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その勇者、盗賊につき  作者: かんな らね
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第四章 6~エピローグ

 6


 交差する二人。

 最初にレヴィーが床に膝をつく。

「レヴィー!」

 戦いながらも舞台の様子を見ていたセシルが声を上げる。しかし、レヴィーは剣を床に突き刺し、何とかその場に留まる。


――ドサッ


 その背後でメガスが大きな音を立て崩れ落ちる。

「レヴィー!」

 プリシラが駆け寄ってきてレヴィーに抱きつく。

「うおっ! お前、もう女神様じゃないのか?」

「うん、これからはレヴィーの剣の中で世話になるって言ってたわ」

 レヴィーに向けるプリシラの笑顔は、すっかりいつもと同じに戻っている。

「そうだ、メガスは?」

 二人はメガスの元へ駆け寄る。ロケットに仕込んでいた薬の効果が切れたらしく、体は元の状態より少し衰弱したと感じる程に萎んでいる。周りにはおびただしい血が流れており、どう見ても、もう助からない状態だ。

「プリシラ、回復魔法とか無いのか?」

 自分が攻撃したのは百も承知でレヴィーはプリシラに尋ねる。プリシラは目立たないように首を振りレヴィーの耳元で囁く。

「回復魔法では天に召されかけている魂を引き止める事は出来ないわ」

「そうか......」

「今更......情けなど......かけないでください」

 途切れ途切れだが、メガスが口を開く。

「メガス!」

「君の方が......強かった。それ......だけだ。私にも君の......ように使命があれば......良かったな......」

 そう言うと、薄っすらと微笑み、そして力尽きた。

「メガス......」




 エピローグ



「レヴィー、最近ゴロゴロし過ぎだよ。体鈍ると後で苦労するよ」

「わーってるよ。だけど、こんなに美味い飯ばっかり出るんだから。セシルももう少し満喫しようぜ」

「じゃあ、レヴィーはこのまま伯爵家の婿養子になる気なのか?」

「そういう訳じゃね~けど......」

「伯爵はそのつもりだけどね」

 二人が寝転んでいる芝生はヴィオレット伯爵家の庭のものだ。


 プリシラの結婚式をぶち壊してから一週間が経った。

 街も混乱から回復して徐々に元の状態に戻っている。リーダーだったメガスが亡くなった為、邪教徒の一斉検挙も行われた。それによりかなりの人物が逮捕された。そして、街から邪教が一掃された。


 水の精霊と契約する事に成功したレヴィーは、勇者としての最低限の使命を果たしたので、後継者を探しながら村へ戻って家業を継ぐつもりでいた。しかし公衆の面前で、しかも教会で伯爵令嬢にキスをしてしまったレヴィーは簡単に街から去ることが出来なかった。


「婿殿、こんな所に居たのですか」

 セシルと木陰で休憩していたレヴィーをヴィオレット伯爵が目ざとく発見して、にこやかに向かってくる。その後ろにはコンラッドがついている。メガスがいなくなり仕事が回らなくなったヴィオレット伯爵を見かねてコンラッドが秘書を買って出たのだ。彼は彼なりに、昔からの付き合いのヴィオレット伯爵家のことを考えて婚約者に立候補したとのことだった。レヴィーはもしかして、コンラッドは単純にプリシラのことが好きだったのではないかと思ったが、何となくそれを訊いてはいけない気がして訊けなかった。もしかしたら、訊きたくなかっただけなのかもしれない。


