ホクトベルム、国王、王子
「お初にお目にかかります。クルル・ミナサガルドと申します。本日は急な申し立てにも関わらず、面会をお許し頂きありがとうございます。」
王の前に案内されたクルル様は、洗練された美しい動きで深く一礼をした。
「……、」
しかし、椅子に座ったままの国王は全く表情も変えずに視線も明後日の方向へと彷徨っている始末。
面会の理由は事前に書状を送っていたから知っているはず。ならば、やはりその内容に同意できないと言う意思の現れなのか…?
クルル様も、全く動きのない国王にどうすべきかと伏せた頭を上げられないでいるようだったが——次の瞬間、国王の隣に居た人物が立ち上がった。
「…申し訳ない、南の王女。…陛下はこの通り少し調子を悪くしておられるよって、此度の件は第一王子である私に任せられておる。それで宜しいか?」
「あ…は、はい。っ、??」
「私の名はローランシュナザ・ホクトベルム。ローランと呼んで下さって結構ですよ。
名前も可愛らしいですね?とても貴方にお似合いです。クルル様とお呼びしても宜しいですか?」
ニッコリ、と爽やかな笑みを浮かべたローラン王子はスマートにクルル様の前に膝をつくと、あ、という間にクルル様の右手を取ってそこに口付けをした。
乗り出しそうな自分の身をなんとか壁に押さえつけて、わからない程度に殺気を送る
よくある挨拶なんだけど、その無駄に整った顔が無駄にニッコリとして無駄にクルル様にベトベト引っ付くから
私、こいつ、なんか嫌い。その貼り付けた笑顔もすごく胡散臭いし。