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バツのついた羽

作者: 黒猫

只今修正中です。物語が繋がらないところがあると思います。申し訳ありません。

僕は、普通の鳥ではありません。


背中に羽は、あるのですが、飛べないのです。


羽を動かすことは出来ます。


「バサバサバサバサバサバサ。」


大きく羽を広げると空に羽ばたいているようで、安心します。



「今日も、飛べない羽を広げてる。」


「何がしたいんだろうな。」


仲間達は、当たり前のように空を飛んでいますが。僕は、飛べません。


道を歩く人達が、僕を見ています。


「何で飛べないのに羽を動かすの。」


「あっちに行ってよ。」


「危ないから子供に近付かないで!」


僕の居場所は、ありません。


地上を歩いても、人の仲間にはなれないのです。


それは、僕の羽に、バツがついているからだと思っています。


でも、何故、バツがついていたら嫌われるのでしょうか。


僕は、どうして、この世に生まれたのでしょう。


自分が分かりません。


ですが、僕には、お気に入りの場所があります。


暗い洞窟の中に見える青い海。


太陽の光に反射して宝石になる、とても美しい場所です。


僕は、いつも、願います。


『誰かと友達になりたい。』


話したい言葉は、数え切れないほどあります。


でも、僕は、話すことは出来ません。


これ以上、自分のバツを増やしたくないのです。


そんな気持ちのまま友達が欲しいと青い海に願う僕は、やっぱり自分の心にバツがあるのだと思います。



そんなある日、隣に小さな女の子がやって来ました。


ツインテールの女の子。


二人並んで海を見ています。


誰かと一緒に見る海は初めてでした。


青く澄んでいてとても綺麗です。


体が温かくなりました。


その気持ちは次の日も続きます。


また、あの女の子が隣にやって来てくれたのです。








やっぱり、僕の隣に座ります。







僕は、何も話しません。






彼女も何も話しません。






ただ、ずっと、青い海を見ています。







『気持ちを伝えたい。』







僕は、そんな感情を持つようになっていました。





でも、ある日、いつものように海を見ていると、女の子が泣きだしてしまったのです。







「ううっ、うっ、うっっ。」








僕は、何も話せません。







『どうして泣いているのかな。』




人間だったら、話せたのに。





飛べる鳥なら、君を連れて大空に羽ばたけるのに。






人なら、優しい言葉をかけてあげられるのに。






でも、僕は、ただの鳥だから。





飛べる鳥でも、ないから。





そう思っても、自分の心のどこかでは、女の子を






『助けたい。』




気持ちでいっぱいでした。







ですが、少女は言ってくれたのです。






「あなたは、話さなくていいんだよ。」








気持ちを伝えてくれたのでした。









「お母さんが、遠い世界に行っちゃったんだ。私の知らない世界に。ここは、お母さんとの思い出の場所だから、来たくなるの。」



母親の話を始めた時、少女の目には、優しい光が宿っていました。



僕は、大切な人との思い出の場所に自分が入ってしまっていることを、申し訳ないと思ってしまいました。




幸せな景色を僕の存在によって別の世界にしているのではないかと思ってしまったのです。




「青い海に頑張れって言って貰えるんだよ。」



でも、彼女は、笑っていました。





笑って、笑って。






僕がじっと見つめた先には、やっぱり、泣いている彼女の姿がありました。



涙を堪えていたのです。


本当の気持ちを出せずにいたのです。



女の子が泣くと、僕も、悲しくなります。





ですが、気持ちを伝えることは、出来ません。





願い続けた波は、現れませんでした。







少女は、言います。




「私のことは、気にしなくて大丈夫だからね。」





女の子の誰かを求める表情に、自分の嫌いな声が聞こえ始めました。







『僕は、誰かを心配しても、何も出来ない。』







『僕は、誰かを幸せにすることは出来ない。』








『僕は、目の前にいる少女を笑顔にすることは出来ない。』










考えても考えても、時間が過ぎていくだけで答えが見つからない。


自分を否定し続け、沼に浸かっていく。



気が付けば、苦しくて目から溢れ落ちていました。






それは、人間が流す涙でした。






鳥は、鳴きますが涙は出ません。



でも、僕の瞳から涙が流れたのです。



『君が笑ってくれないから僕は、悲しいんだ。何も出来ない自分が苦しいんだ。』







羽ばたきたくなりました。




答えを求められない遠い世界に。





君と一緒に、幸せだと感じられる大きな世界に。







「私の気持ちだけ伝えてしまってごめんね。でも、この場所で青い海を見ていると、元気な気持ちになれるんだよ。例えお母さんがいなくても、私は、楽しく生きて行けるって。だから、大丈夫。」







