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来たときと同じようにビルからビルへと飛び移りながら帰路についていた。毛羽毛現との戦いはそれほどのことではなかったが、一門の連中に迫られたことが思いの外、心に来ていた。
「見た目が見た目だものな」
裕也は自問自答する。
妖気がないお陰で妖怪でないことの証明はできるようだが、それでも不信感を完全に取り除くことはできないだろう。裕也がどれほど協力すると言っても、神邊家は受け入れはしない。
かと言って正体を明かしたとして、うまく事が運ぶビジョンが見えない。裕也も家での自分の立場が最下層であることは重々承知している。操だけに打ち明けるという考えもあるが、彼女の性格から言って今すぐに止めるように促される未来しか想像できない。
そこで裕也は思い至る。
(だったら先に実績を作ればいいんじゃないか?)
神邊家と共同戦線を張らなくても自力で妖怪を退治することはできる。妖怪を的確に対処して、町を守っていれば味方であるとアピールもできる。
荒唐無稽なアイデアばかりが頭の中を駆けていることに、裕也は気づいていない。それほどまでに手にいれた力と毛羽毛現を退治した余韻に支配されていた。粘菌に包まれた口元は広角が上がり、無意識に微笑んでいる。




