2話(4)
「どうだったの?そっちは」
校舎を一回りしてカオのいる屋上に上がったハルはそんな言葉を聴いた。
「一人寝てた人起こして体育館行かせた。そっちは?」
「小さいのが多いわね。結構殺ったわ、っと」
カオは伏せた状態でライフルを構えていた。
そしてまた一発撃った。
「シグも結構殺ってるみたいね。最初の方はここから見える位置にいたんだけど今は移動したみたい。私の射程に入ってること気づいたみたいね」
言いながらもう数発撃った。
「ああもう、多すぎ。この辺り回ったんでしょ?頼まれたことやったしさっさと撤退しましょう」
カオは立ち上がってライフルをしまった。
そして喉に手を当てて言った。
『シグ、撤退ね。さっきわかれたところで会いましょ』
返事はなかったがマイクの入った音が聞こえたのでそれを了解ととった。
「ほらハル!ぼさっとしてないで行くわよ」
行動の速いカオはもう校舎に入りかけている。
ハルはそれを急いで追った。
ハルとカオがさっきの場所に戻った時、そこには既にシグがいた。
さっきに通信はちゃんと繋がっていたようだ。
近接戦を得意とするシグの服は戦いの名残を残すようにところどころが赤く染まっている。
「怪我は?」
そう訊かれたシグは無言で首を振った。
服に着いている赤は魔物の体液らしい。
「ならいいわ。はやく戻りましょ」
カオが急かし、三人は体育館へ走った。
三人が体育館に戻るとそこには保健教師以外誰もいなかった。
「お疲れ様。もうみんなシェルターに避難したわ。みんなも急いで。あ、あと小夜ちゃんはこれ羽織って。そのままじゃ目立つわよ」
保健教師は小夜に少し大きめの、紺色のカーディガンを渡しながら言った。
小夜は言われたとおりにカーディガンを羽織って前のボタンを閉めた。
「シェルターの入り口はステージ下よ。はやく入っちゃって」
その言葉に三人は従った。保健教師も一緒に移動する。
小夜が保健教師の肩をつつき、手のひらに収まるサイズのアンプルを渡した。
中には赤い液体が満ちている。
「あ、もしかして魔物の体液のサンプル?できたらでいいって言ったのに。ありがと」
ちゃんと渡したことを確認した小夜は顔を前に戻した。