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7話

 ミーシャに案内された所は小綺麗な3階建ての建物だった。看板には三角屋根の家が描いてありそのすぐ下に


『止まり木亭』


 と書いてある。


「ここは宿屋なんですけど、ご飯も出してるんですよ。宿泊費もお手頃でご飯も安いし量もあるんです。この辺りは治安も良いし、おすすめなんですよ。ヤマトさんはまだ泊まる所は決まってませんよね?」


「よくわかったな。びっくりしたよ」


 これに大和は素直に驚いた。大和の驚いた顔を見て、ミーシャは満足そうに笑いながら


「えへへ、だってヤマトさんはギルドで私に、王都に入ってすぐギルドに来たって言ってたじゃないですか」


 ・・・そうだった。武芸修行中に日銭を稼ぐため、商人の護衛をしていたらギルドの事を知り、商人の行き先が王都だったので到着してすぐに向かったが、道がわからずその辺にいた人に道案内を頼みギルドに来た。と大和は話したのだ。


 アイリスは大和の記憶喪失を信じて、丁寧に説明してくれたが、ステータスやスキル、魔法を知らないなんて、24歳ではあり得ないだろう。アイリスでなければ大和は今ごろ尋問でもされていたにちがいない。


 大和は今日できたばかりの友達に感謝しながら、図書館とか本屋で本を読んで、早急にこの世界の常識を仕入れなければいけないなと思った。


「あれ?ミーシャちゃんじゃないかい!」


 扉が勢いよく開き中から出てきたのは、40代位のふくよかなおばさんだった。


「あ、おばさんこんにちは。ご飯食べに来たんですけど、2人なんですけど、席は空いてますか?」


「ああ、空いてるよ。それにしてもミーシャちゃんが男を連れてくるなんて・・・・・・どおしたんだい?」


 おばさんがニヤニヤしながらそんなことを言うと


「ち、違いますよ!この人はヤマトさんで、今日ギルド登録に来てくれて、ギルドの説明をしてた途中でお昼になっちゃって、それで、宿の紹介もかねて、一緒にお昼ご飯食べながら、続きをと思って!」


 ミーシャは冷やかされて恥ずかしいのか、白い頬をほんのり赤く染め、犬耳をピンと立て、髪の毛と同じ色の栗色の尻尾を膨らませブンブン左右に振りながら、勢いよくまくし立てていく。


 おばさんとミーシャの間で繰り広げられる舌戦を眺めている事しか出来ず、大和は立ち尽くす。おばちゃんパワーのマシンガントークの前に飛び込む勇気がわかず。自分にその銃口が向かないことを祈りながら、ミーシャの尻尾を眺めていた。


「ふぅ、この辺で良いさね。さぁ、腹が減ってるんでしょ?早く入った!入った!」


 おばさんは満足したのか、とても良い笑顔で中へと促す。


「うぅ~、ヤマトさん早く行きましょ」


 やっと終わったか。この世界に来て初めてのまともなご飯に大和は楽しみでしょうがないと思った。







 中に入ると、美味しそうな匂いがお腹を刺激する。見渡せば席の八割が埋まっていた。ちょうどカウンターに2つ空いているイスに案内され、ミーシャと大和は肩を並べて座る。


「待ってな。今持ってくるからさ」


 メニューとか無いのか。メニュー見てもどうせ知らない単語だらけだろうとおすすめを頼もうとしていた大和だった。・・・緑色の肉とか出てきたらどうしようかとちょっと心配なってた大和だが、


「はい!!今日はクリームシチューと黒パンだよ。おかわりはシチューは一杯、パンは一個まで。さぁ、おあがり!!」


 見慣れた料理が出てきた。



 シチューは普通に美味しかった。入っていた見た目がジャガイモと人参の味は、そのままジャガイモと人参だった。クリームが濃くて、レトルトよりもよっぽど美味しかったとここ数日携帯食料で済ませていた大和は満足した。



「じゃあ、さっそく始めましょう」


「よろしく頼む」


 真面目な顔で言われたので、大和も真面目に返す。


「ギルドランクを上げるには依頼を達成する事が大前提です。依頼のランクが高いものを達成すれば少ない数でギルドランクを上げることが出来ます。反対に、ランクの低い依頼を沢山達成すれば上げることが出来ます」


「カードに書いてあるランクが急に変わるのか?」


「依頼達成の報告は水晶にカードを触れさせるだけで終わります。その時カードが光れば上がっていますよ。でも、それは、Eランクまでです」


 更に説明されると、E+となって充分に依頼を達成すると『★E+』と、星のマークが付く。そして、次のD-になるための昇格試験を受けられるそうだ。


「依頼を失敗したときは?」


「違約金が発生します。違約金は依頼のランクによって変わります」


 S、半金貨1枚

 A、銀貨5枚

 B、銀貨1枚

 C、半銀貨5枚

 D、半銀貨1枚

 E、銅貨5枚

 F、銅貨1枚


「なるほど。良くわかったよ」


「これで本当に終わりです。お疲れ様でした。・・・・・・・・・緊張しましたぁ~」


 そう言って、ミーシャはカウンターに突っ伏した。さっきまでピンと立っていた犬耳も力なくぺたんと垂れている。


「お疲れ様。すごく分かりやすかったよ。ありがとう」


 そんなミーシャの姿に労いの言葉をかけながら、大和はつい頭を撫でてしまう。


「ふにぁん!?」


 ミーシャはすごい勢いで立ち上がり、距離を取とった。


(犬耳なのに猫みたいな声を出したな。・・・・・・じゃない、謝らないと)


「すまない!悪気は無かったんだ。本当にすまなかった」


 大和は平身低頭謝るしかないと思い頭を下げる。


「いえ!!私の方こそ大袈裟に驚いてしまって、すみませんでした。びっくりしたんですが、えと、その、嬉しかったというか、何というか・・・・・・あ、もう私戻らないと!!!またギルドで!!!!」


 驚いた拍子のせいか顔を赤くして、わたわたしながら身振り手振りしながら早口で一気に喋り、走り去って行ってしまった。取り残された大和は


「お兄さん、お勘定払ってもらおうかい。・・・・・・・・・もちろん2人分」


 笑顔だが目が笑っていないおばさんに肩を掴まれ、大和は首を縦に振るしか選択肢がなかった。

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