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国王、王妃、医師
国王様の寝室に着くと、そこにはルルーラ王妃様とラルフ王子様、そして専属医師が国王様の眠る寝室のベッドに集まっていた。
「…ち、父上?」
フラフラと弱々しい足取りで、クルル様もその輪に入る。
医師が診察を終えて王妃様に向き合うのを、まるでスローモーションのようにゆっくりと感じた。
「……誠に、申し訳ございません。私には…この病を治す術を持っておりませぬ」
誰もが言葉を失った。
まさか、昨日まで今日のクルル様のお誕生日を誰よりも楽しみにしておられた国王様が…
一時の静寂の後、最初に言葉を発したのはクルル様だった。
「…父上を、…父上の病を治せる者はいないのですか?」
思考が停止していた者が、は、と我に返り王女様の問いに答える医師を見た
「北国の、ホクトベルムと言う国の医師ならば…医術は世界一と言いますが…」
「すぐに呼びましょう!!ねぇ!母上!!」
王の次に決定権がある王妃に、クルル様は同意を求めるようにしがみついた
しかし、
「ホクトベルム……あの忌々しい王の国!」
どうして、と崩れ落ちる王妃を誰もが唯ならぬ不穏の空気を感じざるを得なかった。