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お父さま、私結婚します

お城の天井は私の手からとても遠くて、でも限りのあるそんな物だとはわかる。豪華な絵でどこもかしこもがキラキラしているのそんな城内、私にはそれが豪華な鳥籠にも見えた。


私はクリシェ・バウス・ヒエラクス。

ヒエラクス王国の第3王女で唯一王家の呪いを受け継いだ王族の子、周りからは「呪い姫」または、「大鷲姫」と呼ばれている。

私には大きな鷲の翼を持っている。今すぐ飛んで行ってしまいそうな翼を背中に持っているお姫様が私だ。

自由な翼を持つ私は貴重な人で不自由な小鳥だった。

そんな私が 


「お父様、いや陛下。私、結婚します」


暖かな日差しを迎えた王城を響かせた。

そして、お父様を驚かせた。


私が生まれた日、お母様は赤ちゃんの私を見て失神したそうだ。なぜなら、私に小さな羽が背中に生えてるの見たからだ。

お父様はすぐに叔父を呼んで、相談したそうだ。

叔父の背中にも鷹の翼が生えており、世間からは「鳥大公」と呼ばれており、唯一お父様の兄弟で仲が良く、そして生き残っている兄弟だ。


私が生まれたのは、冬が過ぎてすぐ、春の訪れを感じさせるような鳥の声、暖かな風と共に生まれたという。雪解けで地面に氷が張っている中、おじ様は知らせを聞いてすぐに王宮へと向かったそうだ。

おじ様が到着して、私を見てすぐに


「この子は世界で一番自由で世界一愛されるべき子だ」


と私を抱きかかえながら、あまり感情の起伏がないのに小さく涙を浮かべながら言ったそうだ。


鷹の翼を持つ子が生まれる王族だから、国旗には鷹の顔の周りに円がある形に白と茶色がボーダー柄を基調としている。

300年続く王国で一つの一族が支配し続けていた。

それでも、何度かは国が地図が消えそうになる事があった。

その何度かはいつも翼を持つ王様の時だった。

一つは他の国からの侵略、一つは流行病によるもの、一つは災害などでの食糧不足からの革命運動だったそうだ。

だが、今もこの国はある、なぜならどの王も自由を愛し、王位に興味は一つもなかったから、長くて5年短くて1ヶ月半で王位を存命の内に継承した。王が変わってから何故だか王国はいい方向に向かっていき、それから翼を持つ子への王位継承権は最下位になる様な法律ができた。この出来事から鷹の子は呪われてるとも言われ民衆は鷹の子が王になる事を嫌悪した。

