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3話

「お――――だ――――――――ぶか!?」


 声が聞こえる。が、目の前が暗いと大和は思った。そこで、ああ、自分は目を閉じてるのかと分かった。


どうして目を閉じているのか、この感じは何度も経験があった。気を失ったときのあの感じ。・・・気絶といえば訓練、訓練といえば師匠。と徐々に意識が回復していく大和は連想していく。


「おい!!大丈夫か!?」


「っ起きてます!!!まだやれます師匠!!!!」


「案外元気だな。起きたか?」


「あれ?」

 

 師匠と訓練の途中だと勘違いし、勢い良く立ち上がった大和の前には、綺麗なブロンドの髪を肩口まで伸ばし、目はキリッとした凛々しい青い瞳、鼻筋もスッキリしていてる美人な女性が立っていた。


 (えっと、ああ、思い出した。異世界に来て、羽を使って転移したんだったっけ)


大和はきょろきょろと周りを見ると、左には街が一望でき、右を見れば平原があった。そこで自分は高い建物の上にいるのが理解できた。女性は大和を眺めて、


「ふむ、怪我は無さそうだが、大丈夫か?」


「あ、すみません。私は大和と言います。倒れていたところ助けて頂きありがとうございます」


 大和は急いでお礼の言葉を述べ頭を下げる。頭を下げながら相手を観察すると、白銀に輝く全身鎧と白いマントをを身に付け、腰には剣が割れている家紋だろうか、それが装飾がされているロングブレードを下げていた。胸の部分に金色の装飾で王冠が描いてあり、相手がそれなりの地位に就いている事がうかがえた。


「いや、頭を上げてくれ。怪我がなくてなによりだ。それよりどうしてここで倒れていたんだ?」


やっぱりその質問が来るか、と冷や汗を流す大和。異世界から来ましたは無い。頭がおかしいと思われる。それにこの人は警察官の様な人だろう。下手なことを言って、『ちょっと取り調べ室に来てもらおう』なんて避けたい。かと言ってこの世界の常識なんてものは持ってない。・・・どうすれば。


「だ、大丈夫か?顔色が悪いぞ。・・・やはりどこか具合が悪いのか?」


顔を青くしている大和を見て心配そうにする女性。いい人なのだろう。そんな人にどう嘘を言うか頭を悩ませている大和は少々気まずかった。


「あ、いえ、大丈夫です。ええっと、ここにいる理由はですね。・・・わからないんです」


「わからない?」


「自分の年と名前と武芸に心得があるくらいしか思い出せなくて。なんでここで気を失っていたとかそもそもここがどこかもわからないです」 


大和は記憶喪失という事にした。これなら常識がなくても大丈夫、しかもあれこれ質問されても『わからない』で済む上に逆にこっちから質問してこの世界について教えてもらえるかもしれない。心の中で冷や汗をかきながら相手の言葉を待つ。


「それはいわゆる記憶喪失というものか?」


「そう、みたいですね」


「・・・」


「・・・えっと――」


「そうか、それは大変だったな」


 大和は凄い真剣な顔で慰められた。


「ヤマトくん、そんな年で記憶喪失で、顔にそれほど大きな傷つけて・・・・・・・・・心配するな!私に任るんだ!!」


「え、あ、はい。・・・あの気持ちは嬉しいですけど、俺は24歳です」


「うん?同い年?」

 

 そんな年とはどういうことかと話しを聞くと


 この世界では16歳で成人するが、成人しても普通は、そのまま生まれた所で一生を過ごすそうだ。大和の見た目から15歳前後位に見えたそうで、そんな成人になる手前か成人になり立ての人間が、親元を離れるというのはあまりいないそうだ。いるにはいるが商人へ奉公などが一般的なのだという事だ。


 そんな話を聞きながら、大和は自分の容姿を思い浮かべる。


 大和の身長は164cm、相手は180cm位。大和の髪の色と目の色は共に黒。女性はそのあたりは特に何も言われなかったが珍しそうに見ていた。珍しいが変ではないのだろう。顔は十人並みで二重瞼の生粋の日本人。身長と顔で幼く見えるのだろう。


  大和の顔の傷は前の世界でついたものだ。左目から上下かけて2本の傷と、右目にも同じ様に1本のデカイ傷がある。体にも多数の傷はあるがやはり顔は目立つようだ。


 このとても良い人は大和と同い年でアイリス、という名前らしい。後ろにとても長いものがついていたが、言えなくてワタワタしている大和に呆れたのか、苦笑しながら、アイリスで良いと言ってくれた。


「なんだ、その、勝手に勘違いをしてしまい悪かった」


 最初のキリッとした雰囲気は何処かへ行ってしまい、勘違した恥ずかしさからか、顔を赤く染めて俯いている姿は、とても可愛らしかった。


「いいえ、気にしていませんよ。それよりも、嬉しいです」


「嬉しい?子供に見られたあげく、勝手な想像でヤマト殿を哀れんだんだぞ?」


「心配してくれて、しかも、自分の事を想って涙を流してくれる事を嬉しく思う人はいても、怒る人はいませんよ。それに、貴女みたいなとても綺羅な人に」


「ふぇ!?」


 更に顔を赤くするアイリス。大和はこの人位の美人だったら言われ馴れてると思って場を和ませようと言ったのだが、駄目だったようだ。ちなみにアイリスは大和の想像通り言われ慣れてはいたが、それは嫌みはひがみ、下心ありありの言葉だったので、『綺麗だから綺麗』という真っ白な言葉には言われ慣れていなかった。


「・・・」


「・・・」


「・・・こほん。まぁ事情はわかった。」


少々強引に話しを進めるアイリス。大和としても助かるのでそのまま聞く。


「記憶喪失で荷物はない様だし、無一文なのだろう?」


「う゛、無いです」


「ふむ、武芸に心得があるのだったら、騎士団に入団するのもありだが、入団テストはまだ先なのだ。そうすると、ギルドに入って依頼をこなして稼ぐのがてっとり早いが、登録にも金はかかるぞ。さっきの非礼のお詫びと言ってはなんだが、少しばかり貸そう」


「いや、それはわる――――」


「では当てはあるのか?」


「・・・・・・無いです」


 俯いてしまう大和。


「ふむ。ではこうしよう。今からヤマトと私は友人だ。友人同士なら金の貸し借りは出来るな」


「・・・・・・・・・わかった。すまない。助かる、アイリスさん」


「さん、は余計だヤマト」


「そうだな、アイリス」


 こうして、異世界に来て初めて大和に友達が出来た。

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