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広々とした大広間、冷たい光が石の床に落ちる。


カゴは額を床につけ、汗を滴らせながら跪いていた。しかし、顔を上げることすらできない。




玉座に座る父 ―― ハタカ家の当主は、真っ赤な顔で雷鳴のように怒鳴りつけた。




「顔を上げろ、カゴ! 自分が何をやらかしたか分かっているのか!? 去年はまだ第四回戦まで持ちこたえた。だが今年はどうだ!? 第二回戦だぞ! たった第二回戦で、名もなき小僧に敗北とは! これが我が息子の姿か!?」




カゴは震えながら、血が滲むほど拳を握りしめたが、口を開くことはできなかった。




「ハタカ一族の名は、代々血と権威で築き上げられてきた。それをお前は汚したのだ! 恥というものが分からんのか!? 人々は『ハタカ兄弟は等しく強者、誰もが恐れる天才だ』と噂していた。だが、現実はどうだ? お前の醜態でその言葉は笑い話となった! この街の民どもまでが、これからはハタカの血を侮るであろう!」




当主は玉座の肘掛けを力強く叩きつけた。轟音が部屋に響く。




「役立たずが! 恥さらしが! これまで我が家の資源を注ぎ込み、鍛え上げてやった結果がこれか! もしお前の中にハタカの血が流れていなければ、とっくに犬のように追い出していたわ!」




カゴは歯を食いしばり、肩を震わせた。屈辱と憎悪が心を焼く。しかし父への恐怖は、その全てを押し潰し、頭を下げることしかできなかった。




――その時。


部屋の奥、屏風の向こうから、淡い青い光がちらついた。




そこには、青白い顔をした痩せぎすの青年が、ゲーム機を握りしめていた。白い髪は乱れ、目の下には深い隈。指が狂ったようにボタンを押し、無機質な電子音が空間に響く。




外の怒声など気にも留めず、青年は薄く笑いながら呟いた。




「……負けるなら負けるでいいじゃん。弱いなら怒鳴られて当然。……でも、ふん、くだらねぇ。ゲームの方がよっぽど面白い。」




それが―― ハタカ・レンツ。


カゴの兄にして、一族の中で最も異端と呼ばれる存在。世間では廃人のように扱われていたが、その内に秘められた力を知る者は、誰一人軽んじてはいなかった。



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