心、1つ
「ふあああ-…眠…」
「まだ眠いの?ナツ」
欠伸をしながら歩いているとアキヤにそう聞かれた。
アキヤはいつだって優しい。
元々あまり怒らない人だから逆に怒った時は…………
……恐くて思い出したくないや…
その点ハルカはガミガミ口煩い。
アキヤにはベタベタしまくって甘えるくせに、俺には文句ばっかりだ。
「アキヤ!!あれ見て来ていいっ?」
ハルカが出店を指差し目を輝かせていた。
「いいよ」
「やったあ!!ちょっと行ってくるね!!」
そう言い残しハルカは出店の方へ走って行った。
普段はませた事吐かすけど、ああいう姿はまだ子供なんだなあ、何て妙に微笑ましく思う。
「ハルカもやっぱ女の子だね。ああいうアクセサリーとか好きなんて」
「うん、そうだな」
ハルカが両親と離れて俺達と頑張ってるのは重々承知している。
だから本当はもっと優しくしなきゃいけないんだけど……………………だけど生意気なんだよっ!!
「ナツも何か見る?」
アキヤにそう問われ、ハッとする。
「ん、俺はいい。アキヤと話してる方が」
「え?」
アキヤがきょとんとしている。
俺はその姿が面白くてクスクス笑う。
「どうゆうこと〜ナツ〜」
俺の服を引っ張りながらアキヤが不満そうに聞いてくる。
何でも出来るくせにこういう事に疎いアキヤは、俺にとってすごく可愛い。
「そうゆうこと〜」
「あ-!!!!ナツ!!アキヤを独り占めしちゃだめ-!!」
遠くからハルカの声がする。
頭にはさっきまでなかった髪飾り1つ。
「お前が自分でいなくなったんだろ」
「でも駄目-!!!!」
全く我が儘だ。
「ハルカ、それどうしたの?」
「あっ、髪飾り?」
いいでしょ-といいながらハルカが髪飾りを見せびらかす。
蝶々のモチーフで小さな宝石が散りばめられている。
とても美しい髪飾りだ。
「お店の人がくれたんだぁ」
「そっか、よかったね」
アキヤがハルカの髪を撫でる。
ハルカはニコニコして嬉しそうにアキヤを見ている。
その光景を見つつ、俺は悶々とした気分でいた。




