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ソララ王国はこれまでに四十五代の魔法王を迎えてきた。


そのすべての王は優れた才覚を持ち、この地の歴史に名を刻んだ。


だが、最も多く語られ、人々の心に深く刻まれているのは、初代王―― カミアス・トーマス である。




カミアスは「光の子」と呼ばれた。


彼は極めて稀少な光属性の力を持ち、癒やしにも、闇を討つ刃にもなり得る力を操ったと伝えられている。




当時のソララの民は、外来の帝国の支配下にあり、抑圧され、搾取され、蔑まれていた。


だが、カミアスは揺るぎない心と不屈の意志を胸に、民を率いて立ち上がった。


光の旗の下に数万の戦士と魔法使いが集い、長きにわたる解放戦争を繰り広げた。




十二年に及ぶ苛烈な戦いの末、ついにソララは独立を勝ち取る。


カミアス・トーマスは王位につき、ソララ王朝を建国。


こうして「魔法王の時代」が幕を開けたのだ。




彼は黒い巻き毛と厳格な眼差しを持つ男として語られている。


常に真剣な表情を崩さず、決断力に満ちた人物だった。


だがその心の奥には、常に「民こそが第一」という信念が宿っていた。




その一節を読み終えたとき、


クローの胸に熱いものが駆け抜けた。




「なんて偉大なんだ……」




ページをめくればめくるほど、彼はこの世界に引き込まれていく。


ソララとは、自分の戦いだけではなく、悠久の歴史と伝説、そしてまだ解き明かされぬ謎が眠る大地なのだ。


クローの瞳には、冒険者のような強い光が宿っていた。ソララが誕生する以前、そして人間の王国が分裂するよりもはるか昔、


この世界全体を支配していた唯一の王が存在した。


その名は アーサー。


人々は彼をこう呼んだ。


「万族の王」、「人類の槍」、「世界を背負う者」。




当時、人類の敵は帝国でも、対立する王朝でもなかった。


敵は―― この世に存在するすべての種族 だったのだ。




獣人族、巨人族、竜族、妖精族、人魚族、小人族、


さらには名も知らぬ種族までも。


彼らは皆、人間を脅威とみなし、抹消すべき存在だと考えていた。




こうして、万族による巨大な同盟が築かれた。


人間側に残されたのは、ただ一人の王アーサーと、


彼に従う弱き兵と民のみ。


それは絶望的な戦いであった。




しかしアーサーは決して逃げなかった。


彼は不屈の意志で戦い続け、


幾百もの戦場を駆け抜け、


幾度となく圧倒的な軍勢に立ち向かった。




だが、最後には――


アーサーとて戦局を覆すことはできなかった。


人類は敗北したのである。




だがその瞬間、炎が消えかけたその時、


アーサーは全てを揺るがす決断を下した。


彼は命と最後の力を注ぎ込み、


永遠に残る呪いを刻んだのだ。




「もし汝ら――万の種族が人類を根絶せんとするならば、


死してなお、我が力は蘇るだろう。


汝らすべて、滅びを免れぬ。


この世界より、完全に消え去るのだ。」




その言葉を聞いた瞬間、各種族は震え上がった。


彼らは知っていたのだ。


アーサーの力がどれほど恐ろしいものであったかを。


たった一人で万族連合を幾度も退けた、その強さを。


誰一人、危険を冒す勇気はなかった。




こうして、アーサーの命と引き換えに、


暗黙の盟約が結ばれた。




人類は滅ぼされることなく存続を許された。


だが同時に―― 「見えざる檻」 に閉じ込められたのだ。


それは、彼らの自由を奪い、


外の世界から永遠に隔てる牢獄であった。

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