表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
64/124

064

ジャメが消えた瞬間、真っ白な部屋は不気味なほど静まり返った。


クロは固まったまま、こめかみから汗が一筋流れ落ちる。


彼は一歩踏み出そうとしたが──まるで世界全体が身体にのしかかってくるように重い。


鉛のような服が全身を引きずり下ろし、靴は床に沈み込む。


クロは歯を食いしばり、全力で足を持ち上げると、汗が滝のように流れ出した。




――ヒュッ!


頭上から黒い影が急降下してくる。


反応する間もなく、鳥のくちばしが肩に触れた。




「アアアアアーーッ!!!」


全身を切り裂くような電流が走る。


筋肉がはじけ飛びそうに痙攣し、視界が真っ白になり、背中が床に叩きつけられた。


呼吸が止まりそうになり、心臓は暴れるように脈打つ。




やっとの思いで手をついて起き上がろうとした瞬間、近くのチンピラがニヤリと笑い、手で円を描いた。


小さな火球が現れ、クロに向かって一直線に飛ぶ。


ドンッと爆ぜて腕に焼けるような痛みが走り、焦げた匂いが立ち込める。


次の瞬間、別のチンピラが地面に魔法陣を描き、足元の床が盛り上がってクロを前のめりに転ばせた。




立ち上がる間もなく、横から蹴りが飛んできて転がる。


肋骨が折れたかと思うほどの激痛、息が詰まる。


肉体だけでなく、精神まで砕かれていくようだった。




まだ五分しか経っていない……




クロは荒い呼吸を繰り返し、手が震えて床にしがみつく。


だが重い服のせいで足が震え、思うように立ち上がれない。


また一羽の鳥が急降下し、――バチン!――再び電撃が走る。


クロは絶叫し、血が滲むほど歯を食いしばった。




十分後。


電撃は十回以上、全身は焼けるように痛む。


汗と血が混じり合い、顔を伝い落ちる。


チンピラたちは本気ではなく、遊んでいるかのように少人数ずつ現れ、


クロが立ち上がるたびに風、土、火の初歩魔法で叩き落とす。




十五分後。


両膝が裂け、血が床に広がる。


顔を上げるたびに拳が飛んできて、胸に鈍い衝撃が響く。


息がヒューヒューと鳴り、まるで溺れかけの魚のようだ。




二十分後。


視界がぼやけ、耳鳴りがし、心臓の鼓動が不規則になる。


魔法の突風に吹き飛ばされ、空中で無様に回転して床に叩きつけられた。


吐き気をこらえる間もなく、三人のチンピラが同時に蹴りを放ち、


腹、胸、背中に鈍痛が走る。




二十五分後。


二十回を超える電撃、何十発もの拳と蹴り、全身打撲だらけ。


腕の感覚はなく、筋肉は悲鳴を上げ続ける。


動くたびに頭に鋭い痛みが走り、目の前が赤黒く揺れる。




三十分後。


クロは膝をつき、両手で床を押さえ、汗を滴らせる。


胸は大きく上下し、呼吸は鋭い笛のように響く。


あと一撃で意識を失いそうだと感じるほどだった。




だがその瞬間、ジャメの言葉が脳裏に響く。


「気絶するな。最後まで耐えろ。」




クロは唇を噛み、血の味を感じながらゆっくり立ち上がる。


全身が震えながらも、瞳には決意の炎が宿った。


ここで倒れない──そう宣言するかのように。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