6‐2
家を出た裕也はまず愛車を停めている駐車場へ向かった。
あれだけリアルな映像を垣間見て、頭の中にある記憶が全て真実だと訴えかけていても、どこか信じ切れていない自分がいたのである。蘇生を施された後にあの宇宙人によって自宅まで送り届けられたという事は、車は未だにあの山中にスクラップとして転がっているはず。もしも駐車場に何事もなく愛車が置いてあれば、少しストレスが溜まってやけに現実味のある夢を見たのだと自分に言い聞かせることができる。むしろ、今となってはそう考えるのが最も自然のような気がしていた。
そう考えが浮かぶとどうにも気が急いてしまい、あと一つ角まがれば駐車スペースが見えるところまでくると、裕也は思わず走り始めた。
裕也は角を曲がる。そうして目に入ってきた光景に面食らってしまった。
いつものスペースに確かに裕也の車は停まっている。だが、どう見てももう動くことはない。裕也の車のタイヤは全てが破裂し、ガラスは粉々だった。そればかりかまるで炎上したかのように車体の半分以上が焼け焦げていた。
「・・・」
ご丁寧に廃車確定の車まで送り届けてくれたことに感謝すべきかどうか、裕也は分からなくなってしまった。少なくともどこにどう連絡して処分すればいいのかと困っていた。
騒ぎになる前に、と頭に過ぎったが思えば今日一日置きっぱなしになっていたのだがら、それは今更であろう。
車を見てそれまでの感情が変な諦めになると、裕也は馬鹿に冷静になって行く自分に気が付いた。
裕也はその足で更に歩いて郊外にあるファストフード店に入った。家の者に見つかると少々面倒だが店舗は家から大分離れたところにあるし、念のために二階に席を取ったので見られたのならその者も大概だ。
空腹ではなかったが無性に甘いものが欲しくなった裕也はLサイズのコーラとアイスクリームを頼んだ。二階の端にあるカウンター席でそれをチビチビと口にしていると、糖分が血管を通って全身に流れていくような、そんな感覚をも味わっていた。
そうして身も心も一段落ついた頃、裕也はじっと目を閉じて頭の中の情報と湧き出る興味に向き合ってみることにした。




