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ライガはケニヤを完全に無視した。


文字通り、完全に、だ。


人生を一生引きずるほどの一瞥をくれた後、彼はケニヤなど最初から存在しなかったかのように、そのまま一族の本殿へと歩いていった。


ケニヤは二秒ほど固まった。


――そして、その瞬間。


頭の中に、夏の太陽のように眩しいひらめきが走った。


待てよ……

この人、強い。

理不尽なほどに強い。

そこらの教師なんて、せいぜいサンドバッグにしかならないレベルだ。


➡️ だったら……師匠になってもらえばいいじゃないか?!


その瞬間から――


ライガが行くところ、ケニヤあり。


ライガが歩けば、三歩後ろをついていく。

ライガが止まれば、直立不動。

ライガが振り向けば、春の花が咲いたような満面の笑み。


「ライガ叔父さ〜ん」

「叔父さん〜」

「こんなに強いのに、教えないなんてもったいないですよ〜」


ライガは一言も発さない。

視線すら向けない。


だが、ケニヤは諦めなかった。


露骨なまでに媚び始めた。


――水を取りに走る。

――ライガの進む道を先に整える。

――しまいには、自分からマントを持つ始末。


一族の者たちは、信じられないものを見る目でそれを眺めていた。


あれは本当に少主なのか?

それとも拾ってきた子犬か?


だがライガは変わらない。

冷淡。

無言。

ケニヤを空気のように扱い続けた。


やがて、ライガはハルトの執務室へと入っていった。


扉が閉まると――


中の空気は、まるで別世界だった。


「久しぶりだな」ハルトが微笑む。

「相変わらず、予告なしで現れる」


ライガはマントを外し、自然に腰を下ろした。


「族長は、ちゃんと務まってるか?」

「死んでないなら、問題ないさ」ハルトは平然と答える。


二人の男――

形式も、遠慮もいらない。


実の兄弟だった。


外では、ケニヤが猫のように機会をうかがっていた。


そして、その瞬間――

彼は勢いよく部屋に飛び込んだ。


「父さん!」

「ライガ叔父さん!」


二人の男が同時に振り向く。


ケニヤは大きく息を吸い、深く頭を下げた。


「どうか、ライガ叔父さんに僕を鍛えさせてください!」


ライガは眉を上げた。


「断る」


短く。

簡潔に。

容赦なく。


それでもケニヤは諦めなかった。


一日目:頼む。

二日目:さらに頼む。

三日目:もっと図々しく頼む。


朝から晩まで、修練場から廊下、倉庫から一族の門まで、ライガに張り付いた。


三日目の終わり――


ライガが足を止めた。


隣ではハルトが、呆れと苦笑の混じった視線で息子を見ている。


「ライガ」彼が口を開く。

「この子は……他の子とは違う」


ライガはケニヤを見る。

今回は――本気の視線だった。


その眼差しに、ケニヤの背筋が凍る。


「先に言っておく」

「弱者は教えん」

「守らない」

「治療もしない」

「そして死んでも――自己責任だ」


ケニヤは唾を飲み込んだ。

そして……大きく笑った。


「じゃあ、引き受けてくれるってことですよね?」


ライガは数秒、沈黙した。


「……三日後だ」

「一人で来い」


それだけ言い残し、背を向けて歩き去る。


ケニヤは立ち尽くした。


そして拳を握り締め、胸の鼓動が戦太鼓のように鳴り響く。


くそ……

ついに、ラスボス級を師匠に捕まえた。


遠くで、ハルトは弟の背中を見送り、静かにため息をついた。


「この道は……」

「……決して楽じゃないぞ、ケニヤ」


だが今のケニヤの頭にあるのは、ただ一つ――


退屈だった人生は、ついに正式に終わった。


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