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5話

本日3話目の更新です。

 大和は眉をひそめるアイリスを見て、何かあるのかと不安になる。


「ああ、すまない。説明する・・・と、言いたいがヤマトのこの固有スキルの事を聞いてもいいか?」


「ん?固有スキルって珍しいのか?」


「珍しいどころではない、持っている者など稀も稀だ。私も話には聞いたことがあるが持っている者を見たのは初めてだ」


「・・・やっぱりこの世界では珍しいのか」


「何か言ったかヤマト?」


「いや、なんでもない。このスキルは精神力を消費して、身体強化や炎を生み出して操れる。あとは、炎から武器を取り出す事が出来るんだ」


「ずいぶんと便利なスキルだな。さすが固有スキルといったところか・・・武芸の心得があり加えて固有スキル持ち、冒険者でもヤマトなら大丈夫かもしれないな」


「それで冒険者ってどんな職業なんだ?」


「冒険者は職業の1つで、あらゆる属性の魔法とスキルの適性を持っている職業だ」


「良い職業じゃないのか?」


「そこだけ聞くと最強になれる職業だと思うが、冒険者は普通の職業よりレベルが上がり方がとても遅いんだ。加えて、少しというかだいぶ特殊な職業だ」


 詳しい説明を聞くと


 職業には

 下位職業

 中位職業

 上位職業


 があり、職業のレベルを10上げると別の職業に転職出来る。転職出来る職業は所持しているスキルに合わせて変わり、下位の次は中位になれるが、下位から中位の様に上に行くためには下位のスキルをいくつか取らなければならない。例えば、中位職業の魔法剣士になるためには、下位職業の剣士の剣術スキルと魔法使いの魔法適正スキルが必要になる。


 沢山のスキルを取りながらゆっくり上位の職業を目指したり、さっさと上位職業について強力なスキルを取る人がいたりと様々だ。しかし、魔物がはびこるこの世界でギルドに所属する人達は常に死と隣り合わせ、普通は早く上位職業につく。


「全部の魔法適性があるんだろ?それだったら魔法屋に行って、魔本を沢山買えば良いんじゃないか?」


 と大和が聞くがそう簡単なものでもないらしい。魔法適性があるといっても、下級火魔法の『ファイヤーボール』を習得したければ、スキル習得欄の下級火魔法適性を取らなければならない。


 さらに冒険者の厄介なところは、なんと転職出来ないとアイリスは言う。


「それじゃあ、レベルが10になったらそれで終わりなのか?」


「いや、そうではない。冒険者はレベル上限が無いんだ」


 つまり、


 1~49レベルの間は下級スキルしか取れず

 50レベルから中級スキルが解放され

 100レベルから上級スキルが取れる様になる。


「へ~、面白いな」


「他人事ではないぞ。最初言ったが冒険者はレベルの上がり方が他の職業に比べて遅いんだ。具体的に言うと5倍位違うんだ」


「・・・酷いな。それよりも、アイリスは冒険者に詳しいな」


「まだ他人事な気がするが・・・それは少し歴史の話しになるな」


 昔、初めて冒険者と言う職業が見つかった時はお祭り騒ぎになった。それはそうだろう、全ての属性魔法の適性と全てのスキルを習得出来るのだ。レベルの上限もない。すごくない訳がない。と、思ったらレベルが全く上がらず、スキルも魔法も出来なくて役に立たず。


 やっと習得出来たと思ったら下級スキル。周りの才能ある者は上級スキルや上級魔法を習得するなか、冒険者はいつまでも下級のスキルに下級の魔法。結局、ギルドを辞めてしまい田舎で畑を耕して過ごしたそうだ。


 冒険者は戦いには向かない事が定着した有名な話だ。


「すまない、ギルドに入る前にこんな話を。しかし、武芸に心得のあるヤマトなら何とかなるかも知れないが・・・」


 心配そうな顔で言うアイリスに


「無茶はしないさ、生きることが大事だからな。それに・・・・・・」


「それに?」


「借りるお金を返さなくちゃいけないしな!」


「・・・・・・フフフ、そうだな。生きて必ず返してくれよ、ヤマト」


 10分くらい2人が歩くと、羽の描かれた看板が取り付けられた建物の前に来た。大和はここがギルドだとアイリスから説明される。ギルドの前で、アイリスは午後から予定があるらしく大和に謝り、銀貨3枚を渡した。


