見物しよう
うっす
街へついた。あたしは自転車を駅の近くのデパートの駐輪場へ置く。
あたしたちはそれからそのデパートで買い物をする。とはいっても、欲しいものは見当たらなかった。だから結局のところは見るだけとなってしまった。ただ見るだけだとしてもそれだけで時間は有効に使える。例えば、服を見て、これが欲しいとチェックする事が出来る。まあ、買わなければ意味はないのだが。
一時間ぐらいか。ブラブラとしていた。そして、デパートを出た。あたしたちは、他の店を回ろうと、今度こそ街へ向かう。街は目と鼻の先なので徒歩でいく。さすがと言うべきか、人の数が多く、歩きづらかった。
あたし達はとりあえず、色々と見て回った。そして最後はゲームセンターへ行き、プリクラを撮った。そういえば最近一緒に撮ったことなかったな、と撮るときに思った。
出てきたものを見て、可愛く撮れたとか、そんな事を話した。そして、そのプリクラを財布の中に大事にしまった。遥は下敷きに貼っていた。
一通りやる事を終えたので、カラオケボックスに向かう事になった。いい事に空いていた。なので、すぐに部屋に入れた。
そこであたしたちは時間を目いっぱいに使うのだった。
「いやー楽しかった。もう喉がガラガラ」
カラオケボックスから出ると、もう日は沈んでおり、真っ暗だった。太陽の明かりではなく、街灯の人工の光が辺りを明るくさせていた。
「結構歌ったもんよ。もう真っ暗だしな。お腹もすいたよ」
「やっぱり、二人だと回転が速いから沢山歌っちゃうんだよね。でも、歌いたい曲が早く消化されちゃうからネタ切れも早くなっちゃうよね」
「そうだな。うん」
あたしは大きな欠伸をして背伸びをする。遥からは「おじさんだ」と言われてしまった。
「さて。もう帰るか? それとも夕飯食べてくか?」
「あ、いいね。そうしよう。ちょっと、親にメールでもいれるね」
「あたしもそうしとかないとな」あたしはスマホを取り出す。「ファミレスでいい?」とあたしはメールを打ちながら遥にたずねる。遥は「それでいいよ」とあたしと同じく打ちながら言った。
送信が完了し、ファミレスに向かおうとした。その時、遥が何か反応した。
「あ、なんかやってるね」
遥は指をさした。その示された方向へ目を追わせた。そこには人だかりが出来ており、座ってみる者や、足を止めて、立ってそれを見る者たちがいた。
たまに街で見かけるやつだった。路上パフォーマンスというやつだ。なにやらマイクで喋っていた。あたし達が来たのはどうやら遅かったらしく、パフォーマンスは終盤に差し掛かっていた。なので、演技の内容がさっぱりだった。どういう流れでそこまでいったのかがわからない。でもまあ、あたしはそういうのに興味がないからどうでもいいことだけど。
「ちょっと見てみない?」
遥があたしの袖を引っ張る。あたしは「いいよ」と、了解した。まあ、見る分には何も問題は無いだろう。
あたし達は集団の一つとなりにいった。あたしたちの身長では前の人が邪魔でまともに見られなかった。しかし、横に隙間が空いていてそこからは普通に見る事が出来た。あたしは、そのパフォーマーの実力を拝見させてもらう事にした。
そのパフォーマーは、男性だった。というか、女性は見かけたことがないが。とりあえず、その人は何やら、色々と凄い物を空中に投げていた。りんごと、ナイフと、松明らしきものの三つだ。それを器用に投げていた。
こういうのは確か……「大道芸」というのだったかな。あたしにはそういうのはピエロの格好をしてお手玉をしているイメージが板についているためなにか新鮮なものを感じた。
「すごーい」
遥は拍手する。感激しているようだ。まあ、確かに凄いのはあるな。そのそれぞれ似ていない形を一定の動きをさせている事には感動をおぼえる。
「ミスったら、熱そうだし痛そうだね」
先端が激しく燃えているものとナイフは器用に一回転させ、触れても無事であるグリップを持つようにしている。もし仮に回転を半回転ずらしてしまったら、火傷、もしくは裂傷だ。そういったスリリングな状況である。あたしや遥を含めたこの場にいる観客全員は大丈夫なのか、とハラハラさせられている。
「さあ、今から、私はこの投げているリンゴを食べます」
男性は投げ続けながら喋り始めた。器用なものだ。あたしにはまねできそうにない。
それよりも、男性はいったいどこを見ているのだろうか、目線はずっと前を向いていた。そして、観客に、話すのだ。
男性がやろうとしているのは、三つの物を投げながら、投げているものの中の一つであるリンゴを口に運び、食べる、というらしい。そんな事が出来るの? とあたしは半笑いだった。
「見たーい」
遥は目を輝かせる。拳を握り、それに夢中となっていた。
「はい!」と男性の掛け声と共に、リンゴが口に運ばれた。りんごの果汁が飛んだ。一瞬だった。口に運んだと思ったら、すぐに、右手、左手、と投げ渡していた。
りんごを見ると、かじられていた跡があった。どうやら、成功したようだ。観客も、「おー」と感嘆の声をもらし、拍手する。あたしもついつられて、拍手をしてしまった。というか、やらなければならないような空気な気がした。
