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066

最初の一時間、クロウは何も技を生み出せなかった。


何度も同じ動作を繰り返した。炎を集め、雷を圧縮し、角度を変え、比率を調整する……しかしまるで何かに封じられているかのように、発動した瞬間すべてが盾に吸収され、逆に反動が手に返ってくるだけだった。




冷や汗が額を流れ、手のひらは血で滲み、指先は震え続けた。


「なぜ……前はできたのに。あの時は違ったのか? 自分は何を失い、今は何を持っている?」


クロウは自問自答を繰り返した。




一時間が過ぎ、失敗ばかり。彼は地面に座り込み、痛む手を見つめながら呟いた。


「できたのは……一度だけ。」




そこへジェイムが歩み寄り、鋭い眼差しで問いかける。


「最後にその技を出せたのは、いつだ?」




クロウは顔を上げ、掠れた声で答えた。


「あれは……一度きりです。あの時、自分は限界まで追い詰められて……生きたい、勝ちたいという意志が、今まで以上に強かったんです。」




その答えを聞いたジェイムの表情がわずかに変わる。


「なるほどな。」


彼は低い声で続ける。


「お前には圧力が必要なんだ。『プレッシャーがダイヤを生む』って言葉を聞いたことがあるだろう? 物が十分に圧縮されれば、新たな形になる。魔術も同じだ。全てが尽きた時、肉体以上に強い意志を握りしめた時、新しいものが生まれる。」




ジェイムはクロウの周りを歩きながら言葉を投げた。


「前と同じ式を繰り返すな。力ずくで真似るな。これは“最後”だと思え。今日この場で生み出せなければ、明日お前は死ぬ。そう思って創り出せ。」




その言葉は心臓に突き刺さった。クロウはしばし目を閉じ、疲労や痛み、恐怖をすべて受け入れた。


やがて胸の奥から別の感情が立ち上がる――頑なさ、そして冷たい決意。




残り時間はわずか。クロウは深く息を吸い込み、全身の血流と心拍を感じ取る。


左手を前に突き出し、指を軽く曲げて掌を上へ。右手を後ろに構え、まるで弦を引くように。




左手から細い炎が揺らめき、右手には細い稲妻が巻き付く。


彼は両者を無理に押し付けず、呼吸に合わせて共鳴させた。吸う息で雷は伸び、吐く息で炎がその周囲を覆う。




周囲の空気が吸い込まれていく。風の唸り、雷鳴の裂ける音、炎のはぜる音が混ざり合い、一つの旋律のようになった。




そして――


炎に包まれた稲妻の槍が形を取った。


それはただの魔力の塊ではない。痛みと絶望、執念と希望が凝縮された「意思」の具現だった。




クロウは右手を後ろに引き、まるで弓を引くように構える。そして解き放つ。


小さな破裂音。だが槍は矢のように放たれ、透明な盾へ一直線に突き刺さった。


今度は弾かれない。吸収されない。


灼熱の刃のように盾を貫き、白いひびを刻み、やがて粉々に砕いた。




成功の瞬間、クロウの手は焼けるように痛み、血が滴り落ちる。だが胸の奥には奇妙な高揚感が広がった。


彼は倒れ込みながらも、目は強く光を放っていた。




ジェイムは黙って見つめ、やがて珍しく微笑んだ。


「……よくやった。それはお前自身の技だ。他人の真似ではない。」




クロウは荒い息を整えるだけで、言葉は出ない。ただ心の奥で小さく呟いた。


「やっと……」




ジェイムは続ける。


「明日、相手に会った時――それを一度だけ放て。命を賭ける最後の一撃としてな。」




クロウは疲れ切った体で頷き、鋭い目を閉じて眠りに落ちた。


その夜、彼の心に迷いはなかった。ただ戦いの刻を待つのみだった。



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