「何から何まで本当に助かった。ありがとう。アイリス」


「いや、ここまで来たら最後まで面倒をみたかったのだが、すまないな」


「子供じゃないんだ。後は自分でやるよ。稼げるようになったら飯でも奢らせてくれよ」


「楽しみにしている。なにかあったら騎士団に来てくれ。また会おう、ヤマト」


「またな、アイリス」


 アイリスと別れ、大和がギルドに入ると、目に飛び込んで来たのは如何にもな強面の人々。 鎖帷子を着たポールアックスを背中に背負った戦士と思われる男が居たり、白いマントを羽織ったイケメンが居たり、毛皮を腰に巻いているワイルドなおっさんが居た。


 左手には青色の扉があり、上に『訓練所』と書かれた札があった。右手には、待合室のようなところに、100人ぐらいは居る。 女の人の姿も何人か見たが、1人は露出過多の鎧の間から逞しく鍛えられている肉体が覗いている。アマゾネスと言う言葉がぴったりな女性だ。後は、拳大の綺麗な赤い宝石がはまっている大人の伸長と同じ大きさの杖に黒いローブと黒い大きなトンガリ帽子、魔女と言い表すしかない人もいた。


 入った時に、何人かが大和の方を見てきた。ジロジロと興味深そうに目線を向けて来る。 アイリスから成人間際の子供に見られたのだ。他の人もそう見えるだろう。あまり気持ちの良いものではないが、しょうがないと諦める大和。


 待合室の隣には、大きな掲示板らしきものが幾つも置いてある。そこに紙のようなものが何枚もところ狭く張り付けてある。掲示板を真剣に眺めている人間が何人も居る。時々、張り付けてある紙を剥がしてはカウンターへ持っていく。


 正面にはカウンターがあり、 銀行の受付カウンターみたいだ。そこは受付窓口のように、木でできた区切りがある。区切りで出来た一つ一つの空間には、それぞれに透明な水晶が置かれ、人が座っていて、 受付嬢といったところだろう。


 大和はとりあえず空いている窓口に座ると周りから(特に男から)の視線が少し強くなった。大和は疑問に感じたが気にしてもしょうがないと開き直る。


「すみません、ギルドに登録したいんですけど」


 受付嬢は、美人というより可愛らしい女の子だった。 栗色で少し癖のある髪を後ろでまとめてポニーテールにしていた。茶色の目はぱっちりとして、くりくりとしている。幼さが若干残る顔立ちに、頭には犬の様な耳が生えていて、柴犬のみたいな印象を受ける。


 触ってみたいな


 と初めて間近でみる獣耳にかなり邪な感想が大和の心の内に沸き上がるが、顔に出ないように努めて真面目な顔でいるように力を込める。


「よ、ようこそギルド、王都支部へ。ぎ、ギルドへの登録を志望の方ですか?」


 新人なのか若干どもりながらぎこちなく喋る。


「はいそうです」


「登録の受け付けは、い、何時でもしております。ギルドの登録手続きとして、か、カードの発行をします」


「お願いします」


「ではこちらの水晶に手を置いて下さい」


 大和が水晶に手を置くと、透明だった水晶は中でだんだん灰色の渦巻き始め、高速で回転をしだした。大丈夫なのか?と不安に思う大和たが渦は次第に回転を弱め、最後には霧散した。


「と、登録が完了しました」


 受付嬢は水晶を持ち上げると、水晶があった場所には1枚の銀のカードがあった。受付嬢はカードと水晶を見て


「え!?24歳!?」


 大きな声を出して驚く受付嬢に一瞬ギルド内が静まりかえる。


「あ、あの、えーと、な、なんでも無いです。ホントにすみませんお騒がせしました」


 その一声で、ギルド内が元の騒がしさを取り戻すと、受付嬢に謝られた。


 お詫びに名前教えてくれたら許すよ。などと大和が言うと、お互いに自己紹介し、場を柔らかくする。この可愛らしい受付嬢はミーシャ。成人したばかりの16歳で、カードの名前と水晶に写ったステータスを見比べて間違いがないか確認していたら、自分と同い年だと思っていた大和がそれなりに年上で驚いてしまったらしい。ギルドに来た経緯を話したりして、お互いにだいぶ打ち解けた頃を見計らって大和は


「よく歳を間違われるから気にしないよ。それよりも、これで登録は終わり?」


「はい、そうですよ。ランクの説明はしましょうか?」


「ああ、お願いするよ」

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