1話(2)
「ちょっと喋りすぎじゃないの?」
二人が出て行ったドアとは別のドアの向こうから声がした。
「聴いてたのは途中からだったけどさ、史実に書かれてないことを喋りすぎだよ。あの子‘転生’じゃないでしょ?見たところ。‘転生’の持つ記憶はほかの人にあまり知られちゃいけないことくらい知ってるよね?」
「ええ、もちろん知ってるわ。でもね、あの子、遥斗君は知っていてもいいんじゃないかって思っちゃってね。つい喋っちゃったわ。それに小夜ちゃんだって‘転生’とは何か違う感じはするけれどこのことくらいは知っていそうじゃない?」
保健教師は話を盗み聴きされていたことは何の気にも留めず話を進めた。
「まあ、私に影響しない程度なら別にいいんだけどね。どうなっても自分で責任とってよね?・・・・・・それにさ、もうそろそろの気がするんだよね、あれが起こるのは」
「奇遇ね。私もそう思ってるわ。だからこそ話したっていうのもあるのかもしれないわね。お互い気をつけましょ?真っ先に狙われるのは記憶を持つ私たち、だからね」
「・・・・・・そうだね。もう、あまり時間は残されてないんだよね」
ドアの向こうから気配が消えた。
「帰ったかな?さて、私も帰ろうかしらね」
保健教師ほそう呟いて荷物をまとめ外に出て行った。