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ジッター  作者: 文月 雪花
第2章
9/15

ナイチンゲイル(後半)

 バーの中は、タバコの煙とマリファナの臭いで充満していて、鼻に突き刺さる。向かいに座っているレイナは、その臭いのせいか、顔をしかめている。流れているBGMは、クラプトンのコカインという曲で、マスターの趣味の悪さを物語っている。

 店内は薄暗い照明で照らされており、辺りは、ビートニクや連邦政府の駐屯軍の軍服を着た者たちで埋まっており、特にビートニクたちは、私へ鋭い視線を向け、一瞥すると、そっぽを向き、ロックグラスをグイっと傾けた。

 私は、ミリタリーパンツのポケットからキオスクで買ったラッキーストライクを取り出し、パッケージから一本取り出すと、ライターで火を付ける。深く吸い込んだ煙が肺の中に広がり、中枢神経を伝って快楽を伝える。久しぶりのタバコほど気分のいいものはない。

「私、タバコの煙嫌いなの」

 レイナは、しかめていた顔をさらに歪ませる。

 私は、気にせずに深く吸い込んだ煙を吐き出した。

 彼女は、溜息をつくと小さく肩を落とし、両手で持っているホットミルクの入ったマグカップを唇につけ、傾けた。

「ママ、いなかった……」

 マグカップをテーブルに置き、小さく呟いた彼女は、俯き、口をへの字にとがらせていて、彼女の両目には、大粒の涙が溜まっている。その涙は今にも流れ落ちそうだった。

 私は、それをしり目にロックグラスを傾け、ワイルドターキーを一口喉に流し込む。いつにもまして最悪な味だった。

 私が、タバコを口に咥えながらロックグラスを弄び、グラスの中の丸く削られた氷が、薄暗い照明に照らされて琥珀色に溶けていくの眺めていると、レイナの目の前に、頼んだ覚えのないパンケーキが置かれた。

「あっちのお客からだよ」

 マスターは、そういうと、カウンターの奥の席を指した。

 マスターが指した席には、立ち上がれば3メートルはあるかと思われるほどの大男が座っていて、ビールの入ったピッチャーほどの大きさの特大ジョッキを口にし、ぐびぐびと喉仏を上下させている。

 男は、ビールを飲み干すと、着ている連邦政府軍の軍服の袖で口を拭い、席から立ち上がると、酔っぱらってふらふらしているビートニクを押しのけてこちらへとのそりのそりと向かってくる。

 男は、空いている席から椅子を引いてくると、私達の席へと腰をかけた。

「ママを探しているんだって?お前のママなら俺は知ってるぜ」

 男は、バスサックスのようなビリっとした声を響かせ、白い歯を広げてにんまりと笑っている。浅黒い顔のせいで、白い歯がとても目立つ。

 私とレイナは、話がうまく呑み込めず、男をまじまじと見つめた。

「わりぃ、俺はマイルス・バートンっていうんだ」

 バートンは決まりが悪そうに太い指で大きな縫い傷があるスキンヘッドの後ろを掻いた。

「レイナの母親を知ってるって?」

 私は残っているワイルドターキーを一口、口に含んだ。

「ああ、その子の母親、ルカ・チェンバース准将は、俺の所属している医務部隊、ナイチンゲイルの隊長だ」

「本当!?ママに会えるのね!?」

 レイナは、パンケーキを口に頬張りながら目を輝かせている。

「ああ、お前たちを連れてくるように言われているんだ」

 バートンの目が一瞬泳いだ気がしたのに私は引っ掛かりを覚えた。

「マスター、この大男にもう一杯だしてくれ」

 私は、詳しく話を聞くため、バートンにビールを奢った。

制作秘話①:クラプトンのコカイン


ご愛読ありがとうございます!

以降、制作の裏話をたまにあとがきに書いていこうと思います!

今回の裏話は、バーで流れていた曲についてです!

エリック・クラプトンのコカインという曲で、曲名の通り、コカインについて歌われている曲です!

コカインは嘘をつかない

という歌詞や、

悪い知らせを聞いて、その憂鬱を吹っ飛ばしたいなら、コカインさ

という歌詞が、今回のナギとレイナの心境に見事にマッチしていたので、この曲にしました!

ちなみに、ナギはこの曲を趣味が悪いと言っていましたが、著者の私自身、この曲は大好きな曲です!

Youtubeにもあがっている曲ですので、もしよろしければ聞いてみてはいかがでしょうか?

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