その1
じめじめした熱気が漂う。
汗が身体中から溢れだす。
当たり前だ。
こんな夏真っ盛りに、何時間も卓球を、しかも試合形式でカウントしながらやっているのだから。
卓球場の窓からの日差しは、未だ控えようとしない。
床には汗が滑るくらいにたれている。
息もとっくのとうに荒げていた。
それでも……やめられない。
「死にそうな、顔してるけど、もうギブ……?体力、ないねー……!」
やっぱムカつく。
「そっちこそ、このままやめたら、196:193で勝ち越し、なんだけど弱くなった、?」
安い挑発……
それでも乗らずにはいられない。
お互いに……!
「ふんっ……!手抜いてんのにも、気づかないで……!本気だしたら、ボコボコにしちゃうからさ……!」
そう言ってサーブを出してくる。
バックコースにロング。
回転は横回転。
こんなの対応は簡単だ。
もう見慣れてる。
相手のバックに短く回転を殺さないように返す!
「そのコース70%……!いい加減学んだら!」
返した先には待ち構えていたようにラケットがあった。
そしてフォアロングに飛んでくるカーブドライブ。
とても私には返せるボールでなかった。
「便利そうね、その『ギフト』。確率が思い浮かぶんだっけ?その『ギフト』ずるすぎ」
そう言いながら小細工をかけたサーブを出す。
「お互い様でしょ……!」
返球は、少し浮きぎみなパワードライブ。
でもそこに浮きぎみな球は!
高校女子にしては異常な早さのスマッシュが、相手のコートに向かう。
とられるはずもなく、ボールは駆け抜けた。
「少しでも、フォアに浮いたのくれば、超速スマッシュとか……」
やってられない!
とでもいいそうな、怪訝な顔をする。
「それこそ、あんたの『ギフト』で、対応してみなさいよ!」
「言われなくても……!」