「ありがとうございます! 今度は、連続でいきたいと思います!」
男性はリンゴを食べながら話す。口から食べたものが飛び出していた。下品ではあるが、それも芸の一つなのであろう。
男性は一回でもどう考えても難しそうだった挑戦を今度は、連続でやるというのだ。
鼓動が早くなる。見ているこっちが緊張してしまう。それぐらいに引き込まれていった。
「いきます!」と言って、男性は、一回、二回、三回……とリンゴを食べた。拍手がパラパラとなる。
「すみません。見どころはもう、これしかありません。もっと頑張りますから、もっと大きな拍手をお願いします!」
観客はそれを拍手で答えた。
男性は「行きます!」と言って、リンゴを何度も食べる。食べまくった。りんごは、もうぼこぼこだった。
そして、最後は、そのリンゴを上空に投げあげ、ナイフの先端に突き刺し、演技を終えた。盛大な拍手と共に、男性はお辞儀した。
「すごいすごい!」
遥は飛び跳ねる。興奮を抑えきれていないようだった。リズムよく、拍手する。あたしはその芸はすごい、と思ったが、横ではしゃぐ遥を見て、顔をひきつらせていた。
「投げ銭やろう!」
遥は、投げ銭……まあ、いわゆるおひねりをあげに行こうと、あたしの袖を引っ張った。
「わかったって」
あたしは財布から、百円玉を取り出し、それを遥と共にあげに行った。男性が、帽子を裏返しにし、投げ銭を待っていた。くれた人には欠かさずにお礼を言っていた。遥は「すごかったです!」と男性に話しかけ、握手していた。
あたしたちは最後の部分しか見ていないが、感動するにはそれで十分だった。
あたし達は群衆から離れ、そこで感想を述べた。
「いやあ。感激したっすね」
遥の目は異様なほど輝いていた。興奮が収まらないようだった。
「そうだね。まあ、よく見るものではあるけど、大抵は足を止めて見たことはないからね。結構くるものだよね。見せ方……惹きつけるのとか上手かったしね。最後しか見れなかったのが残念ではあるな」
「だよね。あーあ。もう少し早く出ていれば良かった……。でも、良いものが見れたからもうどうでもいいや」
遥はにしし、と歯を見せて笑う。
「どうなってんのかね。というか、どこ見てたんだろうな。手元とか全然見てなかったし」
「ねえ。不思議だ。というか、十月か十一月ごろに、大道芸のお祭りがここであるじゃん? 今年見に行ってみない? なんだかんだで行ったことないし」
「ずいぶんと先の話だけど、いいぞ。楽しみ方とか知らないけどな。まああれは興味がない人にとっては街に行きづらくなるイベントにしか過ぎないからな。かくいうあたしもその一人なわけだし」
「よし。予定も決まったし、ファミレス行こう」
「そうだな」
あたしは軽く頷いた。
遥はあたしの腕を取る。引っ付いて少々歩きづらかったが、それはそれでアリだった。あたし達は腕を組みながら、ファミレスへ向かい、そこで夕飯を取って、解散するのだった。
投げ銭と言えば伝わると思っていたけど、中々それでは伝わらないんだな、というのを他県に引っ越してわかった。というか、路上パフォに興味が無い人は、そういう単語とかかわりが薄いのでしょうか。
それと、他県の人に『街』という言葉を使って「は?」と言われたのは良い思い出です。やはり、地元でしか伝わらないことが多いんだな、と実感しました。
どうでもいいけど、愛知県から新幹線で静岡へ行く時。
浜松駅に着いて、ああ次が静岡だ、と思ったら掛川がこの間にあったということに気がついた時の絶望感は異常だと思う。
次だ、と気を緩ませた後に来るもう一本。
穂高岳へ登った時を思い出して発狂しそうになる。あれも、登りきったと思ったら頂上ではなくまだ道が延々と続いていくのだから。
静岡は、横に長いので、新幹線への乗車時間がとても長く感じる。
まあ、そんな感じ。
パフォーマンスって、どうやるんでしょうね。
とりあえず、ありそうなものを書いたという感じですが、まあ、いいのかな?
静岡の街、といったら呉服町、青葉通りとか、駅の周辺の辺りの事を言うのですが、そこでたまにプロの大道芸人さんが、パフォーマンスを行っております。大体は伊勢丹の前の交差点とか。
静岡では11月になると駿府公園から街全体を使って、大道芸のイベントを行います。
今年度は10月31から4日間でした。当然、見に行きました。
これは街を盛り上げる為に開催されたイベントです。外国のパフォーマーやらも呼び、すごいお祭りになります。
まあ、大道芸のイベントとかはそこら中にあると思いますけどね。横浜とか、大須とか。どれもレベルが高いパフォーマーが集結していて、飽きませんね。
やはり、自分なりに好きな人は、桔梗ブラザーズさん(主にクラブパッシング)、天平(主にデビルスティック)さん。それと新さん(主にディアボロ)。ですね(ちょっと名前が出てこない)。
まあ、他にも色々な人がいます。トニーフレバーグ(ディアボロ)とかアランシュルツ(バウンスジャグリング)とか。
結構パフォーマンスの様子とか、youtubeとかであがっているので、よければどうですか?