変な世界で犬になる話
目を覚ますと、未来都市にいた。
どうしよう、人がいない。とりあえず人がいる場所へ行ったほうが良いか。
目の前に、発光する文字でサンシャインシティと書いてある。恐らく駅だ。駅に入ろうとしたら、シャッターが閉まっていた。
街を歩いて見ることにした。
喉が乾いていたので、自販機から未来コーヒーを買った。何だその安直な名前は。
少し歩くと、公園があった。ベンチで未来コーヒーを飲んだ。
キュィィィィィン!
背後から耳をつんざくようなモーター音がした!
死を感じた。
「ワタシハオソウジロボ、ゴミヲカイシュウシマス」
「お、驚かすなよ」親切なやつだった。お掃除ロボさん、ありがとう。持っていたゴミを捨てた。
「チキュウニヤサシクアリマセン!!ペッペッ!」お掃除ロボは、ゴミをぶちまけて去っていった。
それにしても、あのロボが持っていたゴミ箱からは、いい臭いがする。肉の臭いだ。
きっと今は世紀末、ホームレスばかりだ。寝ているのが猫だったら和やかなのに、なぜおっさんが路上寝すると悲惨なのだろう?
なんだか、ホームレスの顔を舐めて、綺麗にしたくなる。
「やぁ、兄ちゃん」人だ。しかし、黒ずくめのスーツで怪しい雰囲気だ。
「犬にならないか?兄ちゃんは犬の素質がある」
「…」
「100万円ダヨ!」
「ノリのいい八百屋さんか!」
「冗談だ。無料だからね。では、せーので行かせて頂きます」「せーの、」
僕は犬になった。
新天地で緊張して、元々疲れていたので、寝ることにした。犬なので野宿もへっちゃらだ。
朝早く起きた。まばらだが、人が出始めた。
「あれ、野良犬?」
その女性は、もの珍しそうな目つきで僕を見つめた。
その目をやめろ!僕は犬らしく吠えていた。警戒心がみなぎる。
可哀想に。これ上げるから、家に来なさい。女性は、サンドイッチをくれた。
フガフガフガフガ、止まらねー!
犬になると、早食いになる。貪る姿が恥ずかしすぎて、咳き込んだ。
昼、女性と散歩に行った。「散歩ってどのくらいすれば良いのかしら?友達にも犬を飼ってる人なんていないからなー」
そうか、未来の世界には犬を飼う習慣がないらしい。
あっちから何か歩いてくる。犬は視力が弱いのでよく見えない。とても不便だ。
しかし、ある程度近づけば臭いがわかる。その物体からは、鉄の匂いがした。
「こんにちは。珍しいね、本物の犬じゃないか」
ペットもロボなのか。
犬は敏感だ。生き物から発せられる熱や、鼓動を感じることができる。その犬、と呼ばれるロボからはそれを感じず、不気味でしょうがない。僕は逃げた。
犬は野生動物だ。力があるので、引っ張られた女性は転んだ。「凄い力…これが野生なのね。感動したわ。」
女性は、涙を流した。
膝からは、血が出ていた。
夕飯、女性は何を餌をするか迷った挙げ句、人の飯をそのままくれた。味が濃くて美味しかったが、喉が乾いた。
夜、犬と言えども、女性の家にいるとムンムンした。しかし、じきに寝た。
朝、起きると人に戻っていた。我に帰った。この世界から脱出するため、急いで外に出た。
魔法は溶けると言っといてくれ。危うく捕まるところだった。