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黒(Kuro)は足元に散らばる氷の破片を蹴り飛ばし、燃え盛るような瞳で相手を睨みつけた。髪が熱風に揺れ、口元に嘲笑を浮かべながら叫ぶ。




「もっと吠えてみろよ!!」




その咆哮は雷鳴のように響き渡り、観客席を震わせた。




次の瞬間、黒は地面を強く蹴り、身体を宙へと弾き上げる。そして闘技場の中央に叩きつけられると、大地が裂け、粉塵が舞い上がった。周囲の空気が大きく揺らぎ、風が渦を巻きながら彼の体へ吸い込まれていく。




黒は左手を前にかざし、右手で稲妻を引き絞る。その光は轟音と共に迸り、全身を包み込む。だが、それだけでは終わらない。次の瞬間、彼の奥底から紅蓮の炎が爆ぜ、稲妻と融合する。黒の全身は灼熱と雷光に包まれ、圧倒的な力が膨張していく。




観客たちは眩しさに思わず目を細め、呼吸すら忘れた。




「くっ……!」




カゴ(Kago)は狼狽し、足を踏み鳴らす。地面から無数の氷の槍が突き上がり、壁となり、矢となって黒へ襲い掛かる。極寒の冷気が会場を覆い尽くす。




だが――遅すぎた。




「うおおおおおおおおッ!!!」




黒の絶叫と共に、光の矢が放たれた。炎と雷が渦巻き、一頭の雷炎の竜が姿を現す。咆哮を上げながら突進する竜は、氷壁を次々と粉砕し、進路を阻むものを全て消し飛ばしていった。




「ば、馬鹿な……!」




カゴの顔から血の気が引き、全身から冷や汗が噴き出す。




竜が迫り来る、その刹那。




「そこまでだ。」




低い声と共に、黒い肌の男が姿を現した。彼が片手を突き出すと、目の前に黄金の盾が展開される。次の瞬間、雷炎の竜が盾へと激突した。




ドオオオオオオオオオオオオオオン!!




天地を揺るがす爆音。爆風が闘技場を覆い尽くし、観客たちは悲鳴を上げながら身を伏せた。煙と火花が渦を巻き、視界を奪う。




やがて嵐が収まり、黄金の盾だけがそこに残されていた。




カゴは地面に膝をつき、全身を震わせていた。呼吸は荒く、視線は完全に恐怖に支配されている。もはや闘志の欠片すら残っていなかった。




審判が進み出て、声を張り上げた。




「勝者――アイスデン・クロ!!」




瞬間、観客席が爆発したかのように歓声が湧き上がる。無数の声が「クロ!クロ!」と叫び、闘技場全体が地鳴りのように震えた。




黒はゆっくりと立ち上がり、肩で息をしながらも口元に冷たい笑みを浮かべる。その背中は、誰が見ても「怪物」としか呼べない存在感を放っていた。

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