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Mr.Faceless  作者: 音喜多子平
【11】Worthy Cause
49/57

11‐6

 このまま道連れに落としてやろうか、と土壇場に思い付いた。けれども骨の男はとてつない力で踏ん張り自分を支えた。結果として裕也の算段はふいにされたが、落下は回避することができたのだ。


 繋がったままに裕也は上を見た。骨の男は堪えているとはいえ、割れた窓ガラスの縁のギリギリまで引きずり出されている。すると裕也に次の妙案が浮かんだ。今度は左腕を突き上げる形で伸ばした。けれども今度の狙いは奴じゃない。


 裕也の左腕は骨の男を通り越し、そのほんの少し先にあったパーティ会場のフロアの天井へとネバネバとした水音と共に張り付く。そして今度は粘菌を急速に体内へ浸透させた。伸ばしに伸ばしきったゴムが縮むかの如く引っ張られ、裕也の体は物凄い勢いで上へと登って行く。タイミングよく粘菌の粘着をほどくと、骨の男へ向かって、


「Good,Buy」


 と、厭味ったらしく言い放った。


 パチンコの要領で発射された裕也は鵺がいるであろう屋上へと進んでいく。


 骨の男は相変わらずの怒声で、


「待ちやがれぇぇぇっっ!」


 と叫んだ。


 ◆


 ―――引っかかったな。


 アシクレイファ粘菌の下で裕也は自らの作戦がうまく行ったに笑みをこぼした。


 操たちといち早く合流したいのは勿論だが、いくらなんでも脅威となる人物を引き連れて行くことなどあり得ない。裕也が上を目指している心理を逆手にとって、骨の男の冷静さを奪うための策だったのだ。


 裕也が屋上へ飛んでいったと信じ切っていた骨の男は「え?」などとマヌケな声を出した。


 そこには自らの予測とはまるで異なり、側壁に粘菌を付着させて急ブレーキをかけているMr.Facelessの姿があった。焦りから不安定な身の乗り出した方をしてる上、完全に隙を突かれた骨の男は裕也の攻撃に反応する事すらできなかった。

 

 重力を利用して裕也は襲いかかる。そうして繰り出したギロチンと見紛うかかと落としはお手本のように華麗に決まった。


 肩口から背中にかけて上からの衝撃をもろに受けた骨の男は、苦痛とも怒りとも取れる表情を浮かべながら絶叫を置き土産に落ちていった。


 男は骨の腕を必死に伸ばして壁を掴もうとする。しかし勢いがあるせいで窓やガラスなどの突起にもうまく捕まることができないでいた。ガリガリと何かが削れるような音が響く。男の落下のスピードが緩まる様子はない。あれなら死ぬまでとはいかなくとも、落下の衝撃で戦闘不能に持ち込めるか、少なくともまた上まで登ってくるまでの時間稼ぎにはなるだろう。


 裕也は外壁をつたって屋上へと急いだ。


「え?」


 そして屋上に着いた裕也は信じられない光景を目の当たりにすることになるのだった。

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