表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/12

6話

本日4話目の更新です。

「では、説明の前にカードをお渡しします。なくさないように左上にある穴にひもを通して、首から下げてるといいですよ。紛失しますと、再発行には銀貨5枚もかかるんです」


 ミーシャはそう言って笑顔でカードを渡してくれた。カードは運転免許証の様な大きさで左上に小さな穴が空いていた。左半分には大きくF-と書いてあり、右半分の真ん中に『ヤマト・カミノ』とあった。


 打ち解けたおかげで最初の張り付いた笑顔ではなく、友人に向けるような笑顔で大和に話してくれる。・・・のだが、大和は先ほどから背中に視線が刺さってくる。最初の、なんだ?こいつ?みたいな視線ではなく、明らかに敵意が含まれている。


 大和はかなりの居心地の悪さを感じたが、説明はちゃんと聞かないといけない。なるべく後ろの事は考えないようにした。


「あ、そうだ。すみません。登録料を貰うの忘れてました。半銀貨1枚です」


 てへっと笑うミーシャに大和は銀貨しかないので銀貨を1枚渡すと、真ん中に穴の空いたドーナツ状の銀貨を9枚渡された。これが半銀貨なのだろう。


「それでは、ランクの説明をします」


 ミーシャはキリッとした顔をして説明してくる。が、大和はさっきの慌てた顔を見たせいで、子供が背伸びしてる様にしか見えなかった。


「ちゃんと聞いてますか?」


「っああ!聞いてるよ」


 ミーシャにジト目で見られ、慌てて返事をする大和。


 ランクは上からS、A、B、C、D、E、Fで、A以下は後ろに+と-がつく。最初はF-から始まり、次はF、F+、E-・・・・・・・・・最後にはSとなる。Dで一人前と見なされ、Bで一流、Aは超一流、Sはたった1人で軍隊と渡り会える位の強さでないとなれないとミーシャから説明を受ける。


「これで全て終わりです。お疲れ様でした。後、依頼を受ける時は、あそこにある掲示板から受けたい依頼が書いてある紙をカウンターに持って来てください。それと、どのランクの依頼を受けても良いんですよ。紙の右上に適正ランクが書いてあるので参考にして下さい。えーと、後は・・・・・・」


 全然説明が終わっていないことに大和は突っ込まず聞いていると


 カーン、カーン、カーン


 と鐘の鳴る音が響いて来た。何の音か大和はミーシャに聞くと、お昼を知らせる鐘の音らしい。説明の途中だしこれから休憩だから、一緒にご飯を食べながら続きをしましょう。昼食に誘われる大和。


 大和には断る理由がないので、快諾し一緒に立ち上がると、


「おい新入り。ちょっと訓練所に来い」


 大和が振り返ると、そこには首と腰に毛皮を巻いたワイルドなおっさんと鎖帷子を着た戦士が頭に青筋を浮かび上がらせながら立っていた。どうしてこうなった。と大和は思った。









 ミーシャを待たせて、ワイルドなおっさんと鎖帷子さんと大和は一緒に訓練所の扉をくぐる。逃がさないためか両脇に挟まれ非常に暑苦しい。


 訓練所はだだっ広い広間だった。隅には魔法の試し撃ちにでもするのか、木でできた人形数体立っていて、所々焦げていた。壁には何種類かの武器が掛けてあり、恐らく刃は潰してあるのだろう。


「早く武器を取れよ。大丈夫だ、刃は潰してある」


「心配するな。新人なんだろう?先輩が指導しやるだけだから」


 血走った目で言われても全く安心できないんだよと内心でつぶやく大和。・・・・・・・・・しょうがない。人を待つのは苦ではないが、待たせるのは胃がキリキリして嫌なんだよ。早く終わらせて行こうと大和はショートソードを取って、両手で持ち正眼に構える。


「いいか新人。ミーシャちゃんはなこのギルドのアイドルなんだよ。てめぇみてぇな軟派小僧にミーシャちゃんを近づけるわけにはいかねぇ」


「そーゆーこった。わかったらおとなしくボコられろ」


 だんだん、ただのチンピラに見えてきた大和。よく考えたら、ギルドに登録して先輩に難癖つけられるってテンプレだよな。と大和は思う。さらに、この状況はとても美味しいのでは、とすら考える。


 !!!俺は今ファンタジーを体験している!!!


 マンガであれば集中線をつけて叫んでいた大和。


「「おい!!無視すんな!!」」


 しびれを切らした二人がロングブレードを振り上げ大和に突っ込んでくる。振り上げられた2本の剣がまっすぐ大和の頭上に降り下される。が、大和にとってはおそろしく遅い。


「っかぁ?」

「あふぇ?」


 大和は一瞬だけ身体強化をかけて2人の間をすり抜けざまにおっさんのアゴに左手の裏拳、鎖帷子のアゴには右手に持ったショートソードの柄で殴りつける。2人は変な声を出しながら崩れ落ちた。


 大和が中2病を発症している間にギャラリーができていたらしく、辺りがざわつくがミーシャを待たせている事を思い出して、急いで向かった。






「あれ、早かったですね」


「ああ、新人の心得を教えてくれたんだ」


 出る杭は打たれるみたいな感じのやつ、と大和がぼそりと呟く。


「へ~、やっぱりあのお2人って優しいんですね」


「うん?」


  ミーシャに道案内されながら大和が聞いてると、おっさんと鎖帷子は依頼達成の報告をしたときに、たまにお菓子や、綺麗な花をくれるそうだ。が、ミーシャは2人の名前を覚えてないみたいだ。


「報告って水晶にカードを触れさせるだけで終わるんですよ。だから、名前とかカードをじっと見ないと読めないし、ジロジロとカードを見るのは失礼かなって。でも自分から聞いたりとか恥ずかしくて・・・」


 あの2人がかわいそうになってきた大和だった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