竜狩り 前半
フリッツとスイを乗せた馬車が外壁を出て15分程経とうとしていた。
先ほどの二人は実力はなかなかのものだったらしく、こうして馬車も無料で貸してくれた。
情報によると、目撃された火竜は全長7メートル、高さ3メートルと一般的なサイズだ。
既に近くを通った商隊などの数人が被害を受けているらしく、その人たちが言うには気性がとても荒いらしい。
「まあ、何があっても倒すだけだけどな」
「そうですね」
馬を操りながらフリッツとスイは作戦などを話し合っている。
実際は作戦なんてものはほとんどなく、竜の特徴などの再確認だけだったが。
「そういえば、アコルを出たら次はどこに向かうのですか」
スイが聞いてくる。
「次は港街ミルファーに行く予定。ちょっと寄りたいところと会いたい人がいてね。」
「会いたい人、ですか」
スイが不思議そうに聞いてくる。
「うん、その人に聞けば"これ"について何かわかるかもと思ってな」
言いながらフリッツは自分の胸に手を当てる。
この旅の理由である自分の体に。
ホントは一番最初に行くべきだったところなんだけどさ、というつぶやきが風と共に流れていった。
「その人って誰なんですか?」
「ああ、その街の……スイっ!」
「分かってます」
自分が言うのと同時にスイは右方に大きな水の壁を張る。
その直後、爆音と共に何かがぶつかり、その衝撃で乗っていた馬車が少し煽られた。
何かが飛んできた方向を見てみると、
「早速お出ましか。スイ、引きつけておくから馬車を安全なところに」
「分かりました。すぐに戻ります」
空中でホバリングをしている竜の姿が見えた。
その口からは火が漏れており、さっきの攻撃は口から火を吐いたのだとわかる。
フリッツはすぐにスイに指示をだし、自分は竜の意識を自分にむけさせるように専念した。
「まずはスイから引き離さないとな」
フリッツはスイが馬車を泊めに行った方向と反対方向に走る。
既に銃は抜いており、何発か撃っているがあまり効いていないようだ。
それでも気を引くことには成功したようで、勢いよく滑空してきた。
「危ねっ」
フリッツはとっさに身体を強化して、その体当たりを避ける。
続いて少し魔力を多めに込めた弾を数発撃つが、これもあまり効いていないようだ。
(ずいぶん硬いな、弾の質を変えてみるか)
フリッツは貫通性を高くした弾を銃に装填した。
弾に付加効果をつけると込める魔力が多くなってしまうが、その分威力は高くなる。
しかし、その弾を撃とうとするが、竜が再び火球を放ってきたので撃てなかった。
「ちっ」
フリッツはそれを横に転がって避けるが、竜は連続で火球を放ってくる。
避けながら自分に当たりそうなものは銃で相殺して防御に徹底する。
途中、何度か服や体が焦げたような音がしたが、大きなダメージは受けていない。
「そろそろ反撃しないとな」
スイは一瞬止まり、竜の頭を銃撃する。
頭部の攻撃は有効なようで、暴れていた竜が一瞬怯んだ。
フリッツはその隙を逃さず、次々と攻撃を加えていく。
「ギャアアアオオオォォ」
フリッツの攻撃に竜は怒りの咆哮を上げた。
その直後、竜の口元が紅く光る。
そして、さっきまでと同じで何かを吐き出すような動作をするが、これはただの火球じゃなさそうだ。
なので、フリッツはとっさにサイドステップで距離を取った。
その直後、赤い線が元いた場所を消し飛ばした。
「熱線かよっ」
流石は火竜と言うべきであろう、竜の口から放たれている熱線は、その周りにある草花を一瞬にして消し炭にした。
フリッツが元いた場所あたりは小さなクレーターができている。
さらに竜の攻撃はこれだけでは終わらなかった。
「今度は薙ぎ払いかよ」
竜は首をゆっくり横に振り、熱線で薙ぎ払ってきた。
フリッツは熱線から逃げる方向かつ、竜の足元へと走る。
そして、熱線が当たるギリギリのところで足元に到着し、勢いを殺さないで竜の足の間をスライディングで滑りぬけた。
目標を見失った竜は熱線を出すのを止め、左右を見回す。
しかし、既に竜の視界から外れているフリッツから遠慮なしに銃撃がお見舞いされる。
「グギャアアアオオオオォォ」
竜が痛みで叫びをあげた。
同時に見るからに硬そうで大きな足の爪で地面を地面を思いっきり蹴る。
その爪によって抉られた土塊が勢いよくフリッツの方へと飛んできた。
「くっ」
いきなりのことで回避も銃での相殺も出来なかったフリッツは腹になかなかの大きさの土塊をくらってしまった。
魔力で体を強化しているとはいえ、フリッツは10メートルほど吹き飛ばされてしまう。
フリッツはすぐに体勢を立て直そうとするが、竜は追い打ちをかけるように火球を放ってきた。
-ドゴオオオオン-
周囲に爆音が鳴り響いた。
竜は標的の亡骸を見るために一歩ずつ黒煙の立ち込める方へと歩いていく。
もう一歩踏み進んだ瞬間、1メートル程の水球が煙の中から飛び出してきた。
「ギャオッ?」
頭に水球が直撃した竜はそのすさまじい威力に後方に吹っ飛び、わけがわからないといった様子でうめき声をあげる。
確実にしとめた筈なのになぜ、
竜は警戒しながらいまだ煙が消えていない方向を見つめる。
徐々に煙が晴れていき、その中からはさっきまでと変わらない一人の男の姿があった。
しかし、その男が持つ二丁の銃は蒼く光っており、纏う闘気が全く別のものになっている。
「「終わらせるぜ」」
男の発した声からは男と女の二つの声音が聞こえるようになっていた。
リオ〇ウスがアグナ〇トルの熱線を使ったと想像してください。
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