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14日目。
クロウの身体は明らかに変わっていた。長い修行の日々、目隠しをされ、何十人もの相手に打ちのめされ続けた結果、彼はようやく「基本的な体術」を掴み取ったのだ。呼吸、歩み、力の込め方──そのすべてが以前よりも確実になっていた。
その朝、クロウは道場主の男に問いかけた。
「俺はもう体術の基礎を身につけた。じゃあ、“黄金の鎧”っていうのはどこにあるんだ?」
男は腹の底から笑った。
「はははっ! お前が今覚えたそれこそが“黄金の鎧”だ。実物の鎧なんてあるわけない。金と同じくらい貴重だから、そう呼ばれているだけさ。」
クロウは顔を赤くして、思わずうつむいた。
「……なんだよ、それ。」
だが、考えている暇はなかった。今日は三回戦の日だったのだ。
会場は前回までとはまるで違う熱気に包まれていた。残り百人の戦士たち。控室には緊張とざわめきが渦巻く。
その中で、すでに多くの者が「アイスデン・クロウ」という名を知っていた。
クロウはいつものように落ち着いた様子で身体をほぐし、深く息を吸い込む。ポケットから取り出したのは、残りわずか二千ジャック。迷うことなく、それを自分に賭けた。
「やるしかない……。」
MCの声が高らかに響く。
「次の試合! アイスデン・クロウ 対 タナカ・ハルト!」
クロウが闘技場に姿を現すと、観客席から大歓声が湧き上がった。すでに彼の名は会場に知れ渡り、多くの声援が飛ぶ。だが、対面するハルトにもまた多くの支持者がいた。
「……タナカ・ハルト? 聞いたことのない名だな。」
クロウは心の奥で油断していた。
開始の合図と同時に、クロウは迷わず突っ込む。速攻で仕留めるつもりだった。
だが──
ドォン!!!
轟音とともに爆炎が巻き起こり、クロウの身体は吹き飛ばされた。
「なっ……爆発だと!?」
辛うじて立ち上がりながら、クロウは状況を理解する。
「奴の能力は……“爆破”か。ならば、近づくのは危険だ。」
すぐさま彼は構えを取り、電撃と炎を纏う必殺の雷火の弓を展開する。
だが、ハルトは一歩も動かないまま、無数の木の矢を射出した。
「くっ!」
クロウは横に跳んで回避する。
しかし──
ドォン!!!
着地した瞬間、再び爆発。クロウの身体は宙を舞う。
「ぐっ……なんでだ!? あいつは動いていないのに!」
さらに背後でも爆発が起きる。観客席は悲鳴と歓声で揺れる。
「まさか……あの矢そのものが爆弾なのか!?」
クロウの心に、強烈な危機感が走った。
この戦い、決して容易には終わらない……。




