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12. バレたか?

 次の日。


「昨日の夜ちゃんと寝てないの?なんだか元気なさそうだけど」


 学校に途中から彼女は何かを聞きたそうな様子だったが、姉さんの邪魔が入ってしまった。結局、教室に着いて席に座ってから僕に尋ねてきた。


「ちょっと寝不足なだけ……」


 昨夜、布団に入って寝ようとした時に、遥と友達になった場面が何度も頭に浮かんできた。あまりにも久しぶりに友達ができたからか、気持ちが少し高ぶってしまって、結局眠れなくなったんだ。

 もしこんな理由で元気がないって知られたら、からかわれるかも。だから、絶対に口にはしない。


「もし授業中にどうしても眠くなっちゃったら、私がカバーしてあげるから、遠慮せずに寝ちゃいなよ」

「そんなことしない」


 授業中に寝たことなんて一度もない。今みたいに疲れていても、体調がちょっと悪くても、静かに席に座って、授業が終わるまで終わるまで耐えてる。

 確かに、もし寝ちゃったとしても、先生が気づくことはないだろうけど、それでも寝ないんだ。寝たら、なんだか心の中で罪悪感が湧いてきそうだから。

 でも、今はまだ授業が始まってないし、この時間をちょっと休むことにしよう。


 机に突っ伏して少しだけ眠ろうとした矢先、引き戸の音が聞こえた。

 それに続いて、雨宮さんを気遣う声も教室に響き始めた。

 一昨日、幽霊に数時間も取り憑かれてたのに、たった1日くらいの休んで完全に回復するなんて……前に、雨宮さんと同じくらいの時間取り憑かれてた人を見たことがあるけど、あの人は元気を取り戻すのに2日くらいかかってたっけ。もしかして、体質で回復の早さが違うのか?

 まぁ、でも回復してくれてよかった。もしそうじゃなかったら、放課後まで待ってから助けたせいで取り返しのつかない結果になってしまったんじゃないかって、きっと自分を責めて罪悪感に押し潰されてたはず。

 あの事件が終われば、もう彼女と関わることもないだろう――そんな甘い考えは、徐々に近づいてくる足音によってかき消されていった。


「吉川さん」


 返事をしたら、何か厄介なことに巻き込まれそうな気がする。そう思った僕は、寝たふりをすることに決めた。


「一昨日のこと、本当にありがとうございました」


 なんでお礼なんか言うんだの?

 ……まさか、取り憑かれてた時のことを覚えてるのか!?

 でも、今まで見た例だと、取り憑かれてる間のことを覚えてる人なんていなかったはず……それとも、体質のせいで覚えてるとか?

 なんだか嫌な予感がする。

 自分の意志とは裏腹に、また新たな厄介事に巻き込まれそうな気がしてならない。


 周りから注がれる視線をうっすらと感じ、思わず息を呑んだ。



 昼休み。


 姉さんは白野会長に生徒会の用事で呼び出されたため、一緒にご飯を食べることはなさそうだ。そして、遥――あの期待に満ちた表情を見ただけで、今日もついてくるだろうなって簡単に分かる。

 窓の外に広がる雨雲をちらりと見やり、空き教室でご飯を食べることに決めた。

 そう決めて席を立とうとした瞬間、雨宮さんがこちらに歩いてきた。


「吉川さん、一緒にご飯食べませんか?」

「えっ?」


 僕、聞き間違えたか?

 どうして雨宮さんが僕と一緒にご飯を食べたいんだ?もしかして、僕が幽霊と話せるって秘密に気づいて、それを使って僕に何かさせようとしてるのか?


「ごめんなさい、雨宮さん。もうあずやくんと一緒にご飯を食べる約束をしているんです」


 まだ断る言葉を口にする前に、遥が代わりに断ってくれた。だが、僕は自分が彼女とそんな約束をした記憶がなかった。


「そうなんですね……じゃあ、吉川さん、少しだけお時間をいただけますか?話したいことがあるんです」

「えっと、何の話?」


 思わずゴクリと唾を飲み込む。

 自分の心配が的中してしまうのではないかという不安が頭をよぎる。普段全く接点のない人が急に昼食に誘ってくるなんて、絶対にただの思いつきじゃないだろう。


 彼女の顔が少し赤くなり、もじもじと照れくさいそうにしている様子を見て、どうにも嫌な予感が拭えなかった。


「あの、吉川さんってどの部活に入ってるんですか?」

「ん?僕、部活には入ってないよ」

「それなら、オカルト研究会に入っていただけませんか!?」

「オカルト研究会?」


 確か、姉さんが言っていた気がするけど、その部活は今年の1学期にできたばかりで、メンバー不足か活動内容の問題で、いつ廃部になってもおかしくないだとか。

 でも、理由が何であれ、僕は全く興味がない。


「すみません、僕はオカルトにはあまり興味がないので、お断りします」


 この部活、きっと霊的なことに関わっているはずだから、わざわざ面倒を引き寄せて、霊能力やこの目のことがバレるリスクを増やしたくない。

 それにもっと正確に言うと『興味がない』じゃなくて、むしろ『嫌い』なんだけど。でも、そう言ってしまうとオカルト好きな人たちを怒らせちゃうかもしれないから、あえて少し柔らかく言っておいた。


「ちょっと待って、そんなに急いで断らないでください。放課後に一度見学してから、もう一度慎重に考えてみてはいかがですか?」

「えーと……」


 雨宮さんが遥がよく見せるキラキラと輝く瞳を向けて、期待に満ちた顔をしているのを見て、僕はどうしても断ることができなかった。


「……はあ、分かった」


 僕、本当に人を断るのが苦手だなぁ……


「私も一緒に見学してもいいですか?」

「もちろん歓迎です!じゃあ、約束ね!」


 雨宮さんが背を向けて歩き去る姿を見ながら、僕思わずため息をついた。

 最近、いろんな理由で帰るのが遅くなっちゃうんだよな……これでまだ帰宅部だなんて名乗れるのか?

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