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ジッター  作者: 文月 雪花
第1章
4/15

機甲歩兵旅団(前半)

連邦政府軍によるガトー島の攻略は、機甲歩兵特科旅団によって行われた。

 艦砲射撃や空爆を試みるも、ガトー島はジャングルに覆われていて、観測所を設けなければ、有効な打撃を与えるには至らない。

 その為、俺の所属している機甲歩兵特科旅団は、ガトー島の203高地を奪取すべく、ジャングルをかき分け進んでいった。

 機甲歩兵は、戦車よりも機動力があり、歩兵よりも打撃力があり、手榴弾や迫撃砲程度であれば耐えうる装甲を持っており、光学迷彩、射撃管制システムを搭載し、30ミリの大口径ガトリング砲を装備した全長5メートルの二足歩行の人型兵器で、二本の脚と外側に大きい腕が二本、胸部に小さい腕が二本取り付けられており、大きい腕と連動する仕組みになっている。操縦者は、胸部に乗り込み、その小さいほうの腕に自身の腕を通し、動かすことによって大きい腕を操り、大きい腕によってガトリング砲などを扱うというシンプルな操縦方法ゆえに、元々歩兵であった兵士にとって、とても扱いやすい兵器であり、ジャングルに展開している敵の陣地を切り拓くにはもってこいの兵器であった。


 俺は、HUDの緑色の画面を覗きながら機甲歩兵を夜のジャングルの奥へと進める。

 夜のジャングルは、聞きなれない虫の声で溢れている。空を見上げるとHUD越しでも満天の星が浮かんでいるのがわかる。まるでピクニック気分だ。

 ガトー島に展開している敵は、歩兵二個分隊のみという情報だ。対するこちらは、一個旅団。ガトー島が陥落するのも時間の問題だ。

「ウェンスキー少尉、この蒸し暑さ、どうにかならないのですかね?」

 後ろから続いてくる機甲歩兵に乗っているカルロス軍曹はぼやく。

「機甲歩兵は小型ゆえに冷暖房の設備を搭載する余裕はないんだ。もう少しの辛抱だ」

 俺がそう言ってカルロス軍曹を慰めた時だった。

 後ろから、鉄に何かが当たり、めり込むような鈍い金属音がした。

 後ろを振り向くと、カルロス軍曹の機甲歩兵が地面に膝をついている。左脚部が損傷したようだ。

「敵と接触!警戒態勢をとれ!」

 俺の号令と共に、他の機甲歩兵はガトリング砲を構え、辺りを警戒する。

「カルロス軍曹、大丈夫か?」

「ええ、大丈夫です。左脚をやられました。敵は対戦車ライフルで関節部を……」

 カルロス軍曹がそういい終わらないうちに、鈍い金属音が響き、カルロス軍曹の機甲歩兵の胸部に大きな穴が開く。

「軍曹!!応答しろ!!軍曹!!」

「畜生!!ヤツはどこにいるんだ!?」

 実戦経験の少ないジョセフ一等兵は、パニックになり、叫びながら辺りに30ミリガトリングをばら撒いている。

「やめろ!ジョセフ一等兵!!敵の的だ!!」

 そう言い終わらないうちに、再び鈍い金属音が響く。ジョセフ一等兵の機甲歩兵の胸部に穴が開き、ジョセフ一等兵の機甲歩兵は倒れた。

 間髪入れずに、ジャングルの木々の間から、何かが天に向かって打ちあがった。それは、天高く打ちあがると、緑色に光を放った。

 それが敵の信号弾であると気づいた時にはもう遅かった。

 何かの飛翔音が聞こえた途端、空中で何かが炸裂し、無数の小さな鉄球が隊の頭上に降り注いだ。

 機甲歩兵は穴だらけになり、立っている機甲歩兵はいなかった。俺の機甲歩兵も鉄球によって手足が損傷し、行動不能に陥った。

 やがて、エネルギーが切れ、モニターには何も映らなくなった。

 しばらくすると、ハッチの向こうから倒れた俺の機甲歩兵に何者かが上ってくる足音が聞こえる。

 救援か、それとも敵なのか。俺は、自分の腕を機甲歩兵の腕から抜くと、ホルスターから拳銃を取り出し、スライドを引いた。

 やがて足音が止まる。そして、ハッチをこじ開けるためだろう、銃声が聞こえた。連射音だ。そいつは自動小銃を持っているようだ。

 銃撃によってロックが解除されたハッチがゆっくりと開いていく。

 その先には、自動小銃を構えた男が立っていた。その男は、皇国軍の軍服を着ている。

「今から貴君を捕虜として拘束する。大人しく投降しろ」

 拳銃一丁では勝ち目はない。俺は、拳銃を捨て、両手を挙げた。

「投降するのはお前の方だ。スナイパーの方はもう片付けたよ」

 何者かの声が聞こえると思った途端、眩しい光が皇国軍の男に降り注ぎ、辺りはまるで昼間のように明るくなり、ジャングルの木々の間から、機甲歩兵が出てくる。その数は十数体といったところだろうか。

 機甲歩兵の陰から出てきた人影には見覚えがある。赤いベレー帽を被った旅団長は、いつものように美しい笑顔を浮かべていた。

「さぁ、投降するんだ。ジャン・ロック准尉」

 彼女は、笑みを浮かべながら、拡声器を使い、投降を促す。

 男は、自動小銃を捨てると、両手を挙げた。

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