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ドォン!!!




開始の合図すら必要なかった。


瞬間、地面が大きく揺れ、観客席全体がざわめいた。




黒炎の軌跡 と 蒼氷の閃光。


二つの影が同時に消え、次の瞬間には轟音と衝撃波だけが残った。




ガキィン!!


炎を纏った黒の拳と、氷で覆われた蒼の腕が正面からぶつかり合う。


爆風のような圧力が四方に弾け飛び、観客たちの髪を逆立てた。




だが、それで終わりではない。




バンッ! バンッ! バンッ!


立て続けに拳と拳が交錯し、まるで雷鳴のように響き渡る。


足元には亀裂が走り、床は黒焦げと氷結の痕で埋め尽くされていく。




「やるな、クロ!」


氷の戦士――カゴが、残像の中から声を放つ。


「だがその程度の速さじゃ、オレの背中すら触れられねぇぞ!!」




次の瞬間、氷の残光がクロの背後に迫った。


ドゴォン!!


だがクロは反射的に振り返り、炎の拳で受け止める。




ギリギリで相殺したが、腕は痺れ、血管の奥まで凍り付くような寒気が走る。




「調子に乗るなよ、カゴ!」


クロの瞳が紅く燃え上がる。


「炎は氷を喰らい尽くすんだ!!」




ゴォォォッ!!!


拳に炎を集中させ、一気に押し返す。


だがカゴは床に氷を張り、滑るように後退したかと思うと――




ズバァッ!!!


さらに倍の速度で逆襲してくる。




観客席からは悲鳴混じりの歓声が溢れた。


「見えない!!」


「速すぎるぞ!!」


「まるで二本の稲妻だ!!」




火と氷の光跡が交差し、戦場は閃光と轟音の嵐と化した。


一瞬ごとに拳が交わり、炎が爆ぜ、氷が砕ける。




「その炎じゃ俺は倒せねぇ!!」


カゴが嗤いながら殴りかかる。




「なら、燃え尽きるまで喰らわせてやるよ!!」


クロが怒声と共に炎を膨れ上がらせる。




観客たちは立ち上がり、喉が裂けるほどの大歓声をあげた。


火と氷。


赤と青。


対極の二人が織り成す速度の戦いは、もはや武闘ではなく、ひとつの 神話の光景 のように映っていた。




だが――決着は、まだついていない。

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