だから、この国での私の立ち位置は王位への最長距離に位置する王族だった。

だけど、私はそれでよかった。

やはり、私は鷹の子。自由に生きる事を望んでいるからだ。

だけど、私は初めて女の鷹の子らしく、王族は7歳の時には既に婚約者がいるらしいが私には候補はいたが全員辞退した。

主な理由はこの翼にあるらしく、年齢を重ねる度に大きくなる翼と普通に人間には無いものが付いているかららしい。

そんな私を見たお父様は一番兄弟の中で可愛がり過保護になってしまった。逆にお母様は私の翼が大きく成虫する度に会いに来る回数は減ってしまった。


「お母様。見て私の翼また大きくなったの」

「そうねえ。立派な翼ね。どこかに飛んで行って、、、はっなんでもないわ」

「お母様?」

「本当になんでも無いわ」


それからお母様の私を見る目は私を見ているはずなのに私をちゃんと見ていなかった。

そうやって、私が10歳の頃普通の子よりも大人びていた。

母親が私を見て心に病に罹ってしまった事や他の兄弟よりも父が私を可愛がってる事や兄達が私の事を可愛がり仲がいい理由もなんとなく察してしまった。

それから、私は部屋から出る事を極力控えた。

私は家族を見るたびその仮面が怖かった。そんな中、叔父が来た時だけが幸せだった。


「リシェ、最近あんまり外に出ていないだって?」

「うん、なんだかみんな怖いの」

「そうだね。だけど、お家の中で本ばっか読んでて暇じゃない?」

「うん、少し暇」

「じゃあ、叔父さんのお家に行ってみない?」

「うん、行きたい。叔父さんのお家!」

「じゃあ行こうか」


それから、王都に近い叔父さんの領地へ行った。

叔父さんの領地は王都より北にあってとても暖かく過ごしやすい風が私の事を出迎えてくれた。


「叔父さん。暖かい風だね」

「そうだね。叔父さんね、この風がすごく好きなんだ。そして、それよりも好きなのがね。窓の外をを見てごらん」


そう叔父さんに言われて、窓の外を見てみるとまるで絵のような金色の麦畑が広がっていた。


「あっ領主様。今年も豊作ですよ」


外からそんな声が聞こえる。

すると、叔父さんが


「おーそうかい。ありがとう」


動く馬車のドアを開けて大声とまではいかないが通った声で彼らに笑みを浮かべながら言った。

すると、声をかけた人も周りの人も笑いあいながら


「領主様危ないですよー」


と言っていた。


「僕の、叔父さんの好きなものわね、この土地に住んでいる人達のこの笑顔だよ」


ニコニコしながら叔父さんが言う。それにつられて私も久しぶりに本当の笑顔であふれた。

叔父さんと会っている時は私の世界は幸せで満ちてしまった。

叔父さんのお家は大きな庭がついていてどこまでも続く青空に私は目を奪われた。

叔父さんはそんな空に少しの間翼を広げて飛んだ。

叔父さんは落っこちて尻もちをつくと


「いてて、もっと自由に空を飛べたらいいんだけどね」


どこまでもある空を見上げながら言う。

叔父さんは私の方に向き直して


「リシェ。君はその翼でどこまでも行けるさ。今息苦しくても必ずいつか深く呼吸する事ができるようになる。だから、今僕と呼吸をしよう。急に呼吸をしてもそれは苦しいだけだからね」

「叔父さん、どう言う事?」

「リシェ、いつかわかるようになる。その時一緒に飛びながらこの空の気持ち良さを語り合おうじゃないか」


だけど、叔父さんは急に死んでしまった。

王宮に向かう途中、馬車が谷底に落ちてしまった。

近道の谷を急速に走っていき、カーブをうまく曲がれきれずに馬車は馬もろとも落ちたそうだ。

真下にある川に落ちて、鉛のように重くなった翼で川の流れのままに溺れ死んだそうだ。

死体は下流に流れ着いており、私に次に会った時安らかな笑顔だった。

私は大粒の涙を流して、部屋に長い間引きこもった。

そんなある日一番近い兄様第3王子のマルス・ミュア・ヒエラクスが私の部屋の前に来て


「リシェ、叔父様が君へ向けた手紙があったそうだよ。ドアの前に置いておくから。また、君の笑顔を見せておくれ」


兄様はそう言って去っていった。

ドアの前に誰もいないの確認して、ドアの前の手紙を掴んで、また部屋に戻る。


「リシェへ

 今日夢で君が出てきて、私の手を取ってあの空を飛ぶ夢を見たんだ。君に無性に会いたくなって、君の所へ向かいながらこれを書いているんだ。

 いつか、この空の気持ちよさを語り合おうと言ったじゃないか。私は夢の中で見たあの空が君の瞳の色と同じだった。気持ちが良かった、夢だとしてもだよ。

 約束守れそうにないな。先にあの空を知ってしまった。

先にあの空を見た、気持ちよさを知ったよ

早く君にも」


そんな手紙だった。最後らへんはガタガタと汚くなりながらも私に空の気持ちよさを伝えようとしてくれていた。

私は部屋を飛び出して


「お兄様。どこ?お兄様!」

「リシェ!部屋から出て来れたのかい?大丈夫かい?」

「お兄様、お兄様、あの手紙どこにあったの?ギリギリまで書いてあったようにも見えたけど」

「あの手紙は叔父様が事故直前まで書いてあったみたいで、落ちる直前に手紙は外に出ていったのか木の上に捕まっていたみたいだよ」


私はその言葉を聞いて、また走り出す。


「リシェ、どこへ行くんだい?」


私はそんな事を言っているのを気づかないまま走り出す。

息が辛くても、足の骨の軋む音が聞こえてもそんなのは関係ないと言いながら私は走り続ける。

記憶を辿りながらあの日どう行ったかどこにそれはあるのか思い出しながら、叔父さんの事を思い出しながら走る。

そして、私は月明かりが木々の隙間からそこだよって言うように、叔父さんのお墓の前にたどり着く。

そして


「叔父さん。私ね叔父さんが見たあの空を感じたい。あの空を見たい。そして、私は私は叔父さんに見つけてもらえのように、先にあの空に行った叔父さんにも見つけてもらえるぐらい自由になるから、だからね、だから私の事を探していてね。私と叔父さんとのかくれんぼだよ」


