009
私のブックマーク
「聞け。ただ座っているだけじゃ、俺たちは飢え死にする。生きたいなら、強くならなきゃならない。そして食うもの、着るものを手に入れなきゃならない。」
クロは一瞬言葉を切り、冷たい光を宿した瞳で続けた。
「今回は、遠くの町に行く。そこには盗みや略奪で生きている子供たちの集団がいる。俺は前からやつらを調べていた。生き延びたいなら、やつらを倒して、持っているものを奪うしかない。」
重苦しい沈黙が場を包んだ。
新しく加わった五人は息を呑み、リクは眉をひそめる。
それでもクロは一歩も引かない。
「俺が先頭に立つ。もし俺がやれないなら、俺にはお前たちを導く資格なんてない。」
その瞳は、もはやただの子供のものではなかった。
その瞬間、全員は悟ったのだ――これから進む道が、血と涙に染まることを。
こうしてクロの最初の襲撃計画が始まる。
彼が本当に“リーダー”と呼ばれるにふさわしい存在かどうかを証明する戦いが、すぐそこまで迫っていた。一行はクロウの先導で素早く出発した。
闇夜に包まれたでこぼこの道を、少年たちの足音が響き渡る。空腹と疲労に押し潰されそうになりながらも、その瞳には新しい希望の光が宿っていた。
――「急げ、速度を落とすな！ 誰一人取り残すな！」
クロウの声が夜を切り裂く。
学園で習得した加速魔法を駆使し、彼らは全力で走り抜けた。胸は激しく上下し、肺は燃えるように痛んだが、誰も弱音を吐かなかった。
これはただの旅ではない――全員の未来を賭けた最初の一歩だった。
三十分後、ついに目の前に巨大な街が姿を現す。
無数の家屋から灯る黄色い光、酒場から溢れる喧騒、そして闇に紛れて蠢く影――。
ここは秩序なき混沌の街。
盗賊、浮浪者、孤児。あらゆる派閥が入り乱れる場所。
だがクロウには標的があった。
大きな組織に手を出すほど愚かではない。
狙うは――弱小の小さな一派。
盗みと恐喝で糊口をしのぐ、卑しい連中。
――「東のはずれにある古い住処だ。事前に調べてある。」
クロウは指を差し、仲間を導いた。
しかし、そこに人影はなかった。
不自然な静けさが漂う。
クロウは眉をひそめ、低く命じた。
――「壊せ。食料があれば奪え。これからは俺が保障する。」
怒号と共に、破壊の音が鳴り響く。
木材が砕け、錆びた鉄器が散らばり、埃が舞う。
飢えと憤怒、そして高揚が少年たちを突き動かし、敵の住処は徹底的に破壊された。
三時間が過ぎた頃――。
荒れ果てた廃屋の中で、クロウは折れた木材に腰掛けながら待っていた。息は荒いが、その瞳は鋭く光っていた。
その時――。
小路の奥から複数の足音が迫る。
現れたのは五、六人の子供。肩に背負った袋から、月明かりに黄金の輝きがこぼれ落ちる。
彼らは立ち尽くした。
目の前の光景――かつて自分たちの「家」と呼んだ場所が、無残に破壊され尽くしていたからだ。
クロウは静かに立ち上がり、燃えるような瞳で彼らを見据えた。
――「ようやく帰ってきたか……。」
崩れかけた廃屋の中、空気は張り詰めていた。
血と鉄錆の匂いが混じり合い、呼吸すら重くなる。
クロウは静かに立ち、拳を握り締める。
その瞬間、炎が拳を包み、熱気が辺りに広がった。
対する大男は歪んだ笑みを浮かべ、鉄パイプを床に叩きつける。
そして喉の奥から低い唸り声を響かせた。
「――――ゴォォォォォンッ!!!」
大地を揺るがすような重低音。
音圧が空気を震わせ、壁が軋み、天井から瓦礫が降り注ぐ。
「音と強化能力、か……。」
クロウは目を細め、炎をさらに燃え上がらせた。
「面白い。」
次の瞬間――クロウの姿が掻き消える。
気づいた時にはすでに目の前。
火炎を纏った拳が男の胸を撃ち抜いた。
ドォォォォンッ!!!
爆炎と衝撃波が広がるが、男は一歩退いただけだった。
その体を覆う薄い音の膜が弾けて消える。
「速さと火力か……だが浅いな。」
男は嗤い、鉄パイプを振り下ろした。
「ギィィィィィンッッ!!!」
耳を劈く轟音。
音の衝撃が押し寄せ、クロウの鼓膜を焼き裂く。
「……ッ！」
歯を食いしばるクロウ。
大男の巨腕が迫る。
刹那――時間が止まったかのように見えた。
クロウの瞳が赤く輝く。
「超速――発動！」
体が震え、一瞬で炎の残光となる。
拳は空を切り、背後の壁を粉砕した。
「ここだッ！」
クロウは側面に回り込み、足に炎を集中させる。
全身を回転させ、火焔を纏った蹴りを放つ。
ドゴォォォォォンッ!!!
爆炎と共に巨体が吹き飛ぶ。
しかし男は倒れず、大地を削りながら踏みとどまった。
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