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Mr.Faceless  作者: 音喜多子平
【5】A Man meets Alien
13/57

5‐3

 まず裕也が山中で見た緑色の光の正体は彼らが放った一種のドローンだという。彼らは遠隔からアレを操り、情報収集を行っていた。そして『彼ら』というのは、はるか遠い惑星に文明持つ異星の種族だと明かしてきた。


 裕也からしてみればとどのつまりが地球外生命体、エイリアン、宇宙人などと名状される存在だというのだ。


 そして彼らが言うには、宇宙空間から偵察用に飛ばしたドローンが突如赤く光る非生命体に襲われた。生命反応がないのにも拘らず、意思を持っているかのように動くそれに彼らは混乱したのだそうだ。裕也は直感的に赤い光を放っていたのは妖怪だろうと思った。


 いずれにしてもUFOが妖怪に襲われるという、恐らく史上初の事故現場に遭遇してしまったという事だ。


 地球で起こるレベルの物理現象であれば大抵のものは跳ね除ける程の強度を誇っていたドローンだそうだが、どういう訳が妖怪相手には通用しなかったそうだ。その上、不可解な相手に後れを取り、ドローンは一部を損傷して挙句にコントロール障害を起こしてしまった。裕也の乗っている車両の事も彼らは認識していたのだが、やはり遠隔操作が上手く行えずあの事故を引き起こしてしまった、というのが真相だった。


 ここで重大な問題が発生する。


 運悪く衝突された裕也の車両は崖下に落ち、ガソリンに引火した事で爆発を起こしてしまった。そのせいで裕也は皮膚組織の80%以上に重篤な熱傷をきたし、そもそも臓器を含めた体組織の半分以上を車の爆発によって損傷、破壊されていた。即死でなかったのが不思議なほどの大事故だったのだ。


 彼らにとっての問題とはこの事である。


 異星の生命体に接触するのは、彼らの星の方では大罪に該当するという。その上、生命を奪する結果を招いた事は彼らを慌てさせた。収集した映像は改ざんできないようにされているため、もみ消すこともできないと判断した彼らは、自らの保身と軽罪の為に急遽裕也に蘇生処置を施すことを決めたのだ。


 治療は限りなく地球レベルでの医療技術に止めておこうとしたのだが、それでは身体の修復すらままならない程、裕也の身体は激しく損傷していた。そこで彼らは苦肉の策として、母星においてでも最新鋭と謳われる医療措置を行ったのだ。


 破損した裕也の肉体を補うために、医療及び軍事用に開発されたナノマシンを組み込んだ『アシクレイファ粘菌』と呼ばれる粘菌を投与し、失った体組織の代用とした。粘菌はすぐさま裕也のDNAと同化適合し、失った臓器、筋肉、神経、血管、骨組織などを瞬く間に形成・再生していった。その結果、見事に裕也の蘇生に成功したのである。


 その際に脳にこのプログラムを理解できる装置をついでに組み込んだ。そして車両からその日一日の行動経路を分析し、裕也は朝に出た屋敷の裏口で解放され、今に至るとのことだった。


 ◇


 緑色の光玉から発せられる謎の声は構わずに続ける。


『その他、アシクレイファ粘菌に関する基礎的なデータは覚醒と同時に脳にインプットされるよう設定が成されております』

「待ってくれ。急にそんなことを言われても」

『この映像は質疑に応答できるようプログラムしておりません』

「そんな・・・」

『最後にこちらの都合だけを押し付ける形になったことをお詫びいたします』


 そこで本当に音声は途絶えてしまった。


 裕也は夢の終わり共に跳ね上がるように起きた。全身がサウナに入っているかのように熱く、そして意味もなく滾っている。それなのに汗一つかいてはいない。代わりに限界まで走り続けたが如くの倦怠感が襲ってきて、肺一杯に息を吸いこんでも足りないくらいに息苦しかった。


 それと同時に謎の声が言った通り、頭の中にアシクレイファ粘菌とやらの情報がまるで昔から知っていたかのように存在している事に気が付いた。

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