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1話

「太陽は1つなんだな」


 夜明けとともに目を覚ました大和は山から半分顔を出している太陽を見て言った。寝袋から体を出し、ゆっくりとストレッチをして体をほぐす。ふぅー、と一息つくと今度は目を閉じて両手と前に出した。


「よいしょっと」


 掛け声とともに両の手の平から黒い炎が漏れ出しそれはだんだんと大きくなっていく。大和がイメージを送ると次には丸くサッカーボール状の球体になった。さらに力を込めると球体の温度が上昇してき、温度の上昇にともなって球体の周りはゆらゆらと陽炎ができる。


 大和のこの超能力は目の異世界で目覚めたものだ。超能力で出した炎の色は個々人で違っている。大和は黒で大和の師匠は銀だ。この炎は実に多様な使い方ができる。大きさや形の変化や硬度、温度も使用者の意識で自由に変えられる。・・・その分精神力の消費も大幅に増えるが。


「よし、この辺でやめるか。炎を体に戻してっと、朝の準備運動おわり!・・・・・・はぁ、ひとり言多いなぁ」


 大和は森の中でただ一人遭難中という状況に少々さみしさを感じつつ、寝袋を炎で圧縮しポーチにしまい携帯食料をさっさと食べ移動する準備を整えた。


「いったん周りの景色を見たほうがいいよな」


 そう言うと、屈んでグッと身体強化を足にかけてドンッと地面をけった。20mほどの高さまで上がると今度は重力に従って大和の体は落ち始めた。その時、大和は足から黒炎を噴射し落下が緩やかになった。


 大和の目の前に映る光景は木、木、木という大森林だった。1~2日くらい歩いても町どころか人里すらなさそうな景色に大和は顔をしかめる。どうしようかと後ろの景色を確認すると3㎞ほど先に木が伐採されたのか朽ちたログハウスのようなボロボロ建物を中心にして円状に綺麗に木がないのが見えた。


「人は住んでなさそうだけど・・・周りにはあれくらいしかないしこのまま飛んで行くか」


 瞬間、大和の体中から黒炎があふれ出し鳥の形になっていく。黒炎を鳥の形にして自身にまとった大和は一度大きく羽をはばたかせて建物のある方角へ滑空していった。


 もう少しで木がなくなっている部分に近づいきた。その時、大和の体に悪寒が走った。


「っ!?当たるかよぉぉ!!」


 悪寒が走った刹那、大和は体を回転させながら両の羽からジェット機のエンジンの様に黒炎を噴き出し、爆発的に速度を上げて斜め左下方向へ回避行動をとり、ブォンッと真っ正面から飛んできた大岩とすれ違う。大和は空中でまとっていた黒炎を自身にしまい建物の前に着地した。


「仕事だ!黒雛!!」


 大和の握りこんだ左手から黒炎が左右に吹き出し、黒炎が消えたかと思えば大和の左手には柄、鞘、鍔が黒で統一された一本の日本刀が握られていた。


 ブモォォォォォ!!という叫び声をあげ、森から現れたのは体長3mに体重200㎏はありそうな二足歩行の緑色の豚の怪物だった。


 二足歩行の豚がその巨体に似合わぬ速さで走って来て、腕を振り上げ、大和に向かって力一杯降り下ろしてきた。


 大和は降り下ろして来た拳を腕の下をくぐる様に避けながら、脇の下に刃を走らせる。


「ブモォォ!?」


 さらに大和はその場で体を回転させ刃を返し、無防備な左足首を深く斬りつける。そしてすぐにバックスッテップで離れる。


「ブモォウゥゥ?!」


 怪物はたまらず方膝を地面につき唸っている。左腕の脇と腕と左足首から紫色の血が切り口からドクドクと流れ落ちる。


 その様子を大和はじっと観察する。


(ゲームみたいな世界だとは思ったけど、まさかこんなゲームでよく見るゴブリンの上位版みたいな奴がいるなんて・・・)


 ゲームの様にスキルや魔法があるかもしれないと考え距離を取りながらカウンター主体で戦う事にする大和。その傷から次はどう行動するのか、黒雛を正眼に構え注視する。


「ブゥ…ブモオオオ!!」


 豚の怪物は先ほどよりも荒々しく声を上げながらまた走り寄り腕を降り下ろして来る。


 同じ様に腕を降り下ろして来るかと思ったら途中で止めて回転して裏拳を放ってきた。が、


「はぁぁぁ!」


「っ?!ブモォォ!!?」


 横殴りでくる裏拳を手首ごと斬り落とす大和。


 (さっき斬った斬り傷の出血がもう治ってる。これで走れたのか。高速再生能力か?だけど、今度は斬り落としたぞ。どうなる?)


 斬り落とした右手首を見ていると、どんどん出血が少なくなりついには薄い皮膜が出来るのが確認できた。厄介だな、と大和思ったが怪物の様子を見て考えを改めた。


 ブフゥゥ、ブフゥゥと先ほどとは違い辛そうに呼吸を繰り返す怪物。


(傷は治せても体力は回復しないのか、それとも再生に体力を使うのか、どちらにしてもあの状態で奥の手なんてないだろうな)


 化物は先ほどよりも弱々しい唸り声を上げながら同じ様に大和に襲いかかってきた。


 左から拳が迫るが少し後ろに下がり拳の表面をなぞるように斬る。


 鋭い痛みに豚は手を引っ込める。手が引かれたのに合わせて踏み込み左上から斜め下に腹を斬る。


 今度は痛みに耐えながら左の脇を絞めて真ん前にいる俺にアッパーを繰り出そうしてきた。


 脇を絞めた瞬間に、真横に移動しながら黒雛を上段に構え、大和が先ほどまでいた場所にアッパーを出してきた所に合わせて肘を斬り落とす。


「ブモォォォォォ!?」


 左腕の肘から先が無くなり身体中から血を流しながらとうとう豚の怪物は倒れた。


「ブゥ……モォォ」


 呼吸も絶え絶えな怪物に近づき大和はその首に刃を降り下ろした。


「ふぅ、これでこの世界の初戦闘が終わりか。あの高速再生はスキルなのか、この怪物特有の能力なのか・・・やっぱり色々と情報が欲しいな」


この建物に何かあると良いな、とこぼした大和は建物に向かった。

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