月明かりが指す叔父さんが居た証にそう大きな声で話す。


それから5年が経って、私は成人を迎えた。

デビュタントをしていてもおかしくない年頃になっていた。

お父さまはあれから私のことについては過剰な反応しますようになった。娘の一番の気心だった兄が亡くなったと言う事実は、それだけでお父さまの心配の根元になり、私が数日ほど引きこもったこともあったからだろ。


「陛下。私はシエル・イガー・カッツェシャ様と結婚致します。お許しください」

「何を言っているんだ?リシェ。カッツェシャ帝国の帝王と結婚するというのか?」

「はい。そうです」

「あの国は戦争の絶えない国だ。そんな国にお前をいかせるわけにはいかない」


そうお父さまの声が宮殿に響き渡る。


「お待ちください。今は」

「俺の嫁がいるんだ。いいじゃないか」


バンと音を立てながら大きな扉を開ける。


「ようリシェ迎えに来たぞ。さあ、行こうじゃないか?」


シエル皇帝が1枚5キロもある扉を一枚ずつ片手で開けながら言い届く。


私が15回目の誕生日を迎えた時、国賓を呼ぶほど大きなパーティーを開く、私は顔を隠す布着けながらそのパーティーの主人公として出席した。

初めて私の翼を見たものも多く、私が現れた時に会場内は大きなどよめきが空気を振動させる。

ある者は嫌悪そうな顔を見せ、ある者はこの国の強さの象徴としての感嘆を挙げる者の二分されていた。

私はその歪んだ空間に居る事が絶えれなくなった。

すぐに外の庭に一人でいた。


「はぁ、やっぱり疲れるなぁ〜」


私はかわいいツキミソウを見ながら鼻唄を歌っていると


「強い鳥をも羽休みは必要だよな。囚われの大鷲さん」


私はびっくりして声のする方を見ると、そこには大きな男の人が立っていた。私はその食べられそうな雰囲気と屈強な圧力を感じる男の人に向かって


「私を食べても美味しくないですよ」

「食べる?俺が人を食べるように見えるのか?」

「あっいやそう言う意味では」

「いや、いいんだ。ただ、大鷲殿はおもしろくて興味が出ただけだ」

「興味ですか?」

「そうだ、興味がわいた。俺のそばにいて欲しくなった」

「それは、、、」

「俺と友にならないかい?」

「、、、友?友達ということですか?」

「ああ、そうだ。俺の友達になって欲しい」

「えーと、お断りしてもよろしいですか?」


私は恐る恐る言うと

男の人はニコニコしながら


「ダメだ。俺とお友達になってもらう」


深呼吸をして私は


「ごめんなさーい」


と言いながらパーティー会場に戻る。


豪勢な輝きを放つ会場といつもよりも豪華な食事の匂いの会場では、方々から笑い声や楽しそうな声が響いているがそれは誰かの自慢話だったり誰かの悪口だったりばかりだった。

