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1(プロローグ)
ずっと自分の能力に疑問を持っていた。
戦うための力でも、守るための力でもないこの力に。でも、やっとはっきりした。このときのための力だったのだと。
「融合」
俺の力は自身と他の者を混ぜ、他者を自分の一部として扱うことができるというものだった。この事を知ったときはなんて無能な存在なのだろうかと思ったが、そんなことはなかったようだ。
誰もが立ちはだかる強敵を恐れ足をすくませる中、俺は、俺だけはこの紫の化け物を、いとおしいとすら思っている。
だってこれからそれは、俺の一部になるのだから。
俺の中に入ってくる巨大な化け物。
それはまるで人のように感情を持っていて、俺に語りかけてくる。
「熱い!痛い!やめてくれ!」
化け物に感情なんてあったのかと頭の中は冷静に物事を考えていた。得体の知れないものが自分になろうとしているのに、恐怖も異物感もなく、心は穏やかなものだった。