「伯爵、婿殿は止めてくださいってお願いしているじゃないですか」

「しかし、婿殿は婿殿と呼ぶしかないでしょう。なあ、セシル殿」

「ははは。それで、伯爵は婿殿にどういったご用があったのでしょうか?」

 すっかりヴィオレット伯爵恐怖症になっているレヴィーを面白がりながら、セシルが話を切り出す。

「そうでした。先日の結婚式はバタバタしてしまいましたからな」

「あれがバタバタってレベルかよ」

「レヴィー」

 ぼそりとレヴィーが突っ込むとセシルに窘められてしまう。だが、ヴィオレット伯爵はそんなやり取りには全く気付かず上機嫌で話を進める。

「今週末にでも改めて結婚式をしようと思うので、今日は衣装係など呼んでありますから屋敷に戻ってください」

「え? 結婚式? 俺がですか?」

「他に誰が居るんですか?」

「だけど、俺......」

「まさか、公衆の面前でうちの娘にあれだけの事をしておいて、今更知らん顔するわけではないですよな?」

「だって、あの時は緊急事態で......」

 レヴィーが口ごもると脇から声が聞こえてくる。

「お父様! 勝手に決めないでください!」

 プリシラが仁王立ちで立っている。

「レヴィーさんとセシルさんはお昼寝タイムだったのですか?」

「草に直接寝そべるのは気持ちがいいが、昨日は雨だったからな。寝そべるならもう少し草が乾燥してからの方が良いだろう」

 そしてその両隣にはパティとシェリー。二人もここ一週間ほどヴィオレット伯爵家で世話になっているのだ。

「しかし、早く孫の顔を見たいし」

 今度はヴィオレット伯爵が口ごもる。

「おっお父様! 孫なんて! 私まだ十六なんですよ!」


 あの事件以降、ヴィオレット伯爵家でもささやかだが大きな変化があった。

 伯爵父娘がまともに会話できるようになったのだ。それまでは父親の命令を娘が聞くと言う一方通行だったことに比べれば格段の進歩だろう。


「全く、お父様ったら強引なんだから」

 何とかヴィオレット伯爵を追い払ったプリシラが、やれやれとため息を漏らす。

「悪かったな。あんな事しちまって」

「何よ。今更謝らないでよ」

「だけど、よく考えたら俺となんて嫌だったよな」

「別に」

 プリシラは小声で呟く。

「え? 何だって?」

 声が小さすぎてはっきり聞こえなかったので、レヴィーが聞き返す。

「別に嫌じゃなかったって言ってるでしょ!」

「何だよ。怒るなよ」

「怒ってないわよ!」

「怒ってるじゃね~か。理由言えよ。俺のせいなら謝るからさ」

「うるさい!」


「いやぁ、青春ですね」

 じゃれ合う二人を眺めながらセシルが呟く。

「そう言えば、どうしてレヴィーさんは解呪のポーションをプリシラお姉ちゃんに飲ませたのですか?」

「え?」

「どういうことだ?」

 レヴィーとプリシラが同時に振り返る。

「ポーションは別に飲まなくても良いのですよ。降りかければ充分に効果が発揮できるのです」

「............」

「............」

 あまりの事に言葉を失う二人を見て、セシルとシェリーは何とか笑いを堪える。

「......レヴィー」

「何だよ?」

 プリシラが顔を赤くして声をかけてくるので、レヴィーが恐る恐る返事をする。

「どうしてちゃんと使い方を訊かないのよ?」

「ってか、普通飲ませるだろ!」

「普通は飲ませませんよ」

「パティはちょっとあっちで遊んでてくれ! おい、プリシラ落ち着けって」

 何とかプリシラを宥めようとしていると、丁度いいタイミングで遠くから声がかかる。

「レヴィー様~!」

 セバスチャンが慌てた様子で駆け寄ってくるので、レヴィーとプリシラは揉め事を棚上げして振り返る。

「そんなに慌ててどうしたんすか?」

「ぜーはー。レヴィー様にお手紙が届いておりしたので、持ってまいりました」

「手紙?」

 全く心当たりが無いが、白い封筒を受け取る。何気なく裏返すと、そこには見覚えのある封蝋が施されている。

「げっ! じいちゃんどうして?」

 その封蝋はレヴィーの祖父が好んで使う者であった。

「ああ、これは間違いないね」

 いつの間にかセシルも傍に来て封筒を覗き込む。レヴィーは恐る恐る封筒を開ける。

「............」

「レヴィー大丈夫? 何て書いてあったの?」

 一言も発する事無く手紙を読みふけるレヴィーを心配して、プリシラが声をかける。

「当分村への出入り禁止だって」

「え? どうして?」

「お前のように大した実力も無いくせに、有名になってしまった奴が一番足手まといだ。だから名声に相応しいをつけてから帰って来いって」

「それって......」

「相応しい名声ってことは、まずは世界を守ってから、立派な盗賊になれば良いって事だな。......よし、次の精霊との契約を目指して早速出発するぞ!」

「レヴィー今からなの?」

 あんまりに唐突な宣言にセシルが驚く。

「おう! 直ぐに支度して出発するぞ。皆はどうするんだ?」

 レヴィーがぐるっと見回す。

「まあ、僕は当然ついて行くよ」

「わっワタシも折角仲間に入れて貰えたのです。これからもついて行きますです」

「自分もついて行くぞ。お前達だけでは危なっかしくて仕方ない」

「そうか。じゃあ早速......」

 セシル、パティ、シェリーの答えに頷き、話し始めようとした瞬間にプリシラが大きな声を出す。

「私も! 私もついて行くわ」

「はぁ? 何でお前まで? 家の方は大丈夫なのかよ?」

「何よ。私だけ仲間はずれな訳? 私だって神聖魔法使えるし、役に立つわよ。それに一応、婚約者だった筈だけど」

「お前、まだそのネタ引きずってるのかよ?」

「......あんな事したくせに」

 そう言って頬を赤く染めるプリシラ。レヴィーが頭を掻く。

「ったく。わーったよ! 勝手にしろ!」

「うん!」

 それを聞いてプリシラが満面の笑みを向ける。


「よし、取り敢えず世界を救いに行くか」


                                 ――END――

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。


この話は結構コテコテですが、自分では世界観とか色々細かいところまで凝って考えたので思い出深いです。


実はこれが初めて男の子主人公の話です。

(一番最初の長編は、男女交互目線だったので)

そういう意味でも思い出深いし、書くのは大変でした(^▽^;)


でも、こういうファンタジーってやっぱり好きですね。


ではでは、他の作品も読んでいただけると嬉しいです。

ありがとうございました。



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