署名人がやって来た
つたない文章ですがよろしく
リビングでうつらうつらしていると
視界の端に酔い醒ましの薬湯を準備している母の姿がみえた
わたしも食べ過ぎたので胃薬でも貰おうか······
父が村長と帰ってきた
飲み直すのかな、珍しい取り合わせだ
よくよく見ると私より少しだけ大きい少女も一緒だ
フードの付いた濃緑色のチェニックに
腰に軽く結んだ若草色の帯、荷物は何も持っていないが
この集落の子ではない、祭りのお客様だろう
なるほど、寝台が足りないといった所か
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「お初にお目にかかる、私はホワイトエルフの代表者だ。名乗る名を持たぬ不調法を許してくれ」
母が両腕で私の頭を胸に掻き抱いた
「ホワイトエルフ、いや大宣誓署名者の一人として貴殿に一つお願いがある」
なんで私の方を向いて話しているんでしょうか。あ、名前が無くても署名出来るんすね
「なぁに、大した依頼ではないのだよ。人間が魔王と尊称する怪物を一体始末して貰うだけだ」
精一杯、母娘で首をぷるぷる横に振るった
「最強のエルフであるアルシェ殿には面白味もなき事やも知れないが···」
ついには母が私を小脇に抱えて逃げ出した
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両親の寝室に籠城していた私達を父が必死に宥めリビングに戻らせると
崩れるように座る署名者さんを、村長さんが慰めておりました
託宣が······預言が······どうすればよいのだ···
何かが洩れ聞こえてきて、いささかあわれに思った
外見だけは儚げな少女なのだ、同情心も湧く
ホワイトエルフは種族名程には白く見えない
せいぜい、ホワイトゴールドといったくらいだ
「ロイス殿、ご息女は本当に······その、お加減がわるいのか?」
著名者さんは父にすがり付くように尋ねた
「はい、先程から何度も繰り返しご説明したようにアルシェは外の生活に耐えうる体ではございません」
父がはっきりそう明言したのは堪えたが、私のサバイバリティで従軍なぞ出来ようもない
·········まさか、単騎特攻させる腹積もりだったのか?
「そうだ魔法だ!、健康に関する魔法は貴殿らゴールドエルフの最も得意とするところでは?」
「私の知る限りでは、そのような魔法を使える同胞はおりません。ゴールドエルフは魔法を使えるものがとても少ないのです」
父の答えに天を仰いでいたが
ハッとこちらを見た
「無礼を承知だが確認させてくれ、アルシェ殿は魔法は使えるのか?」
おそるおそる聞いてきた
「この集落に駐在する豚妖精さんに教わってはいますが、まったくものになっていません」
後で面倒な事になりそうなので正直に話した
「その魔力で使えないか。······そうじゃない!、何でエルフがオークに魔法教わってんのよっ!」
ゴールドは、ゴールドはどうなっちゃたのよ
小さく呟やくとうつむいてしまった
オークガードさんはオークさんで良かったようだ
ここまでで読んでくれてありがとう
2章始まりました