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ギルドでのひと騒動

「にぎやかなところだねえ」



「主人、爺くさいですよ。しかも、それどこかの街に行くたびに言ってますよね」



暖かい日差しの下で散歩をしている老人のような口調で話すフリッツにスイが呆れながらにツッコんだ。


何度も聞いているだけあって自然にため息も深くなる。



「そのツッコみも毎回聞いてるんだけどな。それにしても、ギルドにはまだ着かないのか」



「そうですね。住人の話ではこのあたりのはずですが」



二人は小一時間ほど歩き街の中心部に入ったのだが、いまだにギルドに到着できずにいた。


もうそろそろ着いてもいい頃なんだけどなあ、とつぶやきながらあたりを見回している。


すると、目の前に少し大きな建物が見えてきた。



「おっ、あれじゃないか?」



フリッツの声を聞いて、横を向いていたスイもフリッツのゆびが指示している方向を見る。



「それっぽいですね。あのあたりからお酒の嫌な臭いも漂ってきます」



「相変わらず精霊って鼻もいいもんなんだな。俺には何にも臭わないけど」



スイは以前、別のギルドで二人が仕事を終え、そのときたまたまチームを組んでいた三人と軽い打ち上げみたいなことをしていたことがあった。


フリッツはお酒は普段からほとんど飲まないので、自然とスイもお酒のたぐいは飲まないようにしていた。(まあ、精霊は何も食べなくとも平気なのだが)