私はそんな所にうんざりした。


「やっぱり、この感じ苦手だわ」

「苦手とは?」


後ろから声が聞こえた。

私が振り返ると先程の男の人が立っていた。


「なんで?」

「なんでとは?俺はこのパーティーに呼ばれているからな」

「そうだったんですか?」

「じゃなきゃ先程会うことはないだろ。そういえば、名乗るのを忘れていたなクリシェ姫様。私は」

「おーこちらにいたんですか。虎皇殿。リシェも一緒にいたのか」

「お父さま。この方を知っているのですか?」

「もちろんだ。この方はわが国と良い関係のカッツェシャ帝国。現皇帝シエル・イガー・カッツェシャ様だよ。それにしても二人はどうして一緒にいたのかな?」

「それは、、、」

「いや、先程お庭で休まれていたクリシェ姫を心配で追いかけてみて話しかけてみただけですよ。ですよねクリシェ姫」

「はい、そうです。この方がお話し相手になってくれただけですわ。お父さま」

「そうか。くれぐれもご迷惑をかけぬようにするんだよ」

「わかりましたわ」


お父さまはそう言うと他のお客様の元へ行ってしまった。


「先程は申し訳ございませんでした。カッツェシャ帝国の皇帝様だとはつゆ知らずご無礼をお許しくださいませ」

「いいよ。そんなの知らなかったんだからしょうがないさ。だけど、そうだな。許す代わりに俺とお友達になってくれないか?」

「わ、わかりました」

「なら、お友達から始めようか」


それから、私たちは一緒にいる事が多くなった。


「まだ、いらっしゃるんですか?」

「ああ」

「国務の方は大丈夫なのですか?」

「ああ、俺は戦闘担当なのでな国務は別のやつがやってる」


私が王宮内にある図書室で本読んでる時も、お庭でおやつを食べてる時も私の話し相手になってくれた。

私がお庭で読書をしているときに


「リシェは婚約者はいないのか?ここ数日一緒にいるけど」

「おりません。私の背中のこれを見て元婚約者たちはみんな辞退されました」

「そうか。こんなに立派で美しい翼を持っている女を逃すバカがこの国では多いんだな」

「ちょっと、さわら、あっさわらないでください」

「すまん。大丈夫か?」

「翼はどの部分よりも敏感で」

「そうだったのか、すまない。許してはくれないかい?」

「では、代わりに、、、」


王宮内がざわつきが収まらないなかで、シエル様が謁見室に来て私をお姫様抱っこをするものだから


「シエル殿。我が娘をどこに連れて行くって言うんだ」

「おう、お父さま。我が国へとそして俺の嫁に来てもらうつもりだ」

「お父さまと呼ばなー。っと失礼。シエル殿、我が娘を嫁に迎えるとは本当ですか?」

「誠だ。我が国の皇后になってもらう」

「それはいけません」

「なぜだ?失礼ながら言わせてもらうとリシェには婚約者がいるって訳でもないじゃないか」

「そうです。リシェには婚約者はおりません。ですが、其方の国カッツェシャ帝国は争いの尽きない国。今も隣国ルプス王国との戦争しているではないではありませんか」

「まぁそうだな。先先王からどこかしらと戦争をしているが、それがどうしたんだ?」

「だからですよ。そんな所に大事な娘を行かせる事はできません。ご理解してください。娘を思う父の心を」

「そうやって、またお父さまは、陛下は世界で一番自由な翼をへし折るつもりですか?」

「何をおっしゃっているのか分かりませぬ」

「わからないのも父の心という事ですよ。リシェは俺の国に連れて行く」


それだけ言うと、私を持ったまま走り出す。

あー前日に出てく準備しててよかった。


「あのシエル様、私の部屋に寄ってもらえませんか?」

「どうしてだ?」

「私の荷物を取りたいのです」

「わかった。ていうかもう準備していたのか?」

「はい、そうです。楽しみだったので。えへへ」

「やっぱり、、、」

「やっぱり?」

「なんでもない。急ぐぞ」


私を部屋に連れて行くと


「少し待っててもらってもいいですか?」

「ああ、出来るだけ早くな」

「あっはい。わかりました」


ベッドの上にある少し服がはみ出したカバンを持って外に出ようとした。

それと、開いている一冊の日記を腕に抱えて持って出る。


「お待たせしました」

「おう、それだけでいいのか?」

「あっはい。これだけで大丈夫です。」

「なら、行くか」

「えっ、またですか?」

「この方が早いだろ」


私をお姫様抱っこをして走り出す。 

