心、2つ
出店を一通り見て俺達はこの街を後にした。
街から一歩離れれば賑わいの姿はなく、緑が生い茂る森になってしまった。
「あの街は栄えすぎてて病気や怪我人は全然いなかったね」
「確かに。でもハルカ。それは"見た目"でしょ。心の傷を抱えてる人はたくさんいるんだよ」
残念そうにしていたハルカにアキヤが諭した。
確かにその通りだ。
あの街は医療が進歩していて、病気や怪我をした人は最新の医療により回復していたが、心の傷を抱えている人はいた。
ハルカはまだそれには気付けなかったようだ。
「ナツも気付いてたの?」
「まあな」
ハルカが挑戦的な眼差しで聞いてきた。
「ハルカもナツぐらいになれば分かるよ」
「ふんっ!!ナツより早く習得するわよっ」
ハルカは腕を組んで強がってみせた。
「はいはい。せいぜい頑張りたまえよ、ハルカくん」
俺がハルカの頭をポンっと叩いて茶化すと、子供扱いするな-!!とハルカが怒る。
それが子供なんだよな、何て思いながらふとアキヤの方へ目を向ける。
「ん?どうしたの?ナツ」
俺の視線に気付いたアキヤが優しく微笑みかけながらそう聞いてきた。
嗚呼、駄目だ。この笑顔。
破壊力抜群だよな…。
アキヤはブルーの瞳がすごく綺麗だ。
深い海に吸い込まれるかのような錯覚に陥って惹き付けられる。
だから今みたいについ見惚れてしまう。
「いや、…いつ見ても綺麗だな、と」
「何が綺麗なの?」
「これだよ、アキヤの」
アキヤの目を指差し少し距離を縮める。
「ナツ…?」
「あー!!何やってんのナツ!!」
(またか…)
少し先を歩いていたハルカが振り返って叫んだ。
いつもこうだ。
ハルカを恨むのは違うと思うが、もう少し報われてもいいんじゃないのかって思う。
これじゃ、いつまで経ってもこの距離は変わらない。
「うっせぇなチビ。子供には分からない事だよ」
「だから子供扱いするなー!!」
「2人ともー喧嘩は駄目だって言ってるでしょー」
本当、いつまで続くんだよ、この状態。




