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黒は闘技場に足を踏み入れた。心臓が高鳴り、観客席からの歓声が空間を震わせる。


今日、彼は自分の対戦相手が誰なのかをよく知っていた。




十八歳の青年。十歳の頃から大会に出場し続け、八年の経験を積んできた強者。


彼の名はすでに恐怖そのもの。多くの挑戦者が戦う前に心を折られてきた。




彼の能力――分身。




一見単純に思えるが、彼の手にかかればそれは死神の鎌に変わる。


ただ数を増やすだけでなく、まるでそれぞれに意思が宿っているかのような完璧な連携を見せるのだ。




黒は深く息を吸い、構えをとった。両者が向かい合う。




「戦えて光栄だ。」


「……こちらこそ。」黒は低く答え、口元にわずかな笑みを浮かべた。




試合開始の鐘が鳴り響く。




ドン!




予想通り、相手はすぐに五体の分身を生み出した。


最大で五十体まで作れるが、それでは力が分散してしまう。五体――力と数の最適な選択。




五つの影が同時に突進してきた。




黒の目が鋭く動く。彼は掌に青き炎を溜め、一気に放つ。


炎の奔流が五体を飲み込む。




だが……誰一人消えなかった。




「なっ!?」




背後から重い拳が振り下ろされる。直感で振り向き、腕で受け止める。衝撃で足元の大地が裂けた。




すぐさま反撃に出ようともう片方の手に炎を宿すが――




別の分身が飛び込み、蹴りで黒の腕をはじき飛ばす。




「チッ…!」




黒は跳び上がり、回転しながら蹴りを放つ。しかし、その前に立つ分身が手で受け止め、威力を殺した。




宙に浮いた体勢を崩す黒に――




シュッ! シュッ!




二つの影が左右から迫る。


片方は燃え盛る炎の拳、もう片方は渦巻く水の拳。




ドゴォッ!




二つの力が同時に叩き込まれ、黒は吹き飛ばされ地面に激突。


轟音と共に砂煙が立ち上り、大地が砕ける。




観客席から大きなどよめきが起こる。




その連携――完璧だった。




黒は歯を食いしばり、ゆっくりと立ち上がる。


だがその瞳は恐怖に染まってはいなかった。


逆に、胸の奥から沸き上がる高揚感に震えていた。




すでに五体の分身は半円を描くように黒を囲んでいる。


それぞれが異なる属性を持っていた。




一人は炎、一人は水、一人は土、一人は木、そして最後の一人は風。


五つの力が絡み合い、まるで一つの軍隊のように完成された陣形を築く。




黒の唇がわずかに釣り上がる。




「……これは……手強そうだな。」




その瞳に青い炎が宿り、全身から灼熱の熱気が吹き上がる。


闘技場の空気が張り詰め、音さえも消えたかのように静まり返る。




――本当の戦いは、今始まったばかりだ。

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