王宮内では、騎士との追いかけっこで所々崩れた部分があって、最後にお父さまを見た時には涙目で私の名前を叫ぶ後ろに泣いている財務大臣がいた。


王都で馬に乗って西側に向かうと、一番近いコドラ村で待ち合わせていた馬車に乗り換えてカッツェシャ帝国に向かう。

少し遠回りになってしまうようだった。 


「キツくなったら、ちゃんと言うんだぞ」

「わかってますよ」

「そう言って何も言わなかったら」


人差し指をシエル様の唇に当てて


「大丈夫です。ちゃんとわかってますよ」


馬車に揺られながらまったりとした時間を二人きりで過ごす。


「カッツェシャ帝国はどんな国なのですか?」

「カッツェシャは魔獣生息域に最も近く、現在北にあるワームル魔王国との戦争の最中の危険な国だよ」


私はそれを聞いて自分の唾を飲む音が聞こえた。


「まぁ北方に住んでいるのは騎士と傭兵ぐらいで、戦えない市民はそれ以外の場所でのどかに過ごしているだろう。だけど、すまない。王都は北寄りにあってね。少し危険かもしれないが厳重体制で守られてはいるから安心して」

「大丈夫ですよ、私は。私が危険に遭いそうになったらシエル様が助けてくれるのでしょう?」

「ああ、それはもちろんだ。任せろ」


コドラからヒエラクス王国の一番北にあるダグシュウアという街へと向かっている途中だった。


「そういえば、ダグシュウアの近くには、、、」

「どうしたんだ?リシェ」

「いえ、なんでもありません」

「そうか。だけど、気になるから聞かせろ」

「はっはい。ダグシュウアは私の叔父、現国王のお兄様の領地だったフラッテハイトが近くにあるのです」

「そこに寄りたいのか?」

「いえ、ただ思い出しただけです。叔父さんと過ごしていた日々をあの時の青い空を思い出しただけです」

「そうか」


コドラから出て1日目は野宿をする事になり、私は馬車で眠る事になった。


「リシェ。おやすみ」

「おやすみなさい。シエル様」


馬車の扉が閉まる。

外は満天の星空と静寂を飼い慣らしていた。


「眠れないわ」


昨日までとは違う環境で慣れない所では眠る事はできないのもあるが、冒険をしている気分と親の目を離れたというドキドキが私を眠らせる事ができなかった。

落ち着かせる為に一旦外に出てみようと思った。


「どこに行くんだ?」


扉の近くにはシエル様が居た。


「シエル様?えーっと眠れなくて」

「散歩に行くのか?」

「そうなりますね」

「じゃあ、一緒に行こう」


私たちは二人、森の中を歩き始めた。

二つだけの足音が森に響き、まるでこの真っ暗な世界に二人しかいなく、だけどその暗闇の奥は途方もないほど開いているよに感じ始めた。

たまに、風が木々を揺らして音を奏でる。

目も暗闇に慣れていき、周りが少し見え始める。

先へ先へと私達は進んでいく、すると大きな湖が目の前に広がっていたのです。


「シエル様、見てください」

「あー見えてるよ」


私たちの目の前に広がる湖の真ん中に少し明るく青色のモヤがかかっていた。


「あれはなんでしょう?」


私は近づこうとして歩こうとした。


「リシェ。ダメだ」


シエルの声で私はその方向を向かうした。


「キャー」


私は湖に落ちてしまった。

急いで湖を出ようとしたが、背中の翼が水を吸って思うように動けなかった。

私は自分の口から出る水泡を見て「ここで死んでしまうのでしょうか」と考えてしまった。

バシャーンと鈍い音で聞こえてくる。

私の手を引っ張って、湖から出る。


「あり、ありがとう、ございます」

「大丈夫か?」


思ったように声が出ない。


「ゆっくり呼吸をするんだ」


そう言いながら私の背中をさすってくれた。

ゆっくりと息が出来るようになって、湖の方に顔をやると光のモヤの奥に1人の女性が立っていた。


「シエル様、あれ見えますか?」

「ああ、何か光っているように見える」

「奥に女性が立っているのですが、、、」

「女性?見えないな」


その女性が私たちの後ろを指を指すと、真っ暗だった森の中が騒がしくなっていった。


「なんなんだ?あれは」


シエル様が不思議そうな顔をしてそう言う。

私はなぜだか懐かしさを感じていた。

私たちは森の騒がしくなった所に向かって歩きだす。

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