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荷馬車の上で

二頭立ての馬車は森に差し掛かった。


道の両側に生い茂る樹木は人間の数倍あり、それらに光が遮られ辺りが少し暗くなる。


地面の表面は少し荒くなり馬車がガタゴトと揺れ動くようになった。


そのうち、馬車の片方の車輪が道の窪みを通り馬車が大きく跳ね上がった。


大きめの衝撃に馬車の中で寝ていた少年、フリッツ・アルデバートは目を覚ました。




「うん……あれ、もう森の中じゃないか。」



フリッツは馬車がすでに森の中に入っていることに驚きながら起き上がる。



「おっ、起きたのかい。ちょうど起こそうと思ってたところだよ。ここいらが一番魔物やグゾルが出やすい場所だからしっかり護衛を頼むよ」



「分かってます。乗せてもらっているからにはしっかりと仕事はさせていただきますよ」




フリッツは元気よく御者の女性に答える。


女性もその声を聴くと満足したように頷き前を向いた。


グゾルとは人間でもなく魔物でもない生物で、気性は荒く他の生物に対してとても攻撃的である。


動物が魔力を持ってしまい変異したのが魔物と言われているのだが、グゾルは何から進化したわけでもなくそのまま「グゾル」としてこの世界に現れたのだという。


グゾルも魔物も魔法を使えるので魔法が使えない人間にしてはどちらも危険なことには変わりはないが。




「それにしても、森に入るんだったら言ってくれてもよかったんじゃないの、スイ」




フリッツは自分の右斜め後ろの何もない空間に向かって話しかける。


他の人から見れば即座に変な目で見られるだろう。


しかし、その何もない空間から一人の少女が現れた。




「そもそも主人が寝ているのが悪いんでしょう?一応、周りには気を配ってたんでいざというときには起こすつもりでしたが」




「それを言われちゃあ何も言い返せないな。まあ、見張っていてくれてありがとうな。」




「いえいえ、主人の精霊としての務めですから」




おおげさだなあ、と思いつつも目の前の精霊と笑いあうフリッツ。


この精霊のスイは主人であるフリッツの精霊であり、よき相棒パートナである。


以前、フリッツがグゾルとの戦いでボロボロになり森で倒れていたところをスイに見つけられた。


スイはその時は名もないただの精霊として森を荒らすグゾルと戦ってるところであった。


そこで戦っていたフリッツを見つけ、傷を癒してそれからいろいろあって主人と精霊という関係になったのだが、詳しいことは省略する。


いずれ語る機会もあるだろう。





フリッツたちの馬車の一行は森の四分の三ぐらいまでは何の問題もなく進んでいた。


もともとこの馬車には正規の護衛がいたのだが、途中で魔物に襲われ負傷し、別の救急の馬車がきてその護衛の者たちを乗せていった。


護衛がいなくなり困っていたところを、そこにたまたま通りかかったフリッツとスイが護衛をする代わりに次の町まで馬車に乗せてもらうという約束をしてこの森の中を進んでいる。


御者の女性にとっては護衛がいないと魔物やグゾルに襲われたときに何もできないため、途中でフリッツとスイに会えたことはこの上ない幸運であった。


なので、今日は運が良いと思い、根拠はないがこのまま何事もなく旅が終わると思っていた。




そんな中、荷台でフリッツと話していたスイが突然立ち上がった。



「主人、出番です」



「わかった。場所は?」



「後ろですね。グゾルが十体ほど」



「了解、スイは馬車の護衛を頼む。グゾルは引き受けるわ」



そう言って馬車から飛び出していった。


スイはフリッツに少し見送った後、まずは御者の女性に今の状況を説明することにした。


状況を聞いた女性は慌てることも騒ぐこともなく、フリッツが離れすぎないようにと馬車の速度を緩める。


スイは追いつかれないようにスピードを上げると予想していたので、女性のその行動に驚きと関心を覚えた。





フリッツはしばらく走っていると、目の前にグゾルの群れが現れた。



グゾルにはいろいろな種類の体のかたちがあるのだが、それらはすべて「グゾル」という名でひとくくりにされる。


今回のグゾルは四足歩行の獣型が4体、鳥型が4体、そしてテントウムシみたいなかたちをしている昆虫型が4体の計12体だ。


グゾルの特徴である黒色の体に、赤い眼、黒い体表に走る黄色い線が少し暗い森に不気味に浮かんでいる。


フリッツは自身の武器である二丁の回転式リボルバーを両腰のホルスターから取り出した。


この銃は実弾を打ち出すのではなく、自分の魔力を弾にして打ち出す魔法銃なので自らの魔力が0にならない限り弾切れすることはない便利なものだ。




「さっさと終わらせて帰るか」



フリッツは魔力で体を強化させ、グゾルの群れに高速で突っこんだ。


そして一番先頭にいる獣型のグゾルを蹴り飛ばす。


魔力によって強化された蹴りはグゾルにでも大ダメージを与えることができる。


蹴られたグゾルは黒い霧となり姿を消していった。


これがグゾルが死ぬときの状態だ。



そんな仲間を気にせず他のグゾルたちも次々とフリッツに攻撃を仕掛けてくる。


フリッツはバックステップで距離を開けながら一番速いスピードで体当たりを仕掛けてくる二体の鳥型のグゾルに弾を撃ち込む。


続けて後方で風の魔法を放った二体の昆虫型の魔法を避け、弾を四発ほど叩き込む。



「グギャアアアァァァ」



攻撃を受けたグゾルたちは次々と黒い霧になり消滅していく。

他のグゾルたちは、フリッツの圧倒的な強さに慄いたのか、唸るだけになり一時攻撃が緩んだ。


そこを見逃さず、フリッツはどんどんグゾルの群れに正確に攻撃を与えていく。


途中、獣型の詰めが脇腹に掠ったが、それ以外のダメージはなく、二分ほどでグゾルの群れは全滅するのであった。



「くそっ、一発喰らっちまったな。スイに心配かけちまう」



そうぼやきながらフリッツは魔法で強化した体で馬車の方に走っていくのであった。

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