しかし他の三人は結構お酒を飲む人たちだったので、一杯ぐらい飲めよ、と無理やり勧められていくうちに仕方なく一杯だけとフリッツもスイも飲んでしまった。


フリッツにはやはり苦く、スイに「苦いな、スイはどうだ」と言い横を向いたところ……




と、まあ後はご想像にお任せする。


結果としては、その三人以外にも十人ほど酔い潰しスイもそのままテーブルに倒れた。




その者たちから姉御、と呼ばれているのは二人は知る由もない。



「あれは思い出すだけで腹筋がよじれそうになるよ」



「今すぐ忘れてください。後から主人に聞いたときどれほど恥ずかしかったと思ってるんですか!」



「その日の報酬金が全部すっとんだしな」



「だから忘れてくださいってば!!」



そうこう言い合っている内に二人はギルドの入口についていた。


煙草たばこの煙がこもらないように通気性がよくされている建物内ではたくさんの人が酒を飲んだり、大声で話し合ったりしている。


フリッツとスイはそういう輩たちとなるべく接触しないように依頼を受注するカウンターまでまっすぐと歩いて行った。


看板娘かと思われる女性がにっこりとほほ笑んでくる。


うん、いい笑顔だ。



横からジト目でこっちを見てくる精霊がいたので手短に要件を話すことにした。


ちょっと、殺気出てますってスイさん。



「あー、依頼受けたいんだけど」



「少々お待ちください、リストを取ってきますので」



そう言うと女性は奥の方へと早足で歩いて行く。


奥からは何やらガサゴソと探すような音が聞こえてくる。


しばらくすると、アルバムみたいなものを手に持ち帰ってきた。



「こちらになります。お決まりになったらまたお呼びください」



女性から依頼の一覧をもらい、ついでに紅茶を二つ頼み空いている席に座った。


周りの男たちからいろいろな視線が突き刺さるが慣れているため全部無視。


初めのページあたりは難易度の低いものが多く、後ろのページに行くほど難易度があがっていく。


フリッツは迷わず真ん中から後ろのページを見ていく。


外壁の補修工事の護衛、洞窟にある鉱石の採掘、ゴミ掃除などのたくさんの依頼がある。


パラパラとめくっていく内にフリッツは一つの依頼書に目を止めた。






              「緊急依頼、火炎のドラゴン討伐」


     アコルより東へ5キロほどの丘陵地帯に一匹の火竜が現れたとの情報が入った。


          このままではこの街も何らかの被害に遭うかもしれない。


                急ぎこの火竜を討伐してほしい。


      報酬 75000キット     依頼人 アコルのギルド長 フジ





「これなんていいんじゃないか。しばらくお金には困らないと思うぞ」


ちなみに今飲んでいる紅茶が1杯100キットである。


「そうですね、少し面倒そうですが本気を出せば大丈夫でしょう」



「竜なら前にも4体ぐらいは狩ったしな、まあ一応、大きさとか特徴も聞いておくか」



フリッツは早速カウンターに行き竜の特徴などを聞いてみた。


しかし、カウンターにいる女性は困惑するばかりで、詳しいことを言おうとしないのだ。


不思議に思い「何かあるのか」と聞いてみると。




「だって竜ですよ。あなた一人で倒せるわけないじゃないですか」



あー、そうきたか。


フリッツは心の中でつぶやく。


どうやらこの女性には戦いに行くのはフリッツ一人だと思っているらしく。スイは頭数に入れていない、いや、もしかしたらただの付添いの人としか思われてないかもしれない。


そのフリッツも現在18歳になったばかりなので、周りから見ればただの少年にしか見えないだろう。


実際はスイは上位の精霊、フリッツもスイよりは劣るが年齢以上の身体能力を持っている。



どうやって説得しようか。


そんな風に考え始めようとしていたところ、




「なになに、お前らみたいなガキが竜退治だあ?」



「無理に決まってるじゃねえか。ガキは家帰って寝てろよ」



「ちげえねえや。おっ、なんだい嬢ちゃん。俺らとるってのか?」



「いいぜ、かかってこいよ。たっぷり可愛がってやるからよ」



と、見るからにガラの悪い二人組がフリッツたちに近づいてきた。


一人は金髪で片方の耳に3つほどピアスをつけている。


もう片方には坊主で頬のあたりに大きな傷がある。


これも二人には慣れたものなのだが、フリッツがバカにされたのでスイが男たちを睨みつけてしまった。



(別に無視しておけばいいのに。ん?、そうだ!)



フリッツの頭の中でピコーンと何かがひらめいた。



フリッツはスイの肩に手を乗せ「少し下がって。あと、そこのお嬢さんのケアを頼む」と耳打ちする。


この男たちは有名なのだろうか、カウンターの女性はおびえていた。


まあ、見た目からして印象が良くて有名なのではないだろう。



フリッツは少し息を吸うと






「俺の女に手を出さないでもらおうか。……………………こんな感じか?」



となかなかの声量で二人の男に言い、振り返って堂々とスイの方に確認を取る。



あたりが一瞬静まり返る。



フリッツの顔は明らかに楽しんでいる顔で、スイは「なんでこんなややこしい時にそんなこといいますかー」と心の中で叫び、顔が真っ赤になるのと同時にフリッツが何か企んでるとすぐに分かった。




「てめえなめてんのか」



目の前でふざけたことをした挙句、フリッツの半笑いの顔を見てしまった金髪の男は、頭に血がのぼりフリッツの左肩に手をかけ殴ろうとした。



(まってました♪)



心の中で歓喜の声を上げると同時に、肩に手が乗った瞬間に金髪の顔に肘打ちをお見舞いする。


そのまま左手で後頭部にあたりに手をかけ、一気に体をひねり腹に強烈な蹴りを放つ。



「がっ」



急に攻撃され反応ができなかった金髪は、モロにフリッツの攻撃を受け後ろに倒れこんだ。



「ドギー、このガキがぁ!」



仲間が倒されたのを見て坊主の方も殴りかかってきた。


この金髪はドギーって言うのか、とか思いつつ右にかがんで坊主のパンチを避ける。


その勢いで左手を床につけ、軸足の左をひねり坊主の腹を右足で下から上に蹴り上げる。



「ぐえっ」


こちらもカエルがつぶれたような声を出し、床に倒れた。



「ブリッツ、てめえ!」



後ろを向くと金髪が復活しており、またこちらに殴りかかろうとしている。



俺と名前似てるなあ。



今度はそんなことを思いながらも左足を前にだし、突き出される拳をそらし、さらに金髪の足を払って床に背中から叩き落とした。



流れるような動作でホルスターから銃を抜きだし、男たちに突き付け、



「あんたら、実戦だったら負けてるぜ」



と感情を消した声言い放った。


男たちは痛みと恐怖で動くことができない。


目の前にいる少年と自分とでは圧倒的な差があることに気が付き、瞳から戦う気力が抜けてしまった。



フリッツは男たちから闘意がなくなるのがわかると、銃をホルスターに戻し、いつも通りの顔と声で受け付けの女性に問う。



「それで、その竜の特徴とか詳しく教えてくれない?」


女性は間抜けに口を半開きにしたままコクリと一回頷いた。

ちなみに外壁はもうすぐ続編が出る某狩りゲーのア○ガミ装甲みたいな大したものじゃあないです。

魔物によっては数十分で破壊されることもあります。




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