お2人とも、本当に仲がいいんですね」

「え?どうしてそう思うんですか?」

「なんだか、私と関係を良くしたくないみたいに聞こえるんですけど?」

「そういう意味じゃない」


 自分では、他人の前で遥との距離はそんなに近く見えないと思っている。ただ、もし雨宮さんですらそう思っているなら、他の人たちも同じように考えているかもしれないと、ちょっと不安になった。

 普段はあまり遥のことに気を使っていないけど、彼女は他の男の子とはあまり近づかず、むしろ距離感を保っているようだから、もしそれが誰かに見つかったら、ちょっと面倒なことになるかもしれない。


「吉川さんはよく寺西さんと一定の距離を保っているように見えますが、実は寺西さんが君にだけ『特別』な態度を取るのは、少し見ればすぐ分かると思いますよ」

「特別な態度?」


 遥が他の男の子に対する態度と比べると、確かにちょっと違う気もする。でも、それが何だっていうんだろう……

 それなのに、雨宮さんのニヤニヤした顔を見ると、今の言葉には何か裏があるのかも、とつい勘ぐってしまう。


「ちょ、雨宮さん、何言ってんの!?」


 遥はなぜか恥ずかしそうに顔を赤くしている。目が合った瞬間、彼女はすぐに顔をそらした。たぶん僕みたいな人と一緒にいると、他の人にこんな誤解をされるから恥ずかしいんだろうな。


「ただの冗談ですよ」


 ただの冗談だったけど、遥はそれでも不満そうに頬を膨らませ、恥ずかしそうに顔を真っ赤にして膝に埋めてしまった。

 いつも僕をからかってくる遥が、他の人にからかわれている姿を見るのは、これが初めてだ。正直、彼女が恥ずかしがる反応も結構可愛いな。



 家に帰って玄関をくぐった瞬間、そのまま眠りそうになった。

 最近、帰るたび全身の力が抜けて、疲れがどっと押し寄せる。仕方ないなぁ。夕飯食べて漫画読んで宿題やるつもりだったけど、今日はパスして早く寝よう。明日は休日だし、昼まで寝てこの数日分の疲れを回復しよう。


 玄関にちょっと見覚えのある靴が一足置いてある。今日は誰か来てるのか……


 リビングに入ると、背を向けたままテーブルにうつ伏せになって、姉さんと話している白野会長の姿が目に入った。


「やあ!あずやくん、おかえり」


 静かに通り過ぎて、素早く階段を上がって自分の部屋に戻ろうと思ったのに、結局白野会長に気づかれてしまった。


「今日、放課後に部活動に参加したの?」

「はい」

「最初、君の姉さんは君が友達できないんじゃないかって心配してたけど、まさか2人の高嶺の花みたいな女の子と友達になるなんて、やるなぁ」

「あの、雨宮さんは僕と友達になりたいって言ってなかったので、僕たちは友達ってわけじゃないと思います……」

「友達になるのに、なんで口で言わなきゃいけないの?」

「必要ないんですか?」


 経験が少ないから、白野会長が言ったことが一般的な認識なのかどうか、正直よく分からない。

 でも、もし相手がまだ同意していないのに勝手に友達だと思ってしまったら、相手に迷惑をかけてしまうかもしれないよね?


「私と君の姉さんも、口で確認したわけじゃなくて、気づいたらもう友達になってたんだよ。そうでしょ、あずりちゃん?」

「……」


 姉さんのことだけど、僕が帰ってきてから妙に静かなんだよな。こんな時、考えられるのは1つだけ――つまり、僕に怒ってるってことだ。

 最近の出来事を振り返って、思いついた可能性は1つだけだ。ここ最近、僕が他の女の子と一緒にいることが多かったから、それが姉さんに嫉妬心を抱かせたんじゃないかってことだ。

 もし本当にそうなら、早く姉さんを慰める方法を考えないと……ちょっとめんどくさいなぁ。


「ほらほら、大好きな弟が帰ってきたんだから、いつまでもそんな怖い顔して無視しないでよ」


 白野会長は立ち上がるとキッチンへ向かい、姉さんが油断している隙に背後から抱きついた。そしてそのまま、頬をムニムニと揉みながら無理やり笑顔を作らせようとしている。

 女の子同士のてぇてぇ光景を目の当たりにして、今この家にいる唯一の男である僕はなんだか蚊帳の外にされてる気分になってしまった。


「ちょっと!今野菜を切ってるんだから、こんなの危ないってば!」

「うーん……あずやくん、せっかく君の姉さんが焼きもち焼いて無視してるんだし、いっそのこと私の弟になっちゃうっていうのはどう?」

「絶対ダメ!あずやちゃんには永遠に私だけが姉なの!」

「だったらさ、もう機嫌直したら?じゃないと、あずやくんが君を避けてるって思い込んで、もしかしたら本当に君との距離がどんどん離れていって、最後には姉さんだって思わなくなるかもしれないよ?」


 さすがに言い過ぎだ。姉さんが拗ねてたとしても、そんなことで関係が疎遠になるなんてありえないから。

 とはいえ、その明らかにありえない発言に、見事にバカな姉さんが引っかかってしまったのだった。


「あずやちゃん……まさか本当にそうなっちゃったりしないよね……?」


 姉さんは何も悪いことをしていないのに、その顔はまるで大切なものを失うのを怖がる子供のように見えた。


「そんなこと、絶対ありえないよ。まったく、バカ姉さんだな」


 そばでこっそり笑っている白野会長に気づいた姉さんは、冷静さを取り戻すと、恥ずかしさを誤魔化すようにわざと咳払いをした。


「じゃあ、最近放課後いつも楽しそうに他の女の子と一緒にいるのに、生徒会室で忙しく仕事してる私のことを一度も気にかけてくれなかったこと、今回は許してあげるわ」

「はいはい、ありがとうございます、お姉様のご寛大な心に」


 今日は白野会長がうちに残ってご飯を食べて、その後姉さんと何か話をするらしいから、できるだけ邪魔しないように、姉さんには後で自分が降りてきて一人で夕食を食べると言っておいた。

 それから僕は自分の部屋に戻った。

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