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時雨  作者: 美川彼方
2/13

1話(1)

「え?魔物の話がききたいって?」


とある中高一貫校の保健室。

放課後、どの部活も帰り仕度を終え帰っているので周りに人気はない。


「そうそう。先生、そういうの詳しいんでしょ?きかせてよ」


話しているのは保健教師と高等部の男子生徒だ。


「詳しいってほどじゃないんだけどね。前に少し興味があって調べただけ。それでもいいなら話すけど・・・時間は大丈夫なの?」


「だいじょぶ。そういうのあんまり関与されないし」


「そう。じゃあ、ちょっとだけ話そうかな」


保健教師は話し出した。


「はっきりとはわかっていないけど、ずっと昔。

まあ数百年前と言われているわ。

その時代、地上の大半は魔物で覆われていたの。

ヒトも生きてはいたんだけどね、魔物のいる地上では暮らせない状態だった。

だから地下で生きていたの。

今も地下では生活できる空間があるでしょ?それはその時代の名残と言われているわ。


そんなある日、誰かが言い出したの。

『外で生活したい』って。

当然、言わないだけでみんなが思っていることだったのよ。

だから次々に賛成意見が挙がったわ。

でも現実問題としては無理。

魔物がはびこる中で生活しようだなんて自殺行為だもの。


それから解決策を求めて勇気ある十数人がグループを組んで地上へ出た。

調査のためね。

でも帰って来たのはほんのひとりふたりだったのよ。

ほかのみんなは魔物に殺されて帰って来れなかったの。

だけど、その調査でわかったことがあったの。

魔物は封印することが出来るってこと。


それから人間は全ての力を結集して封印の準備を始めたわ。

まだなにも出来ない子供達とそのお守りをする人を除いた全ての人が、よ。

準備が終わったら、みんなで地上に上がった。


・・・・・・そして、誰ひとりとして帰って来なかったの。


大きくなった子供達は地上へ出ることにしたの。

そして、見た。

緑が広がる広大な場所を。

魔物なんて影も形もなかったのよ。

封印は成功していた。

でもなぜ誰も帰って来ないのかはわからない。


でもひとつだけ間違いのないことは、地上は人が生活出来る環境になったこと。

子供達はみんな地上へ出て新しい生活を始めたわ。


そして今がある」


保健教師は話をやめた。


「それで、その封印方法って?」


「残念ながらわからないわ。やった本人達が消えてしまったんだもの。封印についてはいろんな説があるけど、いつか解けてしまうかもしれないって説もあるわね」


話を終えたときには下校時刻が迫っていた。


「そうなんだ。教えてくれてありがとね、先生!俺もそろそろ帰るわ。小夜っち起きてるかな?」


男子生徒がそう言いながら立ちあがったとき、保健室のカーテンが開いた。


「あ、起きてたんだ。帰ろう?」


「・・・・・・」


 カーテンから出てきた女子生徒は無言でベットから降りて自分の鞄を手に取った。


「ベットそのままでいいわよ、あとやっておくから」


保健教師が声をかけた。

男子生徒のほうがお言葉に甘えて、と言い二人は保健室を出て行った。

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