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第16話:開始

 理の部屋まで移動した二人は、主のいない部屋へと入った。

 リュウファはすぐに窓を開け、自らの守護する風が入るようにする。

 もともと広い上に、整理整頓が上手い彼の部屋には十分なスペースがある。リュウファは洸野に手伝ってもらい幼馴染たちが来たときに使用するクッションをすべてベッドの上に移動させた。

 すべての障害物が何もなくなったところで、彼は中空に向かい何かを描き始めた。

「理たちがいるのは、『キュスリア』と呼ばれる世界だ」

 指先が一つ動くたびに複雑な線が絡み合い、一つの円形の模様を作っていく。

「二人はこの世界から発せられたねがいにより飛ばされてしまった」

 話しながらでも間違わないのかなと思いながら、洸野は黙って少年の動きを監察している。

「願ったのは理と威の前世にしがらみがある少女・・・どうして彼女がこんなことをしたのかわからないけど、これは許されざることだ」

 本当に彼女だけの願いかも判らない。しかし彼らを呼んだ声は前世で彼らと関係があった少女のものだった。


 どの世界の闇の王よりも強大な力を持つ・理。

 その理の影響を受けて強い光の力を持ってしまった・威。


 どちらか一人だけでも取り返さなければ、微妙なバランスで守られていた『地球世界このせかい』に取り返しのつかない影響が出てしまう。

 連れ去られた後、いろんなところに出来た綻びと歪みは世界の至る所に現れ、もはやリュウファ一人では修復できない所まで来ている。。

 このままでは大切なこの世界を・・・・・・大切な人たちが託してくれたこの世界を守れなくなってしまう。

「二人が持つ強大な力のためについた歪をたどり、僕は突き破られた異界との扉を見つけることができる」

 自分が守る地球世界の壁がそうやすやすと破られるはずはない。

 正規の手順は踏んでいないが、『ゲート』を通ってあの風は吹き込んだはずなのだ。

 強い力はそれだけで目印となる。通ったすべての道に痕跡は残してしあむ。それを探るしか今は方法がなかった。

「扉さえ判れば僕の持つ『鍵』で開くことが出来る」

 リュウファは描き終えた魔法陣を確認してから、それに力を加えて広げた。

「俺は、何をすればいい?」

 ただ見ているだけの今の自分が、いったい何をできるのだろうか。洸野の問いかけに、リュウファは一度だけ視線を動かすと、すぐに作業へと戻った。

「洸野がするのは、扉を開けた後の処理だ」

 大きく引き伸ばした魔法陣をゆっくりと部屋の床へと下ろしながら、リュウファは説明を続けた。

「今の僕の『姿』では扉を開き、その上で安定させることまでしかできない。

 それ以上に必要な彼らを呼ぶねがいおもいそして繋がりが必要になる。洸野はいつでもあの二人に通じている。そして、誰よりも強いおもいを有している・・・何よりも、地球世界を揺さぶるだけのねがいを発することができる」

 呼びかけ・導き・引きずり出さなければ、いけないほど事態は悪くなっている。

 力任せに連れて行かれたせいで世界だけでなく時空の歪まで出ているのだ。この時点で連れ戻せるチャンスは一度だけ、向こうが目的の場所につき、こちらが光と闇の狭間の時間『逢魔が時』を迎える一瞬のみだ。

「誰にでも、できることじゃない。だけど様々な力を持つ洸野にならできる」

 本当は彼の能力にも理由があるのだが、それは今説明すべきことではなかった。

 だが、その能力の有無を今は洸野に自覚させなければならなかった。

「自分を信じて、自覚を持って、そうすれば自ずとちからは見つかるはずだ」

 リュウファはそういいながら、床に広がった魔方陣の端に自分の手を乗せた。途端に様々な種類の風が荒れ狂うように、踊るように、歌うように、求めるように部屋中に満ちる。

 ゆっくりと魔方陣から豪奢な扉が出てくるが、リュウファが指を横にやるだけで霧散してゆく。

 いくつかの扉が現れ、消え去った後、少年は「これだ」といって扉を固定した。抵抗するように扉の隙間から洩れ出てくる風をリュウファは薙ぎ払い、その扉のノブの部分に手をかける。


カチャン・・・


 軽い音と共に鍵の外れる音がした。

 これで第一段階は終了だ。一仕事を終えたリュウファは洸野へと振り返ると、彼の両手を取り、彼の目を覗き込んだ

「二人を取り戻すための力は、いつだって洸野の中に存在する」

 その言葉が意味するものが掴めはしないが、なさねばならないことの重要性を理解した洸野はゆっくりと彼の言葉に肯いて見せた。

リュウファが洸野を子ども扱いするのは彼が神代かみよの代から生きているおじいさんだからです。いろいろと真意も何も語らない人物を中心に据えると、なかなか話が進めにくくて困ります。

とりあえず地球で救出のための準備が始まりました。

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