青い海が太陽に反射して光ります。





震える少女は、大丈夫ではありません。





だから、海にもう一度願いました。




『あなたの笑顔が見たい。』





自分では何もすることが出来なくても。







誰かの幸せを願うことは、出来る。








目の前にいる少女に、笑っていて欲しいと、願うことは、出来る。




僕は、バツのついた羽を広げました。





「バサバサバサバサバサバサ。」







自分以外の人が意味のない行動だと思ったとしても、一人でも信じていれば、僕は飛べる。





自分さえ信じていれば、きっと、飛べるようになる。











自由を探すことが出来る。





すると、待っていた波がやって来たのです。





大きな波が、僕達の前に表れました。






そして、青い波が女の子を一瞬にして包み込んだのです。







あっという間に彼女の寂しさの色を消し去って行きました。




波は、青色から緑色に輝いたのです。



どこまでも続く草原の絨毯が、僕達を呼んでいるかのような光景でした。





それは、偶然表れたのかもしれません。




奇跡なのかもしれません。




でも、僕のバツのついた羽によって、波がやって来たのです。






彼女は、驚いていましたが、次第に笑顔が溢れました。










「ありがとう。」






そして、小さな手を広げて言いました。










「バサバサバサバサバサバサ。」









僕の真似をしています。









「手を広げると、安心するね。私達を幸せにしてくれる魔法だよ。」





少女は、笑いながら大きく手を振っています。








『バサバサバサバサバサバサ。』





僕は、初めて出会いました。






自分の行動を認めてくれる人と。








そして、やっと、願いが、海に届いたのです。































僕は、あれから毎日彼女と会っています。




彼女の名前は、アユカです。






僕の名前もつけてくれました。









ソラです。








僕達は、話しません。







ただ、二人で海を見るだけです。





アユカは、僕に話してくれますが、僕は、話せません。





でも、それが、僕達だけの会話なのです。



アユカと一緒に海を見ていると、自分が鳥なのか人間なのか分からなくなります。






ですが、大切な人と見える海が綺麗なら、何もいらないのです。






「ソラ、魔法をかけよう!」








僕達は、いつも、心を落ち着かせるために大きく羽を広げます。





たくさんの誰かにバツがつけられても、一人の誰かが認めてくれることで、その印は消え、別の大きな世界に行けるのだと教えて貰いました。

















「バサバサバサバサバサバサバサ。」






「バサバサバサバサバサバサバサ。」











互いに笑顔が溢れます。









普通じゃない。








迷惑になる。







一緒に居たくない。






どんなに自分を否定されたとしても。




誰かを幸せにするための魔法になるのであれば。





僕は、羽を動かし続けます。








大切な人と見れる景色。






アユカの傍にいると、僕は、美しくなれるのです。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 普通とは何か? と云うことを考えさせてくれる作品でした 自分らしく生きると云うこと 周りから見て意味のないことだとしても 自分の中で 意味づけがしっかりと 成されていれば関係ないのだと…
2018/11/27 17:18 退会済み
管理
[良い点] バツの付いた羽はきっと誰しもが持っている『羽』なのではないでしょうか。でも、大人になるにつれ成長するにつれて、その羽を否定したり見ないようにしてしまう。羽を持ったままでいる鳥を拒絶すること…
[良い点] 鳥視点でのストーリーということで読んでいて新鮮でした。短い文章で気持ちを表すのは難しかったと思います。ですがあのように文章での気持ちの表現を少な目にして読者の想像を掻き立てる工夫は素晴らし…
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