金魚鉢で桃の花を贈る
狭い金魚鉢の中。
ひらひらと泳ぐのは桃花と名付けられ贈られた金魚。窓際に置いたらぎらつく太陽に煮えてしまいそうで、夏の間は日陰に移してる。
君も閉じ込めてしまえたら良いのに。
「ねえ、なんで桃の花なの?」
「桃の花みたいな色だから」
桃も赤いけど。
「目をそらすのはごまかす時の君のクセだよ」
*
「閉じ込めたい、なんて。私はあなたが好きだから自分の意志で側に居るのにね」
君は金魚鉢の縁を指先で撫でる。
「桃の花言葉、知らないの?」
「桃の『兆』は確か『妊娠の兆し』……」
「違うから。何でそんなマニアックなトリビアは知ってるの」
「ごめん、花言葉は知らない」
「私はあなたのとりこ、よ」